第4話 初めての修行

 日ノ本 火種です。

 二階堂さんが私に稽古を付けてくれることになりました。これでみんなを助けられるようになると良いなぁ。

 まず私達は公園にてチャガマさんが取り出したマジックアイテム【10倍ミラー】という大きな鏡の中に入りました。


「10倍ミラーの世界は現実と何も変わらないが、生物も居ないし、この中の時の流れは遅く、1時間が10時間になる。つまりあと30時間ぐらいは修行してても大丈夫だ」


 と、チャガマさんが偉そうに言っています。こんな凄いマジックアイテム持っているなんて、普段から私達のパンチラを誘発しようとするだけのエロダヌキでは無かったんですね。

 鏡の中の世界はチャガマさんの言う通り何も変わっていない様に思えますが、人も動物も居ないせいか妙に静かで、どこか不気味です。


「さて時間もあまり無いし、稽古を始めよう。チャガマに聞いたところによると空手をやっているそうだね」


「は、はい、私は自分の拳や足に魔力を込めて戦う魔法少女なので、最近習い始めました」


 空手を習い始めて戦い方が分かって来たけど、それも今回の魔物には通用しませんでした。

 二階堂さんはチャガマさん曰く、格闘においては魔法少女№1の実力らしく、その気迫は本物で相対するだけでも緊張してしまいます。一体私にどんな稽古を付けてくれるんでしょうか?


「なら、そのままの姿で私に攻撃してみろ。本気で、とりあえず当たるまで攻撃してみろ」


「は、はい分かりました」


 魔法の修行かとも思ったけど、やっぱり格闘に関する稽古のようです。当てたら合格とかそういうことかな?

 人を本気で殴ったり蹴ったりしたことはありませんが、四の五の言っている時間はありませんし、二階堂さんは圧倒的強者感があるので胸を借りるつもりで本気でやらせてもらいます。


「とりゃあああああああああ‼」


 私は掛け声と共に右手の拳を二階堂さんの顔面目掛けて放ちました。

すると二階堂さんはその場から全く動かず、首だけを横にして私のパンチを避けました。なんて無駄の無い動きだろう。でも、このぐらいでへこたれません。


「たぁ‼」


 私は今度は右足でキックを放ちました。するとそれを二階堂さんは後ろに数歩下がり、ギリギリ私のキックが当たりませんでした。


「まだまだぁ‼」


 次からパンチとキックのコンビネーションで何度も何度も攻撃を放ちましたが、どれもことごとく躱されたり、手でいなされたりして、全然攻撃が二階堂さんに当たりません。実力差があるのは当然なのでしょうが、自分なりに魔法少女として努力してきたつもりなので、ここまで攻撃が当たらないのは正直ショックです。


「はぁはぁ……」


「どうした?もう終わりか?」


「ま、まだです」


「なら、来い」


 右手で私を手招きする二階堂さん。これは挑発されているんでしょうか?

 正直悔しいので私は右手の拳を握り直し、二階堂さんに目掛けて全身全霊の一撃を放つことにしました。


「爆炎パンチ―――――‼」


 クセになっているのか、魔法少女の時の必殺技を叫びながら右手のパンチを繰り出す私。冷静になってみれば小振りのパンチやキックが当たらないのに、こんな大振りなパンチが当たるわけなのですが、何故か二階堂さんはそのまま突っ立っているだけで、私のパンチは二階堂さんのお腹に当たります。

 しかし、二階堂さんのお腹にパンチが当たると、岩でも殴ったんじゃないかと思うぐらい固く、私の右手がビリビリと痺れて逆にダメージを受けました。

一方、殴られた方の二階堂さんは涼しい顔をしていて、そのあと私のことをギロリと睨みつけるのです。


「それがお前の全力か?なるほどコレでは何も守れないな」


 何も守れない。その言葉は私の心に深く突き刺さりました。現に誰も守れていませんし、今朝の戦いで魔法少女として戦う意思も決意も粉々に打ち砕かれました。


「うぅ……」


 悔しくて情けなくて、涙が両目からこぼれそうになります。が、目の前の人はそれを許してくれそうにもありません。


「泣いている暇は無い。さぁ、今度から私はお前の攻撃を避けない。悔しかったら避けるに値する攻撃を放ってみろ」


 今までのは私の攻撃を見る為の様子見だったようで、今からが本番の様です。

 ですが心が折れかけている私が、二階堂さんの納得のいくような攻撃が出来るわけ無いと思ってしまうのです。





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