第55話 チームメイト

 木隠 みどりです。

 それは一瞬のことでした。

 突然光ったかと思えば、バチバチと音を立てて、まばゆい光が私達を襲ったのです。

 頭のてっぺんから、足のつま先まで感電する体。

 戦いが始まって二秒、ウィザード・プラズマさんことエレクトロンさんがパチンと指を弾いただけで、流子ちゃんと霧子ちゃん、そして私の三人はなす術もなく雷に襲われ、その場に倒れ伏しました。


「み、みんな大丈夫⁉」


 彩夏ちゃんがそう叫んだので、大丈夫だよと言ってあげたかったのですが、体全体が麻痺しており、唇も痙攣して上手く言葉を出すことが出来ません。

 火種ちゃんは雷を寸前の所で躱したのが見えましたが、彩夏ちゃんには雷が襲ってこなかった様に見えました。これは一体どう言うことなんでしょう?


「フフッ、戦いとは非情なのデス」


 自慢気に鼻高々なエレクトロンさん。冗談みたいな人ですが、その実力は本物なのでしょう。

 あの毒舌家の霧子ちゃんも、感電して全く動けず、悪態の一つも付けないのがその証拠です。


「あっ、話は変わりマスが、そこの黄色い子は名前はなんて言うんデスか♪」


「えっ、私?」


「そうアナタデス♪」


 突然、ニコニコ顔で彩夏ちゃんに話し掛けるエレクトロンさん。攻撃も仕掛けなかったようですし、一体何が狙いなのでしょう?


「私はウィザード・ライトニングこと鳴神 彩夏。好きな食べ物はローストビーフです」

 

 この状況で丁寧に好きな食べ物まで答えるなんて、やっぱり彩夏ちゃんは天然ですね。


「素晴らしい名前デス♪サジ君、至急ローストビーフの準備をお願いしマス。」


「えっ、ローストビーフあるの?」


「はぁい♪用意させてますから、後でたらふく食べて下サイ♪」


「やった―――♪」


 いやいや、やったじゃない。仲間を感電させた相手から施しを受けようとしないで。

やっぱり痩せても彩夏ちゃんは食いしん坊の様です。

 二人のやり取りの最中、火種ちゃんが無言でエレクトロンさんに素早く近づいて行くのが見えました。エレクトロンさんに攻撃を加えるつもりでしょうね。


「おっと、危ナイ」


“パチンッ”


 またエレクトロンさんが右手の指を弾くと、指先から放たれた雷が火種ちゃんを襲います。


「当たりません‼」


 体を横に逸らして雷を避ける火種ちゃん。流石としか言いようがありませんが、もう彼女は超人といっても過言では無いでしょう。


「アナタが攻撃を避けれることは知っていマス。デスがこれなら?」


 私は見ました。火種ちゃんが避けた雷が、サンダーモニュメントと呼ばれる物体に当たり、再び雷として火種ちゃんに向かうのを。

 ようやく唇の痺れが取れた私は叫びました。


「危ない‼」


 しかし、注意も空しく、雷は火種ちゃんに当たりました。


“バチバチバチ‼”


「があああああああああああ‼」


 感電する火種ちゃん。そのまま倒れてしまうかと思われましたが、彼女は足で踏ん張り、よろめいた体を何とか支えて持ちこたえました。


「ホォ、何だか既視感を感じマス。もしやアナタは誰かから師事を受けていマスか?」


 エレクトロンさんの問いに、体からプスプスと煙を出している火種ちゃんはこう答えました。


「わ、私の師匠は、二階堂 明。この世で最も強い生物です。」


 自分の師匠をそんな紹介で良いのでしょうか?私には師匠なんて居ませんが、多分その紹介だと二階堂さんからゲンコツが飛んで来ると思うんですが。


「やはり、アハハハハハハハッ‼」


「し、師匠を知っているんですか?」


「フフッ、知ってるも何も私達は三人チームでシタから♪」


「えぇ⁉」


 大きなリアクションで驚く火種ちゃん。

 それにしても詐欺師に宇宙人、そして地上最強の生物まで居るなんて、先輩の魔法少女さん達は色んな意味で凄いと思います。









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