詐欺師の魔法使い編
第13話 鍛錬
雫 流子です。
前にも説明したかもしれませんが、ウィザード・アクアとして現役魔法少女をやらせてもらっています。
私はウィザード・フレアこと日ノ本 火種さんと同じクラスなのですが、彼女の最近の言動がおかしいのです。
ある時は教室で空気椅子で授業を受けていたり、昼休みに鉄棒に足でぶら下がってそのまま腹筋をし始めたり、魔法少女の戦闘中に「オラァ‼」とか「死ねぇ‼」とか言いながら魔物を殴りつけたり、ハッキリ言って少し引きます。まるで人が変わってしまったようです。
そう成ってしまったキッカケは、やはり自分の師匠との出会いなのでしょうか?
先日のブータンとの戦いの時、二階堂 明さんというOBの魔法少女の人が日ノ本さんに稽古を付けたらしく、それによって日ノ本さんは格段に強くなりました。それは良い事なのですが、あまりにも健全な女子中学生としてあるまじき行動の数々です。一友人としてこれは見過ごせません。
ということで私は授業が始まる前に教室で日ノ本さんと話をすることにしました。
「日ノ本さん、おはようございます」
「おはよう雫ちゃん♪」
朝からルンルン気分の日ノ本さん。そこには前までの作られた笑顔はなく、満面の笑みでした。本当に何が彼女を変えたのでしょう?
「日ノ本さん、最近アナタ変わりましたよね?」
「確かにそうだね。腹筋が薄っすら割れ始めたよ」
「いやそういう肉体的な変化ではなく・・・って割れてるんですか?」
「うん、触ってみる?」
ポンとお腹を叩いて触ってアピールしてくる日ノ本さん。それじゃまぁ、失礼して。
制服の上から彼女のお腹を触ってみましたが、硬くて段になっていて、明らかに鍛えられていることが分かります。
「凄い‼」
おっと思わず感想が口に出てしまいましたね。
「えへへ♪将来ボディビルかフィジークの大会に出ようかな?」
日ノ本さんのこのコメントを聞いて、筋肉がバキバキになった彼女が水着姿でサイドチェストを決めながらニコッと笑っているところを想像して、私はブッと吹き出して笑ってしまいました。
「あー、笑わないでよ。もう」
プク―ッと両頬を膨らませる日ノ本さん。いけません、怒られせてしまいましたね。
「申し訳ありません。少しボディビルダーになった日ノ本さんを想像してしまいまして。」
「えっ、想像したの?キレてた?私キレてた?」
「えっ、あっ、はい、キレてたかと。」
「やったー♪私キレてたんだー♪」
何だこの会話。ボディビル用語を話す魔法少女は不味いですよね。あまりにもニッチ過ぎます。ここは方向の修正をしなければなりません。
「日ノ本さん。一度アナタの師匠に会わせて下さい」
私がそう言うと、さっきまで笑顔だった日ノ本さんの顔がスッと真顔になり、私のことを死んだ魚の様な目で見つめてくるのです。
「えっ、なんで、もしかして私の師匠を取るつもりじゃ?」
怖い怖い。ヤンデレなのでしょうか?どうしてそういう発想になるのか理解に苦しみます。
「い、いえ、そんなつもりはありません。ただ日ノ本さんを強くしてくれた師匠さんに会ってみたくなっただけです」
「なーんだそうか♪じゃあ次の土曜日にウィザードの皆で師匠のアパートに行ってみようよ。師匠と一緒に朝のランニングを皆でやろう♪」
「えっ?あの話をするだけで……」
「楽しみだなぁ♪」
駄目だ、人の話を全く聞こうとしない。というワケで次の土曜日に日ノ本さんの師匠さんのアパートに行くことになりました。
一体どうなることやらですが、日ノ本さんに女子中学生らしさを取り戻すために頑張りたいと思います。
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