第165話 緋奈藍李は求める
一日ゆっくり休もうと思ったのは身体をしっかり休める為。
身体に蓄積された疲労を抜き、体調を万全に整え、元気を維持する。
美味しい物を食べてお腹を満たして、温かいお風呂に浸かり、心をゆっくりと休ませるのは勿論理由があるからだ。
その理由は何かって?
それは勿論――
「はっ、はっ……しゅうくん。ごめん。身体の疼き、抑えられない」
「俺も。藍李さんに触れたくて仕方がなかった」
お互いに五日間、溜まりに貯まった性欲を解き放つためだ。
一日充実した休息を過ごして現在は夜。十分に体力と栄気を回復させた俺と藍李さんは、帰省中に約束した通りお互いにご褒美タイムを満喫していた。
「んんんぅ……ぷはっ。……やっぱり、我慢は身体によくないね。早くしゅうくんに犯されたくて頭がどうにかなりそうだよ」
「同感です。久しぶりの藍李さんのカラダ。触る度に俺のカラダが熱くなってく」
隙間なくぴったりと密着する肌と肌。一つに交わるのではないかと錯覚を覚えるほどに彼女の柔らかな肢体を自分のカラダに密着させると、心臓は一際大きく弾み、胸の奥底から沸々とカノジョを貪りたいという欲が溢れ出してくる。
「しゅうくん。キスして」
「言われなくとも」
「ただのキスじゃないよ。すご――」
「すごくエッチなキスをご所望なんでしょ?」
「……へへ。はい。蕩けるようなキスをして欲しいです」
「藍李さんがして欲しいなら、なんでもしてあげるよ」
見つめ合う時間が長いほど理性が効かなくなっていく。全身が焦燥感に駆られ、抑えきれない欲情は激しい口づけとなって発散――否、暴走する。
唇と唇が重なって、数秒は互いの口唇の柔らかさを堪能するように押し付け合う。わずかに開いた口唇から彼女の思考をすぐに読み取って、ゆっくりと大蛇が這うように舌を相手の咥内に侵入させていく。
熱い吐息の中に自分の舌が入り込んでいく感覚に胸を弾ませる間にもカノジョの方から待ちきれないとでも言うように舌がうねり出して、間もなく咥内で互いの舌が接触。なめらかな感触とともに絡み合った。
ちゅぱ、れろぉ、と
『藍李さん。求めてくれてる。嬉しい』
『しゅうくんの舌気持ちいぃ。ダメだ。自分を制御できない』
「「――んんぅん」」
相手を貪るようなキスも久しぶりで、お互いに陶然とした表情を象ってこの濃密な一時を味わい尽くす。
「ふへっ。しゅうくんの。見なくても分かるくらいガチガチだぁ」
「そりゃ五日もすっきりしてませんからね。相当貯蓄されてますよ」
「あはぁ。それを聴いただけで胸がぞくぞくするよ」
見つめ合ってキスをしたまま、藍李さんは太ももを器用に使って俺の息子の状態をチェックしてきた。厳正なる審議の結果カノジョは顔が歪むほどの淫靡な笑みを浮かべて、今にも堪能したそうに熱い吐息をこぼした。
「それじゃあ今からそれを私がぜーんぶ空っぽにしてあげる」
「全部ぶちまけていいの?」
「――うん。どうせ今夜はお互い満足するまで止まる気ないでしょ?」
「……何回戦するつもりですか?」
「何回戦でも。お互いに満たされるまで、限界振り切るくらい愛し合お?」
「そんなこと言われると、本当に遠慮できなくなるなぁ」
「ふふ。遠慮しなくていいーの。このカラダはしゅうくんを気持ちよくするためにあるんだから」
「――っ! ……男を興奮させる天才ですね、藍李さんは」
「くすっ。しゅうくんがちょろいだけだよ」
一瞬。藍李さんに無茶をさせてしまわないか逡巡が生まれるも、しかし黒瞳に映した彼女の淫らな表情によって一瞬で払拭される。
