【短編版】ツンデレ歴15年の幼馴染が、デレに全振りしたら想像以上に可愛かった。〜家で俺だけにしかデレデレしない幼馴染が罪な件〜

@kanae_kaki

ツンデレからツンを取った結果

ーーーなぜ、こうなってしまったのか。


夏休みが明け【紀伊原高校きいはらこうこう】も二学期を迎えた。

そんな中、親同士が仲がいいこともあり、俺こと【木下きのした 春樹はるき】と幼馴染の【如月きさらぎ 菜月なつき】が木下家でお泊まり会(?)的なことをしていた時の話。


原因は不明、朝起き突然の出来事だった。

目を覚ますと、菜月は俺の股下周辺で目を瞑り、布団を被ったまま寝ていた。

現在は俺の股間周りに胸が完全にくっついている。


・・・とにかく脱出せねば…!


こんな状態なのが親にバレてしまうと、とんでもないことになってしまうこと間違えなし。


そして、俺は脱出を試みるべく、布団をガサゴソしていると、菜月のまぶたがぴくっと動いた。

「これはやばい」と体が感じたのか、【脱出】という言葉に体が先走って大胆に動いてしまった。


「あっ……え……?」


片方の足を、布団から抜こうとすると、もう一方の足をぎゅっと握られた。


ーーーファッ?!?!


予想外の出来事に思わず変な声を出してしまうそうだったが、あと少しのところで踏み止まった。


「いかないで……」


小さく幼女の様な声を出し、さらに足を掴む強さを強くした。

そして、さらに俺の脳内は混乱状態へと陥っていく一方、もう脱出など考える暇も無くなってきたことに危機感を覚えることもできなくなっていた。


ーーーやはり、時間との勝負なのか……。


と謎に今回の件についての教訓を心の中で述べ、次に繋げようとする俺氏。

次に繋げようとする気持ちを忘れていない自分を褒めてあげたいところ。


スーッ。


オタク特有の謎の深呼吸をかましながら、俺はそっと足を抜こうとする。

すると、一気にすぽっと抜けた。


それに拍子抜けした俺は「え?」と思わず声を出してしまった。


布団を見ると、俺は外に出ていることから、菜月の顔が掛け布団にかかり、全く姿が見えない状況となった。

それに、なぜか安心感を覚えている俺は、部屋を出ようとしたところ後ろからガサッという音が聞こえた。


それに驚き、一気に後ろを振り向くと……。


「私じゃ……ダメ……?」


いや、可愛すぎるだろ。



★☆★☆★☆★☆★



紀伊原高校1年の俺は、全ステータスをFPSゲームに突っ込んだのかと言わんばかりに、ゲーム以外の能力は最底辺。

しかし、ゲームの才能はずば抜けており、色々な大会でも結果を残している、言わば【高校生プロゲーマー】という立ち位置に立っている。


自他ともに認めるその才能は素晴らしく、業界内では【神様】と呼ばれている。


基本的には学校では睡眠をとっており、最近プレイしているゲームの【gun or sword】は一般的なゲームと同じく、夕方から深夜にかけてのプレイヤー人口が多い。

つまり、プレイする時間帯がそこに当たるため、寝ている暇などない。


「はい、鞄の中に入っていただけ」


そう言ってアイマスクを渡してくれたのは、幼馴染である菜月。

学校では【みんなに優しい優等生キャラ】だが、なぜか俺に対してだけあたりが強い。

初めは「反抗期か?」と思っていたが、どうやら反応的にそうではないらしい。


「よぉ、昨日も練習お疲れ様」


陽気に現れたのは、中学からの親友である【尾崎おざき ゆたか】。

彼もプロゲーマーとして活動しているが、プロのレベルからすると、歴が浅いこともあり、俺よりは実績が少ない。

しかし、努力家なのも相まって、たった半年でプロ入りを果たした天才でもある。


豊は俺とチームに所属しており、チームメンバーと俺と豊で組んでいる。

連携も取れていて、いいチームだとは思う。


「あ、菜月!昨日の映画観た?」


「うん、観たよ〜!すっごく面白かった!」


やっぱり、豊に対しての対応と俺に対しての対応が明らかに違い過ぎる。


そんなちっぽけなことに悩まされている春樹は少し頭を抱えた。

豊は楽しそうに菜月と話し、俺なんて「眼中にない」と言わんばかりの対応。


昼休みの時間が刻々と過ぎていく中、俺は外へと目を向けた。

秋晴れの天気で、気分は清々しい。

さっきまでの悩みを一気に吹き飛ばしてくれる様な、爽やかで少し冷たい風が頬に当たった。


ーーーはい、誕生日プレゼント。


そう言って渡してきた、俺が大好きな漫画キャラのキーホルダー。

夏樹がわざわざ誕生日の日に買ってきてくれた大切なキーホルダー。

それを見るたびに、いつもはツンツンしているが「優しくて可愛いところもあるんだな」と感じさせてくれる。


フッと小さく笑うと、秋の風に流され消えた。


「今度、試合あるんでしょ?練習は?」


「ちゃんとしてるから大丈夫だって」


「自主練してないでしょ!」


「エイム練習とか飽きるんだもん……」


「やりなさい!」


俺が少し駄々をこねた言い方をすると、母親のように俺に叱りつけてくる。


「まぁ、元からいい感じだし、このままいけば優勝間違いなしだしさ!そんな、暗い顔せずに今日も練習頑張ろうな?な?」


「お、おう…」


「本当、頑張ってよね!」


「はい……」


「菜月もそんな強く言わない」


「このぐらい強く言わないとわからないよ?」


「そんなことないから!」


いつもの昼休みの時間がいつも通り過ぎていった。




★☆★☆★☆★☆★




「で、なんでこんなことしたの?」


「はい……」


時は遡る。例の日の事件後の話。

俺は菜月を無理やり落ち着かせ、部屋で正座をさせた。


すると菜月はいつものような、威張った態度もなく突然しゅんとした態度を取るようになった。

それに俺は驚き、いつも通りに話が出来なさそう。


「なんでこんなことしたの」


「……」


黙り込む菜月。

それに俺は困り果てた表情を浮かべ、菜月に目をやる。


すると、少し顔が赤らんでいた。

「どした?」と内心疑問に感じながら、菜月が話し始めるのを黙って待っていると、少しづつ口が開いてきた。


「だって……」


少し涙目でこちらを見てくる。


「ハルが……」


俺は真剣に耳を傾けた。


「こうでもしないと、私が好きだってことわかってくれないと思って!!!!!!!」


「え……?」


予想外の展開に硬直する。

場が一瞬にして修羅場になった気がした。


菜月は涙を流し、突然俺に抱きついてくる。

そして、その重量に耐えながら、俺は今の状況を整理する。


「つまり……俺と付き合いたかったってこと…‥?」


菜月は俺の肩に顔をうずめ、質問から5秒後程度で返事が返ってきた。


「そういうこと……」


その返答は、驚くほど小さく、口が肩に当たってたこともあり、少しこもった声。


ーーーいや、うちの幼馴染……可愛すぎんか……?

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