第64話 麻痺
二階堂だ。
戦っている時は気が付かなかったがエレクトロンの電撃を受け続けたせいで体が痺れて動きが悪い。この間みたいに両手を負傷したのよりは良いが、これでは日常生活にも支障が出そうである。特に指先は痺れてしまっており箸はおろかフォークやスプーンすら持つことがままならない。困った、これでは戦闘後のタンパク質の摂取が出来ないじゃないか。そう悩んでいると私の弟子が、いち早くそれに気が付いた。
「師匠。体が痺れてるんですね‼私に師匠のお手伝いをさせて下さい‼」
火種が私の状態異常に何故気が付いたのか?それは定かでは無いが、考えると恐ろしいことになりそうなので、私は考えるのをやめた。
こうして弟子の好意(?)に甘えた私は、ステーキ屋に直行して、1キロのステーキを食べることにした。私ならもっと食べるだろうと考える人も居るかもしれないが、そんなに食ったところで筋肉は身に付かないし、なんなら1キロでも多いぐらいである。これにガーリックライスとシーザーサラダを付けて、私の筋肉飯としよう。
四人掛けのテーブル席に座ったのだが、当たり前のように火種が私の隣を陣取る。まぁ、テーブルを挟んで向かい合うよりコチラの方が食べさせやすいか。そう自分に言い聞かせることで私は鼻息が荒くなっている弟子を許容することにした。
「はぁはぁ、師匠。フォークで食べさせましょうか?それとも口うつ……」
「フォーク。それ以外の選択肢は無い。」
ピシャリと私はそう言い切ったが、弟子は残念そうにチェッと舌打ちした。何を言いかけたのか?それを考えるだけで身震いがしてくる。最近構い過ぎてるから、関係性がバグって来ているのかもしれない。これが終わったら少し距離を置くのもありだな。
「はい師匠。あーん♪」
肉一切れをフォークで突き刺して私の口元に持って行く火種。嬉しそうな顔である。私に肉を食べさせようとするのの何がそんなに楽しいのか意味不明だが。私は素直に弟子が持って来た肉をパクリと食べた。
「師匠♪美味しいですか?」
「もぐもぐ……美味いよ。戦いの後だから、いつもより美味い。」
「うふふ♪師弟の愛の力ですね♪」
何だか会話が噛み合わない。何を言ってるんだコイツ?流石の私でも鳥肌が立つんだが。
「新婚夫婦ってこんな感じなんですかね?……ぐふふ♪」
「ぐふふ♪じゃない。変な笑い方するな。黙って早く食べ物を私の口に運べ、わんこそばのスピードでな。」
「分かりました。全くしょうがないでちゅねー♪明ちゃんはー♪」
この後、赤ちゃんプレイまで始めた調子こいたバカ弟子に鉄拳制裁したのは言うまでもない。全くもって救いようのないバカ弟子である。さっさと破門にしてやりたいが、コイツの場合は破門しても、次の日には当たり前のように玄関に立っている気がするので、破門が全く意味を成さない気がする。
タイムマシンがあれば過去に戻って昔の自分に教えてやりたい。今お前が弟子にしようとしている人物は危険人物であると。
「師匠やっぱり口移しで」
「うるさい、その舌引っこ抜くぞ」
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