第51話 来訪者来る

「地球か、何もかも、みな懐かしいデス」


 私はモニターに映った青い星を見ながら感傷に浸っているデス。

 およそ九年と三ヶ月と三日前、私はあの青い星に住んでいたことがありマス。

 何やら涙が出そうでしたが、泣くのは事が終わってからデス。


「現状を維持シテ、待機モード。私の方に異常があった場合は自動降下。そちら側に異常があった場合も自動降下」


『ラーサ』


 自立支援型AIのサジ君の合成音を聞いた後、私は地球へ単身降下することにしましたデス。

 ポットで降下するのも味がありマスが、やはりここは生身で誰にも気づかれずに潜入し、九年と三ヶ月と三日ぶりの地球を楽しむとしましょう。




 黒井 霧子だ。

 この間の黒い球体アメンボみたいなのが、大量の量産型になって町を襲い始めた。

 だからアタシ達が出張って来たわけだが、いかんせん数が多い。


「これで10体目っと‼」


 アタシは大鎌で10体目の魔物を狩り、フーッと溜息をついた。


「フフフッ、甘いな。火種なんて30体を超えてるぞ」


「チッ。」


 何故か今日は私に付いているチャガマに、そんな嫌味めいたことを言われ、思わず舌打ちをしてしまった。

 どうせアタシら四人は火種の奴の金魚のフン、良いとこ引き立て役ってとこだな。

 アイツは確かにスゲー。私ら四人がかりでも軽くあしらえるぐらい強くなった。いや強くなり過ぎた。

 アタシは自分が魔法少女になって戦うことに、周りの奴ら程に積極的じゃ無かったクチだが、最近じゃあ、やる気なんて一ミリも出て来やしない。

 だって、アタシ等が頑張らなくても、どうせ火種がどうにかするんだぜ?こんなのやる意味あるのかよ?


「危ない‼霧子ちゃん‼」


 考え事をしていて集中力を欠いていたのか、アタシは飛び掛かって来るアメンボ野郎に気が付いて無かった。しかしながら、そこはみどりの奴がちゃんとカバーして、飛び掛かって来ていたアメンボを自分の槍を投げて串刺しにした。


「助かったぜ、みどり。」


「もう集中してよ。今、戦闘中なんだよ。」


 魔物の死体から槍を引き抜くみどり。前は争いなんてする奴じゃ無かったのに、半年近く魔法少女をやっているので手慣れたもんである。


「そうだぞ集中しろよ‼もっと熱くなれよ‼」


 どこぞの熱血コーチみたいなことを言い出すチャガマ。この大鎌で八つ裂きにしてやりたいが、奴はそれを見越してかアタシの大鎌の射程外からヤジを飛ばしている。   まぁ良い、今は追いかけて殺すのも億劫だ。


「もう帰ってよくねぇか?火種一人に任せてりゃなんとかなるだろ?」


 アタシがみどりにこう言うと、少し困った顔をして、みどりはこう答えた。


「だ、駄目だよ。迅速に殲滅しないと町の被害が大きくなるでしょ?」


「へいへい。分かりましたよ。全く良い子ぶりやがって」


 みどりの奴も、火種一人で何とか出来ることは否定しなかったな。まぁどうでも良いことだけどよ。


「うわっ‼……お前等、そんなこと言うから敵がさらに増えたぞ。」


 チャガマのその言葉にガックリと肩を落とすアタシ。やれやれ面倒ことになってきた。




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