第166話 キミだけの水着で
俺たちのご褒美がたった一日で終わるはずもなく、
「じゃじゃーん! どう、しゅうくん!」
「……むっっちゃエロいです‼」
帰省前に俺専用の水着を買っていた藍李さんが、今日は満を持してその水着を拝ませてくれた。
海で見た可愛い系のオフショルダー水着と真逆で、俺専用の水着は露出度が高い黒ビキニだった。
前者が天使なら後者は小悪魔スタイルと言った所か。どちらも甲乙つけがたいほど魅力的ではあるが、後者は『カレシ専用』という点がそのカレシの感情を大きく惑わせていた。
「本当はもうちょっと露出度下げてもよかったんだけど、でもこの水着、けっこうデザインも良くて気に入ってそれでこれに決めたんだ」
「なんであれ俺は好きですよ。というか藍李さんに似合わない水着なんてこの世に存在しないし、何よりも俺の為に着てくれてるってだけで文句なしの100点満点、いや200点満点ですっ」
ぶっちゃけ今すぐベッドに押し倒してめちゃくちゃにしたい。けどまだ目に焼き付けておきたい願望もたしかにあって。
押し寄せる二律背反に頭を抱えていると、ふと脳裏にこんな疑問が湧いた。
「もしかしてだけど、それで姉ちゃんたちとプール行かないですよね?」
「さっきも言ったでしょ。これはしゅうくん専用の水着。見せるのはしゅうくんだけ。真雪にも見せないよ」
「あぁぁ。俺のカノジョが可愛すぎてしんどい! 男心弄ばられてる!」
「むふふ。しゅうくんを悩殺してしまいましたかねぇ」
いつもされてます。
でも、今日はいつも以上に藍李さんに夢中になってる。
「はぁぁ。エロい以外の感想が出てこない」
「そんなに性的かなぁ、この水着」
「性的というか、藍李さんが身に纏うことでエロティックさが倍増してるんですよ。いや、水着が藍李さんの魅力をより惹き立ててるのか」
まぁ、どっちにしろエロいことに変わりはないな。
「ごめん我慢できない。とりあえず抱きしめていい?」
「もう見なくていいの?」
「見るよ。でも、それ以上に今すぐ藍李さんとイチャイチャしたい。藍李さんがまだ準備できないっていうなら我慢するけど」
「それは杞憂だよ。私はもう準備万端。あとはしゅうくんに愛してもらうだけだよ?」
「っ!」
「あはぁ。煩悩まみれのしゅうくん最高ぉ」
小悪魔の誘惑に、心臓がドクンッと大きく跳ね上がった。
そんなこと言われて我慢できる男がいるはずがない。
思考回路が一瞬で沸騰するような感覚を味わって、理性よりも本能がカラダを突き動かす。
気付けば俺は藍李さんの腕を掴んで、そのまま手繰り寄せて胸の中で彼女を包んでいた。
ぎゅぅ、とカラダを密着させると、昨夜の熱の余韻がまた沸々と湧き上がっていくのを感じた。
「くっそぉ。藍李さんが可愛すぎて自分の制御ができなくなる」
「えへへ。前よりも積極的になってくれたね」
「こんな刺激的な姿見せつけてきてお預けなんて無粋な真似しないでしょ?」
「私はべつにお預けしてもいいんだよ?」
「ふーん。それなら藍李さんは我慢できるの? 俺、一日くらいなら我慢できるけど?」
「――ごめん調子に乗りました。たぶん、ここで我慢したら寝てるしゅうくんの隣でオナニーしちゃうかも」
「おな……はぁ。でしょ」
俺よりも自分の欲望に忠実な藍李さんがこの状況でブレーキを掛けられるはずもなく、揶揄ったことを潔く認めて謝罪した。
そんな愛らしい彼女の黒髪を優しく撫でながら、
「昨日あんだけしたのに、お互いにまだし足りないとか、性欲旺盛ですね」
「私は年中発情してるよ」
またこの人はさらっとエグいことを言う。でも、そこが可愛くて男ととしては求められていると知れて嬉しくなる。
「それは俺のせい?」
