第40話 四対一

 木隠 みどりです。

 何故か火種ちゃんと私達で戦うことになって困惑してます。


「私、火種ちゃんと相性最悪だよー‼」


 と、思わず叫んでしまう私。

 私の魔法は植物を操る能力。言わずもがな火種ちゃんの火は弱点なのです。


「なら木隠さんは後方で援護をお願いします。主にヒーラーとして。」


「あっ、はい、分かったよ。」


 流子ちゃんにそう言われて、素直に従う私。良かった、火種ちゃんに殴られたくないですから。

 私が後方でヒーラー兼援護、流子ちゃんは中距離から水の弓矢で射撃、彩夏ちゃんと霧子ちゃんがアタッカーで戦うという図式。

 いくら火種ちゃんが強くなったといっても、魔法少女四人相手には叶わないでしょう。


「ライトニングハンマー‼」


「ミストリッパー‼」


 彩夏ちゃんと霧子ちゃんが自分の武器を召喚します。大槌と大鎌なんて戦いにくそうな武器ですが、二人共、今は慣れて使っています。


「初めから全力でいっちゃうよー‼雷落とし‼」


 彩夏ちゃんが高く跳躍して、そのまま下に居る火種ちゃん目掛けてライトニングハンマーを振り下ろします。ライトニングハンマーは雷を纏っており、当たれば大ダメージ必至です。


「そんな雷、避けるまでも無いよ。二階堂流活人拳 殴打火炎連撃の型。」


 彩夏ちゃんの大槌目掛けて、炎を纏った連続の拳を放つ火種ちゃん。


“ドン‼ドン‼ドン‼ドン‼ドン‼ドン‼……”


まるで太鼓のように連続で叩かれるライトニングハンマー。そして次の瞬間。


”ドォオオオオオォオオオオオオン‼”


「きゃああああああああああああ‼」


 ライトニングハンマーごと天高く打ち上げられる彩夏ちゃん。もう無茶苦茶です。


「50コンボ、まだまだ遊べると思ったのになぁ。」


 残念そうな火種ちゃん。もうこの人はどこまで本気なのか分かりません。

 とりあえず私は落ちて来た彩夏ちゃんを、魔法で大きな花のトランプリンを出してポヨーンと助けましたが、次は霧子ちゃんが火種ちゃんに斬りかかりました。


「容赦しねぇからな‼死ねぇ‼」


 有言実行で首筋目掛けてミストリッパーを横に振う霧子ちゃん。本当に後先考えない人です。これで火種ちゃんの首が飛んだらどうするつもりでしょう?

 しかし、火種ちゃんは右手だけで、大鎌の刃をいとも簡単にガシッと掴んでしまいました。それで溜息。


「はぁ―――――、霧子ちゃん、もっと早く振らないと。これなら反射で掴めちゃうよ」


「やかましい‼流子‼今だ撃ちまくれ‼」


「言われなくてもです」


 流子ちゃんは矢を三本束ねて、ウオーターアローでそれを一気に撃ち出しました。三本の矢は合体して一つの大きな矢になり威力と速度を倍増させ、火種ちゃんに向かって行きます。

 ですが、火種ちゃんは何をするでもなく、ただジーッと迫って来る矢を見つめていました。


“ガシッ”


 高速で飛んで来た矢すら左手で掴んでしまった火種ちゃん。そしてそのまま矢を握りしめ。


「三本の矢も折れる‼」


 と言いながらバキッと矢をへし折りました。

 その後、間髪入れずに大鎌ごと霧子ちゃんを投げ飛ばします。


「ぎゃあああああああああ‼」


 女の子らしならぬ悲鳴を上げる霧子ちゃん。仕方が無いので私は蔦を伸ばして霧子ちゃんを絡めとって助けました。

 それにしても四人がかりでも火種ちゃんの方が優勢とか、魔法少女は本当に火種ちゃん一人で良いんじゃないでしょうか?


「ウォーミングアップは終わりで良いね?今から本気で行くから。」


 ゴキゴキと首を鳴らしながら、殺気の籠った目を私達に向けて来る火種ちゃん。

 本気じゃ無いよね?本気で殺すわけ無いよね?

 と、ここで私達、魔法少女の本能が魔物が地上に舞い降りたのを検知しました。


「あー、魔物さんが来たね。じゃあそっちを片付けてから続きしようか♪お先に行ってきまーす♪」


 そう言うと、火種ちゃんは屋上から飛び降りて、バァン‼と地面に着地、そしてそのまま走って現場に向かうようです。


「私達も行く?」


 私は疑問形で皆に尋ねましたが、誰も即答で「行こう」とは言わずに、渋い顔をして暫くダンマリのままでした。

 ぶっちゃけ火種ちゃん一人でも魔物を倒せそうですし、魔物倒したら今度は私達が倒されるかもしれないと考えると行く気も無くなりますね。




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る