第67話 魔法少女の影

 俺の名前は影の魔物シャドウ。

 実体を持たない俺だが、特技として戦う相手の姿形や能力をコピーすることが出来るのだ。

 そうして雑魚共と戦っているウィザード・フレアに俺は近づいて、コピーすることに成功した。


「これは私?」


「そうだ恐ろしかろう、自分の影と戦うのは。ウィザード・フレア覚悟しろ」


 しかしながらウィザード・フレアは戸惑った様子はなく、俺の化けた姿を見てこう評した。


「なんだか体が黒くてバーサーカーの時の私と似てるね。二番煎じ感は拭えないかと」


「ぶ、ぶっ殺す‼」


 人の気にしていることを平気で言う奴は死んじまえ。

 戦い始めて早々にウィザード・フレアと俺の右拳が激突。能力は同じなので、どちらにもダメージが……。


”ピシピシ……”


「えっ?」


“バァアアアアアアアアン‼”


 どうして俺の腕だけが砕けた?完璧にコピーした筈なのに。狼狽する俺を見てウィザード・フレアはさも当たり前のようにこう言った。


「気迫が足りないよ、気迫が。拳に気迫を乗せないと」


 まさかの精神論。俺はこういう奴が一番嫌いだ。こうなったら奥の手である。

 俺は壊れた右手をガトリング砲に修復し、ウィザード・フレアに照準を向けた。


「私、手をガトリング砲になんて出来ないんだけど」


 まさかのマジレス。仕方ない説明してやろう。


「私は一度コピーしたものなら、部分的にもその物を再現することが出来るのだ。ということで死ねや‼オラァ‼」


“ドドドドドドドドドドドドドドドッ‼”


 俺は相手が脳筋女だから手で受けたりすると予想した。しかしコッチはガトリング砲である。全てを受け切るのは不可能に決まっている。


「ファイアーバリアー‼」


 あっ、コイツこんな時ばっかりバリアーを張りやがった。そうだ、コイツは脳筋でも魔法少女。あまりにも肉弾戦ばかりだから忘れてしまっていた。

 俺のガトリング砲の弾はことごとく炎の障壁に溶かされて行く。こうなったらもっと強い武器で吹き飛ばしてやる。

 そう考えたのも束の間、ウィザードフレアは自身の出した炎の障壁を思いっきりぶん殴った。


「爆炎パンチ・廻‼」


”ガァン‼”


 殴られた障壁は弾を溶かしながらコッチに突っ込んで来る。障壁を殴って飛び道具にするという発想は俺には無かった。コピーの弱点はコピーした者の思考より、俺の思考の方が優先されることであり、こんな常人では考えもしないやり方は思いつきもしない。


“ドゴ―――――ン‼”


 障壁が派手にぶち当たり、その場に倒れる俺。あまりに強い衝撃だったので、コピーが不完全になり所々モザイクがかかっているみたいになってしまった。


「もう終わり?意気込んだ割には大したことなかったね」


 口の悪い魔法少女だ。最後のトドメを刺すつもりなのだろう、スタスタと余裕綽々といった感じで、コチラに近づいて来る。ここで奇襲の一つでも掛けてやりたいところだが、もう体も動かないし、奇襲の一つや二つ、この女なら簡単に力技で乗り切ってしまうだろう。

 ウィザード・フレアは私に馬乗りになり、右の拳を構えた。


「一思いにやれ」


 俺はそう言ったのだが、ウィザード・フレアは何かを思いついた様で俺にこんな交渉をしてきた。


「アナタ、なんでも化けれるのよね?なら私の師匠に化けてくれない?」


 頬を赤らめて乙女の表情になるウィザード・フレア。コイツの師匠というとダーマス様を倒したあの化け物か。


「無理だ。俺の力ではあの女を再現することは出来ない。残念だったな」


 嘘でも何でもなく不可能だった。一度コピーしようとしたがエラーになったのだ。どうやら底の知れない相手はコピーすることが出来ないらしい。


「そっか、それじゃあサヨウナラ」


 無慈悲のウィザード・フレアの炎の拳が、俺の顔面を打ち抜いた。


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