強制的に見つめるようにした紺碧の瞳は、俺の思わぬ行動にわずかに動揺の色を浮かべながらもしかし、すぐに熱を帯びて。
「――うん。しゅうくんのせい。だからこの熱をしゅうくんが
「じゃあ、俺の熱は藍李さんが鎮めてくれますか?」
「……ふふ。うん。私が責任を持ってその熱情を鎮めてあげる」
ほんと、この人は全力で俺の想いに応えてくれる。
昂ぶり続ける熱を冷ますのはきっと一度や二度では足りない――それ以上の快楽と高揚を感じなければ、この熱は冷めるどころか燃えるばかりだ。
だから、
「「――んっ」」
見つめ合った数秒後。暴走の兆しのように俺と藍李さんは相手の唇を奪った。
「ぷはっ。ご褒美は一回だけじゃ足りないもんね」
「うん。でもこれ、俺だけのご褒美になりませんかね?」
「何言ってるの。しゅうくんと満たし合うことは私にとって最大のご褒美なんだよ」
「それじゃあご褒美の回数減らすべきじゃ……」
「回数減らしてもいいけどその一回がしゅうくんにとって毎回ハードになるよ」
それでもいいの、と圧を孕みながら問いかけてくる藍李さんに、俺は頬を引きつせて、
「前言撤回しないとどんな恐ろしい目に遭うか分からないのでさっきの発言はなかったことにさせてください」
「よろしい。まぁ、回数増やそうが減らそうが、しゅうくんの精気が空っぽになることは変わらないんだけどね」
「サキュバスですかアナタは⁉」
「そうだよ。しゅうくんだけのサキュバス」
そこは否定してほしかったけど、それを認めるのが俺の恋人、藍李さんなのだ。
「エッチなサキュバスと契約した対価は重いなぁ」
「でもその分、ご褒美はとびきり甘いよ」
「――ふっ。そうですね。たしかにこれは、並の男じゃ味わえない最高級のスイーツです」
きっと、この極上のスイーツを喉から手が出る人は五万といるだろう。
それでも、眼前に映す極上のスイーツには意思があって、そしてそのスイーツは俺に食べられることを望んでいるから。
「今日は昨日よりも激しくなるかもしれないけど、いいですか?」
「もちろん。私はしゅうくんのものなので。余すことなく味わってください」
「男に生まれてよかったぁ」
「あははっ! 本当に嬉しそうな顔してる。――それじゃあ、男に生まれてよかったって思えること……」
くすっと小悪魔の笑みを浮かべた藍李さんが、俺の耳元に唇を近づけてその言葉の続きを囁く。
「私のカラダで、たーくさんしていいよ」
「ごくりっ!」
それは小悪魔の誘惑で。
それは甘えさせ上手なカノジョの優しさで。
それは、恋人の欲望を爆発させるには十分過ぎた一言で。
生唾を呑み込んだと同時――
「きゃっ。――いいねその目つき。こっちまで興奮してくる。さ、おいでしゅうくん」
「はぁ、はぁ」
「この
「っ! ……ご期待通り、むちゃくちゃにしてあげるよ」
「あはぁ。今夜はケダモノしゅうくんだね。さいこぉだ」
カノジョと一緒に、愛欲まみれの
ベッドに押し倒した、黒ビキニが最高に似合う女の甘い甘い誘惑に、俺は成す術なく屈して、彼女のご要望に通りに飢えたケダモノのように彼女を襲うのだった。
「~~~~っ! ……えへへ。今日もたっぷりしゅうくんにマーキングされちゃうなぁ」
「……このヤンデレめ」
「お互い様だよ。変態くん」
やっぱり俺はまだ藍李さんの
『あぁ。もっと藍李さんに弄ばれたい』
俺はずっと、彼女の虜のままで――。
【あとがき】
藍李さんと結婚できたらどんなに幸せなんだろうか。あ、想像したら途端に侘しくなってきた。。。嫁くれぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ。
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