第73話 イカに怒る、如何にして怒る
流子です。人食いザメは出るし、化け物イカは出るし、これだから海に来たくなかったんです。
幼稚園生の頃、家族で海に来た際に浮き輪の空気が抜けて、そのまま溺れるという恐怖体験をしたので、海だけは来たくなかったんです。それなのに特訓だからと連れて来られて、またトラウマ案件……本当に勘弁してほしいです。
とりあえず変身はしたものの、さっきからパニック続きだったので冷静になって今起きている状況を整理したいと思います。まず、海に出たサメは魔物では無く天然物のヤバいサメで、私達の目の前に居るデカいイカは魔物ということですね。
で、人食いザメの方は二階堂さんが生身で相手をしていて、イカの魔物の方を私達が相手しないといけないということですね。OK、段々と分かってきました。早急に倒して海から逃げ出したいですね。
イカの魔物は多くある足をウネウネとさせており、何だか本当に気持ち悪いです。
とりあえず一射喰らわせてみますか。
“バシュッ”
いつも通りに真っ直ぐに飛んで行く私の矢。的がデカいので外すわけありませんが、イカの魔物の体にに当たった矢は刺さらずに、ボヨヨーンと弾かれてしまいました。
「ふははは‼バカが‼私のこの超弾性ボディにそんな攻撃効くものか‼」
あー、そういうタイプの敵ですね。なるほど理解しました。普通の人なら自分の攻撃が相手に全く効かなくてイライラするところなんでしょうが、魔法少女に全く思い入れの無い私は、起こったことをただ冷静に分析するだけです。
「弾力のあるボディだから、打撃や弓矢での攻撃はあまり効かないのかもしれません。みんな気を付けて下さいね」
私がそう言うと、木隠さんが反応してくれました。流石は私以外で一番の常識人の彼女です。
「つまり、火種ちゃんのパンチも、彩夏ちゃんのハンマーも、もしかしたら私の槍も効かないかもしれないね。となると霧子ちゃんの鎌が有効なのかも」
私と全く同じことを考えていてくれて良かった。でもこうなると調子に乗るのが黒井さんです。
「えっ、アタシの時代来ちゃった?」
ギザギザの歯を剥き出しに笑う黒井さん。調子に乗り出すと面倒臭いので嫌なんですが、この場は活躍してもらわないと困るので、一応反応しておきますか。
「はい、黒井さんの斬撃が頼りかもしれません」
「くっくく♪参ったな……そんなにアタシの力が必要なのかよ♪」
はぁ、これは今日だけじゃなくて一週間は調子に乗っちゃう感じですね。正直に言うと鬱陶しいですが、魔物が早く倒れてくれた方が私としては喜ばしい事なので、さっさと黒井さんに活躍してもらいましょう。
「効きづらいってことは、いっぱい殴れるってことだよね?それは丁度良かったよ。サンドバック叩いてトレーニングする感じで殴りまくるよ♪」
日ノ本さんが笑顔で斜め上のことを言って私達を驚愕させます。とうとう脳まで筋肉になってしまったようです。脳筋魔法少女なんて全くもって響きが良くありません。
「お前等‼いつまでちんたらやってんだ‼早く戦いに行け‼ゴーファイト‼」
チャガマさんが檄を飛ばしますが、急にどうしたんでしょうか?こんなところで魔物が暴れようが大した被害は出ない筈ですから、そこまで倒すのを急ぐ必要は無いと思いますが。
「早くデカいイカの触手みたいな足に絡みとられて、ニチアサじゃ見られないエッチな感じになれよ‼」
なるほどそれが目的でしたか、このエロダヌキめ、人をこんな海まで連れて来て、エッチな展開を望むなんて万死に値します。
私は弓をチャガマさんの方に向けましたが、木隠さんに「気持ちは分かるけど今は抑えて‼」と必死に止められたので、今日のところは勘弁してあげることにしました。
命拾いしたな。エロクソダヌキ。
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