第41話 完全なる闇落ち

 私はキューブと呼ばれる無機物型の魔物である。

 四角くて水色の正方形の立方体の塊が私だ。

 私は意思はあれど言葉を発することは出来ない。ただ黙々と人類を殲滅するだけである。

 レーザーを出しながら私が町を襲っていると、そこに一人の魔法少女がやって来た。該当するデータによるとウィザード・フレアと呼ばれる火の魔法を使う魔法少女である。


「おりゃあああああああああ‼」


 私を見つけるなり、いきなり蹴り掛かって来た。どうやら野蛮な人種らしい。

 蹴られる瞬間に私は体を分裂させ、108の小さなキューブになり、ウィザード・フレアを驚かせた。

 そしてそのままレーザーで四方八方から、不規則にレーザーを放つ。避けるウィザード・フレアであったが、流石に全てを避けきれずにかなり被弾した様だ。

 ダメージを負ってその場にドサッと仰向けに倒れるウィザード・フレア。

 よし、あとは再び合体して、最大出力のレーザーでトドメだ。

 と、思っていたのだが、私の体の一つをウィザード・フレアが掴んでおり、それを一向に離そうとしない。私は抵抗したが、最終的には物凄い力で握りつぶされてしまった。108ある内の一つなので、潰されても大した問題は無いのだが、少々不気味ではある。早々に消し去ってしまおう。


「うふふふふ♪あはははは♪あーっはははははは♪」


 そんな風に笑い叫びながらスクッと立ち上がるウィザード・フレア。おかしいな?あれだけの私のレーザーを喰らって再び立ち上がるなんて96%あり得ないんだが。


「歯ごたえある敵で助かる。これでようやく本気が出せそうだよ」


 そう言うとウィザード・フレアの魔力がグッと膨れ上がった。


「超大変身‼」


 奴が大層なことを言うと、赤かった衣装が黒く変色して行った。これはどういうことなのだろう?


「ウィザード・フレア・ノワール。こうなった私はちょっと強いよ♪」


 ウィザード・フレア・ノワール?確かに魔力量が格段に跳ね上がっているし、かなり強くなっている様だが、ダメージまでは回復出来ていまい。とりあえず再びレーザーの一斉掃射で……。

そこまで私が考えた時、ウィザード・フレアの姿が焼失した。


「先手必勝‼」


 声が聞こえた時には黒炎を纏った炎の拳で私の体を10個ほど焼き払っていた。

 どうやら超スピードで、私のところまでやって来たらしい。合体する為に体を集めていたのが裏目になったな。

 私は分離した個体を数個操りウィザードフレアに体当たりを仕掛けた。しかし、ウィザード・フレアは笑いながら、その全てを手と足で迎撃して行く。殴り、蹴り、まるで踊るように狂喜にに満ちた笑みを浮かべながら。


「あははははははははははは‼」


 これ以上、体を壊させるわけにはいかない。私は残った91個の体を集め再び合体した。出力100%……いや120%のレーザーで消し飛ばしてやる。


「良いね♪全力で来てよ♪」


 両手で手招きするウィザード・フレア。

 やはり危険な敵だ。120%で私の体が崩壊しようとも、ここで消し去っておかねば。


“ビィイイイイイイィイイイイイイイイ‼”


 私は一直線に大出力のレーザーを放つ。やはり反動で体がミシミシ軋み、ひび割れすら起こり始めたが、ここで奴を倒さなければ我が軍に大規模な被害が発生するだろう。そう考えると私の犠牲が出たとしてもお釣りがくる、実に合理的な判断だ。

 レーザーを避けるでもなく、両手を前に出して構えるだけのウィザード・フレア。どうやらレーザーを受け止めるつもりらしい。避けても私のレーザーは追尾するシステムになっているが、受け止めるという行為はあまりに自殺行為である。


“バァァアアアアアアアアアアアア‼”


「ギギギギギギギギギギギギッ‼」


 だがウィザード・フレア受け止めた。奇声を上げて苦しそうな顔をしているが、両手、両足に黒炎を纏いながら踏ん張っている。

 おかしい、おかしい、おかしい。私の思考回路がショートしそうになる。何だこの生き物は?私の予想の範疇を超えて来るんじゃない。

 結果として私はエネルギー切れを起こし、レーザーを撃てなくなった。再度レーザーを撃つためには、大気中のマナをチャージしなければならない。

 だが目の前の敵がそれを待ってくれるわけも無い。


「これで手札は無くなったね。今度はコッチの番だよ♪」


 ニコリと笑い私に素早く近づいて来るウィザード・フレア。そうして右手の一本の指を私の体に突き立てた。


“ドガッ‼”


 突き立てられた瞬間は軽微なダメージだと思ったが、ピシピシと自分の体がひび割れて崩れ始めた時、私は自分の死期を悟った。


「二階堂流活人拳 一点突破・黒龍炎。」


 ポツリとウィザード・フレアがそう呟いた時、バラバラと私の体は粉々になり、黒い炎が塵一つ残さぬように破片を燃やして行く。

 デストロ様、聞こえていますか?この危険物は早々に処理しなければなりません。

再度警告、早々に処理を……。





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