第2話 両国の歴史・オスマン支配時代

「それでは、イスラエルとパレスチナ地域を歴史的に振り返ってみましょう。まず、この中東地域には古くユダヤ人が住んでいたとされているわ」

 新居千瑛の解説に現代の女神も頷いている。

『ダビデとかソロモンよね~。あたしもそれくらいは知ってるし~』

「実際に二人がいたという明白な資料はないんだけどね。その後、この地域はシリアあたりとくっついて、オリエントの大国の戦争の舞台になるわ。エジプトとかヒッタイトとかアッシリアとか」

 確かに、この後、中東地域は大国の舞台となる。

 ユダヤ人の話はほとんど聞かなくなるな。

「実際には、結構反抗的だったみたいね。あまりにも反抗的だったので、ローマがユダヤ人の分裂を狙ってイエスに活動をさせたんじゃないかというようなことを言う学者もいるらしいわ」

『マジィ!? ローマは最初キリスト教を弾圧していたんじゃなかったの!?』

「……あくまで少数説よ。だけど、そういう説を出したくなるくらいには反抗的だったようね」

 つまり、昔から頑固で自分達の信念を曲げなかったわけだな。

 まあ、そうでなければ世界中で弾圧されて尚、存在していくことはできなかっただろうけれど。


「その後、イスラムが支配するようになるとほとんどのユダヤ人は出て行ったようね。激しく弾圧されたわけではないけど、イスラムは他宗教には人頭税を課すから、そういうのがないところで活動した方が得だからね」

「直接的な弾圧というと、キリスト側の方が激しかったみたいだしな」

「で、中東は色々な民族がやってきては略奪していく火薬庫になっていったわけだけど、とりあえず16世紀にオスマン帝国が支配下に入れることになるわ」

 確かセリム1世がマムルーク朝を倒して、中東と北アフリカをゲットしていたんだったな。

 13世紀末に建国されたオスマン帝国は16世紀までは絶好調で向かうところ敵なしの勢いだった。で、その後、エジプトは半分独立してしまうが、中東西部は20世紀に至るまでオスマンの領土だった。

「あまり口にする人はいないけど、この問題に責任を求めるとするならば、オスマン帝国の責任も結構大きいと思うわ」

「……と言うと?」

「オスマンは17世紀くらいまでは世界最先端だったわ。だけど、頂点に立った後に進歩に否定的になってしまったの。本編でも触れているけれど、活版印刷の輸入を断固拒否した結果、20世紀になっても識字率は3パーセントにも満たなかったというし、近代化が一切なされないまま、中東地域は中世世界の価値観が支配する地域のまま存在していたわけ。これは全体の話で中東地域あたりはオスマンの中でも後発地域だったことも無視してはいけないわね」

「日本が近代化を果たせた要因として、寺子屋などの教育施設が充実していたことを考えると、このあたりは痛いなぁ」

「そうよ。少なくともパレスチナが遅れている理由の一環には数百年以上の停滞した時代があったことは否定できないわね」

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