第58話 三匹が揃う
十年前
「はぁはぁ……参ったデスね。」
地球を侵略しに来たというのに、まさかの亀の化け物一匹に苦戦するとは抜かりまシタ。
「ぐへへ♪さっきまでの威勢はどうした?異星からの侵略者よ?」
「くっ」
悔しいデスが、ぐうの音も出ません。
私の持つ宇宙科学をもってしても、この喋る大亀に傷一つ付けることが出来ないのデス。
我が母星エレクトラ星の在りし日に似た美しい星、太陽系第三惑星地球。
化学汚染によって住めなくなったエレクトラ星の民たちが移住するには持って来いの星なのですが、こんなのが居るとなると考えものデスね。
一旦コロニーに帰って態勢を整えたいところですが、この大亀が逃がしてくれそうにもありません。
光線銃のエネルギーも残りわずか、どうしますカネ。
「そろそろトドメだ。ローリング甲羅アタックを喰らえ‼」
「そんなダサい名前の技を喰らって死ぬのは嫌デス‼」
手足と顔を引っ込めてギューン回転を始める大亀。地球の文化に触れた際に、こんな怪獣を見たことがありマスが、あっちは正義の亀だったのに、コッチは完全な悪亀デス。
最後の最後まで諦めまセンよ‼コロニーに住む十万人の生き残ったエレクトラの民の為に‼
私は光線銃を構えまシタ。奴の甲羅がビームを弾くことは知っていまシタが、こうなれば破れかぶれデス。
「その意気や良し‼」
不意に私の足元からそんな声が聞こえたノデ、声のした方を見てみると、そこにはこの世界の生き物であるタヌキに似た二足歩行の化け物が居たんデス。
敵だと思った私は、その化け物を咄嗟に踏みつけました。
“ムギュ‼”
「痛い‼何すんだ‼」
タヌキの化け物はキレ始めまシタ。一体この生き物は何なのでショウ?
“ギューン‼”
そうこうしている内に、大亀の化け物が高速回転しながら飛んで来マス。デスが私と大亀の間に赤と青の少女が現れたのデス。少女二人はドレスの様な物を着てオリ、まるで女児向けアニメから飛び出してきた様な姿デス。
「私の氷で減速させますから、二階堂さんが大亀さんを止めてもらいますか?」
「了解だ。まぁ、そのまま受けても止める自信はあるが」
「駄目ですよ。リスクは少しでも減らさないと」
「……了解」
“ギューン‼”
飛んで来る大亀を前にして余裕綽々の二人。この二人は一体何なのでしょう?
「アイスウォール三枚‼」
青の方の少女がそう叫ぶと、大亀の前に氷の壁が三枚現れ、ドーン‼ドーン‼ドーン‼と大亀が、それを壊しながら突っ込んできマス。青の少女の言った通り、大亀は大幅に減速しまシタ。すると今度は赤い少女が大亀に向かって突っ込んで行きます。
「はぁあああああああああああああ‼」
そのままガシッ‼と大亀を捕マエ、回転も止めることに成功シタ赤い少女。焦げ臭い臭いがしますが、まさか赤い少女が焦げた匂いでショウか?
「熱かったな。減速させて正解だった。ありがとう大神」
「どういたしまして」
「離せ~~~~~~~~‼」
ジタバタする大亀の化け物。しかし赤い少女は両手でガッシリ掴んで大亀を離しはしません。
「連携で行くぞ大神‼」
「任せて下さい‼いつでもどうぞ‼」
「応っ‼二階堂流活人拳・大紅蓮投げぇえええええ‼」
そう赤の少女が叫び、大亀を回転させながら空に投げまシタ。回転しながら大亀は燃えているのが印象的デスね。
「ぎゃああああああああああ‼」
大亀が悲鳴を上げているので、どうやらダメージがある様デス。ふむふむこれは興味深イ。
今度は青い少女が腰の鞘付きの刀を構えて大亀に向かって飛んで行きます。
「抜刀‼一刀涼断‼」
“スパン‼”
刀で大亀の体を一刀両断した青い少女。二つに分かれた大亀の体は程なくして爆発飛散しまシタ。
“ドゴーーーーーーーーーーン‼”
「凄いデス‼」
私の二人の少女の活躍に酷く感動しまシタ。私もあんな風になってみたいとも思ったのデス。
「ふふっ、スゲ―だろ?」
私が踏んでいるタヌキがドヤ顔でそんなことを言っていますが、凄いのはあの二人であって、コイツではありまセン。
「あんな風になりたいか?」
「えっ、なれるんデスか?」
「あぁ、ただ一旦地球侵略は中止して地球の為に戦ってくれ。それが条件だ」
私は少し考えましたが、郷に入っては郷に従えというコトワザもありマスし、ここはタヌキの提案に乗ることにしまシタ。
こうして雷の魔法少女ウィザード・プラズマが誕生しましたトサ、メデタシ♪メデタシ♪
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