第12話 縁があったらまた会いましょう

二階堂 明だ。

久しぶりの魔法少女としての戦い・・・いや、魔法・・・処女?

まぁ呼び方なんてどうでも良いが、ともかく戦いが終わりを告げた。

ダーマスは中々強かったが、あれで三幹部の一人というなら拍子抜けだな。最近の魔物は弱くなったのだろうか?

助けた少女達から、まばらなお礼の言葉を聞いたり聞かなかったりすると、最近の子供は扱い辛そうだなぁとしみじみ感じることが出来た。


「それでは私はコレで帰るよ。」


魔法少女としての変身を解いてジャージ姿になった私は、早々にその場を立ち去ろうとする。これ以上ここに居て厄介ごとに巻き込まれるのはごめんである。


「えっ?師匠もう帰っちゃうんですか?これから皆でステーキ屋さんで反省会するんですけど、良かったら師匠もどうで・・・」


「丁重にお断りする。」


私は火種からの誘いを食い気味で断った。あまりこの子達と深く関わり合いになるつもりは無いし、察するにステーキ屋というのは近所の牛しか取り扱っていない店だろう。鶏肉メニューが無い店はノーサンキューである。


「そ、そうですか。ならせめて連絡先を教えてくれませんか?」


「火種、私はお前の一日師匠だ。これから先は自分で鍛錬しなさい。お前にはそれが出来る。」


弟子を取るのが面倒くさくて嫌というのもあるが、まぁ、今日のブータンとの戦いを見る限り、これから先も大丈夫だろうという期待は持てる。三幹部の一人は私が今日倒してしまったし。


「師匠・・・分かりました私頑張ります。」


「励めよ。」


火種は目に涙を貯めている。今日会って、今日別れるだけの関係なのだから、そこまで感情的になる必要無いと思うのだが、これで師匠としての役目を終えることが出来るので、そこは突っ込まない。


「また戦いになったら呼ぶからな♪」


私の足元でクソダヌキがそんなことを言っていたので、踏み潰したのは言うまでもない。

こうして私の一日師匠としての長い一日が終わった。



次の日の朝。

私は目覚まし時計のジリリリリン‼という騒音で何とかいつも通り朝の8時に起きることが出来た。いつもはすんなり起きれるのだが、今日は二日酔いで頭が痛くて、体も起こすのも一苦労である。

私はアパート【若葉】と呼ばれるボロアパートの1階に住んでおり、昨日は隣に住む先輩の沙羅さんが一升瓶の日本酒を持って上がり込んできたので、酒宴が始まってしまい、あのウワバミを相手にしてこの様である。


「こ、今回は吐かなかっただけマシか。ロ、ロードワークに行かないと。」


二日酔いごときで朝の日課を怠るわけにはいかない。今日の朝食はバナナとプロテイン、そして二日酔い軽減の為のしじみ汁も追加しておこう。

朝飯の準備を私がしていると、プロテインシェイカーに牛乳と粉プロテインを入れてシャカシャカ振って混ぜている時に、ピンボーンとウチの壊れかけのチャイムが鳴った。


「はーい。」


一応、返事はしておいたが一体誰だろう?

沙羅さんが忘れ物をしたか?だがあの人なら鍵を掛けていてもチャイムを鳴らさずに勝手に入って来る。ということはセールスマンだろうか?ならば拳で語るまでだ。

私は右手でプロテインシェイカーを振ったまま、上はスポーツブラで下はスウェットズボンというラフな格好のまま、自分の家の玄関の扉を開けた。

するとそこには考え得る中で一番厄介な客が立っていた。


「し、師匠‼またお会いできて光栄です‼おはようございます‼」


私に会うなり赤いジャージ姿のサイドポニーの少女、日ノ本 火種が頭を下げて挨拶して来た。

一応言っておくが住所を教えた覚えは一切ない。ということは人の個人情報を漏洩した奴が居るということだ。


「チャース‼来ちゃった♪」


あっ、絶対コイツだ。私はシェイカーを振っていない左手でクソダヌキの頭を鷲掴みにして上に引き上げた。


「痛い‼痛い‼痛い‼頭を握り潰そうとするな‼妖精保護法に引っ掛かるぞ‼」


ジタバタと暴れるチャガマはそんなことを訴えかけているが、妖精保護法なんて知った事か。

私の住所を漏らしたのは万死に値する。


「テメーを法で裁くことは出来そうにないから、私がお前を裁くぜ。」


「しょ、しょえええええええ‼殺意の波動に目覚めないでぇええええ‼こ、殺されるぅうううううう‼」


とりあえず百叩きの計を実行しようとしたが、そこにキラキラと目を輝かせた火種が割り込んできた。


「師匠、今からトレーニングですよね♪お供します♪」


「はぁ。」


どうやら妙に懐かれてしまった様だ。とりあえずタヌキは遠くにぶん投げて、私は作っていたプロテインをゴクリと一口飲んだ。

これから本格的に魔法少女の師匠をやる羽目になるのだが、とりあえず今日のお話はここまで。



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