第56話 三対三
私の名前は
場所はランチをやっているお洒落な喫茶店。男女が3対3の合コンで、相手は消防士さんです。ムキムキマッチョばかりで私好みです♪
私達は男女別に長テーブルを挟んで座り、今は男性側の自己紹介が終わって、私たち女性側の自己紹介になりました。よーし、頑張るぞ♪
「宮城 椿です♪21歳です♪今日は本当の恋を見つけに来ました♪」
私が自己紹介すると男性側がわぁ‼と盛り上がり、ヒューヒューと口笛なんかもしてくれます。正直気分が良いですね♪
「
我がファミレスのお局様である田所さんの重々しい自己紹介に、男性陣が戸惑いつつも、私の時の様に盛り上がってくれました。空気読んでくれて本当にありがたいです。
田所さんも満更でもなさそうな顔をしているので良しです。普段は良い人なんですが一旦ヘソを曲げると機嫌を直すのに時間がかかるのです。
さて最後の一人です。この人はある意味で田所さんよりも心配です。
「二階堂 明です。歳は23歳です。今日は宮城さんがどうしてもというので参加しました。趣味は筋トレです」
ほら変なこと言った‼
そりゃ私が呼んだけど、そんな風に自己紹介したら場が凍りつくじゃん。どうして二階堂さんって23歳の女子なのに、こんなに武士みたいなの?
「筋トレ?へぇ、じゃあ力に自信あるんだ」
男性側で一番ガタイの良い今井さん(28歳)が二階堂さんに興味を示したらしく、彼女に話し掛けて来ました。
それに対して二階堂さんは眉一つ動かさずにこう答えます。
「はい、まぁ、そうですね」
「じゃあ、俺と腕相撲しようよ」
ドーンと丸太みたいに太い腕をテーブルに乗せる今井さん。男と女の腕相撲なんて勝敗が分かり切っているし、こんな人と戦ったら腕がへし折れちゃうかも。
「良いですよ。やりましょう」
えっ⁉やるの⁉
いつも男らしい二階堂さんですが、こんな時まで男らしいさ全開じゃなくて良いのに。これは私が止めないと。
「に、二階堂さん、やめときましょうよ」
「二階堂流活人拳心得一つ、売られた勝負は全部買う……です」
また変なこと言い始めた。二階堂流活人拳って何?
こうして結局は腕相撲をすることになり、二人はテーブルの上で手を組みました。
すると次は男性陣の山田さん(26歳)が掛け声を発します。
「それじゃあ行きますよ‼レディ……ゴ」
「待て山田‼」
「へっ?」
止めたのは今手を組んでいる今井さんであり、彼は顔を俯かせ、こう呟きました。
「俺の負けだ」
その言葉が信じられなかったのは私だけではない筈です。
まだ勝負も始まって無いのに、どうしていきなり敗北宣言?
「ちょ、何言ってるんですか?今井さんはアームレスリングの全国大会で上位入賞するほどの猛者なのに、女の人相手にやる前から負けを認めるなんて」
「バカ野郎‼お前は組んでないから分からないんだ‼この腕を全く動かせる気がしない‼怪物‼いや大怪獣を相手にしてるみたいだ‼」
店内に響き渡る声で今井さんが力説する。余程怖いのか目に涙まで浮かべている始末です。完全に彼の戦意は折られている様です。
「あの、負けを認めたなら手を放して貰って良いですか?少しお手洗いに行きたいんですが」
「ひぃ‼すいませんでした‼」
今井さんがパッと手を放すと、二階堂さんはスタスタとお手洗いの方に歩いて行きました。
合コンが始まって五分で、いきなり男を泣かせるなんて、色んな意味で凄い人です。
「うん、上手く出来てるな」
どうも二階堂 明だ。トイレの大きな鏡で自分の姿を見て、合コンを完璧にこなす自分を褒めてあげる。
しかし、ロングスカートとというのを初めて履いたが、こんなに動きにくいものだとは、これでは突然の戦闘になった時に動きづらくて仕方ない。ビリビリに破く自信が大いにある。
「お前、合コンなんてするんだな」
聞き慣れた声がしたかと思えば、鏡に映るいつものタヌキ。やれやれまた来たか。
「なんだクソダヌキ。今日こそ引導を渡してやろうか?」
「まぁ待て、今○○町が大変なことになってるだろ?」
「ふん、あの程度の敵に苦戦しているのか?火種もまだまだだな」
あんなアメンボみたいな敵。私なら五分で全滅させている。
「いや、またお前の元チームメイトだよ。約束通りに地球侵略しに来た」
それを聞いて私は全てを理解して、ふぅと溜息をついた。
せっかく合コンというのを完璧にこなしている最中だと言うに、水を差されるとは思いもしなかった。
この後、宮城さんに抜けることを伝えると、合コンも解散するところだったと言われ都合が良かった。都合は良いのだけど、何故始まったばかりで解散することになったのか?それだけが謎である。
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