第59話 ギリギリまで頑張って

 火種です。エレクトロンさんことウィザード・プラズマさんは、正直メチャクチャ強いです。このままだと体が痺れ過ぎておかしくなりそうです。

 倒れた方が圧倒的に楽、それは分かっているのですが、倒れて楽になるぐらいなら死んだ方がマシです。だって師匠に幻滅されたくないですもんね。


「まだ立ってられるとは、流石は二階堂さん譲りのしぶとさデスね」


「ど……どういたしまして。」


 とはいえ満身創痍には変わりありません。逆転の手立ても浮かんできませんし、こういう時、師匠なら何て言うかな?『とにかく相手を殴れ‼』とか言いそうですね。実に師匠らしい考えです。


「でもこれ以上やっても無駄デスよ。アナタの物理攻撃はおろか、アナタの炎の魔法すら私にはダメージを与えることが出来まセン。やるだけ無駄なことはしないことをオススメしマス」


「む、無駄かどうかは私が決める事です……アナタが決めることではありません。」


「オー、そういうところも二階堂さんにそっくりデス。もしや二階堂さんの年の離れた妹さんですか?」


 師匠の妹。だとしたらこれ以上の幸せは無いのでしょうが、残念ながら私と師匠との間に血の繋がりはありません。いやまてよ、人類皆兄妹という考えがあります。ということは広い意味で考えれば、私も師匠も姉妹ということになるのでは無いでしょうか?それはとても素晴らしいことです♪


「うふふ♪」


「ど、どうしたんデス?感電し過ぎて頭おかしくなりまシタか?」


「いえ、なんでもありません。でも元気が出てきたので、こちらから行かせて貰います‼」


 私は地面を蹴って大きく駆け出しましたが、作戦といっても、とにかく殴るそれだけです。それだけが今の私に出来ることです。


「爆炎パンチ・廻‼」


「また物理攻撃デスか、何度やっても諦めない人デスね。まぁ、こういう人が居てくれるから侵略しがいがあるというものデス」





~15分後~


「……がぁ‼」


“ドサッ‼”


 火種です。本当に何の糸口も無いので、一方的にし電撃を喰らい、また倒れてしまいました。でもまだ立てる、拳を握れる、さぁ眼前の敵を殴りに行こうか。


「素晴らしい精神力。これはますます楽しくなってきまシタ♪」


 いくら倒してもゾンビの様に立ち上がる私を見ても、エレクトロンさんは何も動じることはなく、逆に楽しそうに笑います。流石は師匠の仲間だった人です。大神さんとは別の強みを感じます。


「ですが、そろそろフィニッシュと行きたいところデス。まぁ、別にまだ立ちあがって来ても良いんデスがね」


 エレクトロンさんがバチバチ電気を流している両手をコチラに向けます。どうやら放電するつもりらしいですが、私は膝がガクガクするのでとても避けられそうにありません……流石にここまでの様です。捕まっている彩夏ちゃんが「逃げて‼」と連呼していますが、足に力が入りません。


「おい何を諦めている?最後まであきらめるなといつも言っているだろう」


 師匠の幻聴が聞こえてきます。やっぱり諦めたら駄目ですよね?試合終了ですもんね。


「まぁ、それにしたってよくやった方か、頑張ったな。後は私に任せろ」


 ポンと私の両肩に手が置かれました。というか振り返ったら師匠がいつものフリフリ衣装の上からローブを身に纏った姿で立っていました。


「し、師匠‼いつからココに⁉」


「30分前ぐらいからだ。お前が何処まで出来るのか見ていた。」


「見てたんですね♪」


 凡人なら師匠のクセに弟子を労われと言うのでしょうが、私と師匠の間にそんな安っぽい愛情は必要無いのです。むしろ厳しくされた方が愛を感じます。


「二階堂さんお久しぶりデス♪」


「おう、エレクトロン。約束通りに侵略しに来たな、律儀な奴だ」


「当たり前デス♪私は魔法少女の前に侵略者デスから♪とりあえず挨拶代わりの一発を喰らっとくデス‼サンダーブレイカー‼」


 エレクトロンさんの両手から凄まじい電撃が発せられました。

 師匠は私の前に立ち、迫ってきた電撃を両手で受け止め、涼しい顔をしています。


“バチバチバチバチ‼”


「これはかなり痺れるな」


「Oh‼アンビリバボー‼何で電撃を受け止められるんデス♪」


 このエレクトロンさんの問いに対して、師匠は不敵に笑ってこう答えます。


「そんなこと私が知るか」



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