第3話 両国の歴史・入植から第一次世界大戦

「ということで、オスマン帝国の支配下で中東は発展を大きく阻害されていたわけだけど、一方のユダヤ人はあちこちで活動してはあちこちで弾圧されていたわ。で、19世紀後半にかつてイスラエル王国があった場所に、ユダヤ人の国を作ろうというシオニズム運動が発生したの」

『よそにいると差別されるから、差別されない自分の国を持ちたーいってことね』

「そういうことね。で、ロビー活動を始めたの。これが功を奏するわけだけど、タイミングが良かったということもあったわね」

『第一次世界大戦があったから?』

 現代の女神がすっかり生徒状態になっているな。

 ただ、確かに、第一次世界大戦中に色々厄介ごとの種がばらまかれたのは事実ではあるな。


「で、第一次世界大戦でイギリスは、各勢力に後先考えずに大盤振る舞いをした、と言われているけれども」

『知ってるー。ユダヤ人には「ユダヤ人の国を作ろう」と言って、アラブ人には「トルコに反乱したらアラブ人の国を認める」と言って、フランスとは「勝ったら中東を山分けしようぜ」って言ったのよね』

 最初がバルフォア宣言。

 次がフサイン・マクマホン協定。

 最後がサイクス・ピコ協定になるな。

「実際にはそれほど矛盾していないのよ。それにサイクス・ピコ協定で分けられたのはオスマンが引いていた地図区分が参考になっていたから、ここでも裏の悪役はオスマンと言うこともできるでしょうね」

 地味に色々絡んでくるんだな、オスマン。


「矛盾はしていないのだけど、これらの協定が存在するということをきちんと説明していなかったから、だまされたと思わせた部分はあったようね。そういうゴタゴタを抱えつつも第一次世界大戦後、パレスチナ地域はイギリスが支配することになって、ここにユダヤ人達が入ってきた。で、イギリスの意思と無関係に、アラブ人とユダヤ人が争いを始めた」

 当然といえば当然の結果だろうな。

 内心では「イギリスに騙されたのではないか」と疑いつつ、それでもわざわざ中東までやってきたユダヤ人は、いざとなれば一戦辞さない覚悟だろうし、アラブ人だって黙ってやられるつもりはないだろうからな。

『結局、イギリスが悪いんじゃない?』

「これだけを見れば、ね。ただし、気を付けてほしいのはイギリスがきちんと資料を残しているから、熾烈な戦いがあったことが分かるということもあるわ。オスマンの支配下でも部族同士の戦いは普通にあったし、反乱もしばしば起きていたわ。近くのエジプトではムハンマド・アリーが独立してしまったわけだしね。ただ、オスマンの統治は雑だから、そういうものが無かったように見えるというのもあるのよ。イギリスがいなければこの地域に問題など起きなかったというのはあまりにも暴論である、ということだけは言っておきたいわね」

 確かに中東というのはずっと戦争ばかりしていた地域だ。

 イギリスのせいで余計な当事者がやってきたけれど、いなければ平和だったと考えるのは甘い認識ではあるんだろうな。

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