胸にあったわずかな迷いもなくなれば、あとはもう相手がくれる愛情にどっぷり浸るだけだ。
「しゅうくん。今日からまたいっぱいキスマーク付けられるよ」
「付けて欲しいの?」
「うん。私はしゅうくんのものだって証明、この身体の至る所に刻み付けて欲しい」
「それじゃあ太ももに付けちゃお……あれ? そういえば藍李さん、姉ちゃんたちとプール行く約束してませんでしたっけ?」
「あー。そういえばしてた。でも、すぐには行かないし大丈夫だよ。ね。だから私の身体にキスして。いっぱい大好きなカレシの、緋奈藍李は俺の物だって証明残して?」
「――っ! この甘え上手め」
「しゅうくんほどじゃないよ」
「いや藍李さんも大概ですよ。そうやっていつも俺を誘惑して狂わせる」
誘ってくる魅惑の花からは逃げられない。もとより逃げるつもりもないけど。
彼女がくれる甘い蜜は、余すことなく全部体内に摂取する。
満たしても満たしきれない器に、甘い蜜を好きなだけ注ごう。
「ちゅっ」
「んっ……あはっ。しゅうくんの舌くすぐったい」
「いつかのお返しですよ」
それは帰省初日だったか。真織に嫉妬した藍李さんが俺をトイレに監禁して、キスと家に帰ったらお互いにご褒美をあげようと約束した日。
あの時藍李さんに揶揄われた意趣返しを、ここでたっぷりとお見舞いしてやる。
「――んっ」
「もう声我慢しなくていいんだよ。だから聞かせて、藍李の可愛い声」
「それ、ずるいよ……っ!」
上げそうになる嬌声を反射的に腕を使って抑えた藍李さんに、俺はニッと悪戯小僧のような笑みを浮かべると、眼前にある豊満なメロン、そこに
「ひゃん!」
我慢なんてさせない。
声を上げずにはいられないほどに感じさせてやる。
「これ、ぜってぇ三回戦だけじゃ満足できないな」
「……はぁ、はぁ。じゃあ、四回戦でも五回戦でも、お互いが精魂尽きるまでいっぱい突き合おう。しゅうくんの愛情。全部受け止めて、お腹いっぱいになるまで堪能させて」
「言質取ったからね。俺、手加減しないから」
「しないで。好きなだけ私を味わって。ううん。好きなだけ、私を犯して」
「――ふっ。それじゃあ、お言葉に甘えて」
「んんぁ」
「とめらいからね?」
お互いに相手の頬を手で押さえて、そのままキスをする。ねっとりと絡みつくような、一呼吸する間もないほどに濃密なキスを交わす。
「枷が外れたキス。やば……頭おかしくなる」
「俺はもうむちゃくちゃですよ。……ね。藍李さんの唾液、もっとちょうだい」
「私も、しゅうくんの舌もっと味わいたい」
お互い。枷が外れて自分の欲望に忠実になっている。それに相手が応えるせいで、熱気は増々上がるばかり。
歯止めが効かない――けれど、そうなることは最初から分かってたから。
「……こりゃ、明日もまた家でのんびり過ごすことになりそうですね」
「あはは。そうだね。しばらくはこんな時間の繰り返しになりそうだね」
五日間溜まった性欲をたった一夜で解消できるはずもなく、お互いに数日掛けてじっくり抜いていこうと微笑みを交わし合う。
とりあえず今夜は、この滾る欲望をお互いのカラダを使って鎮めよう。
「しゅうくん」
「なんですか?」
「今日は満たし合おうね」
「――うん。ココロもカラダも、五日溜まった欲求全部ぶつけ合おう」
欲求不満になっていたのはお互い様。それ故に今夜の俺は珍しく、自分から積極的に藍李さんを求めていく。
その想いを受け取った藍李さんは紺碧の双眸を大きく見開いたあと、嫣然とした微笑みを象って――
「本当にしゅうくんは最高に素敵なカレシだよ――どうぞ好きなだけ召し上がれ」
「ふはっ。それじゃあ、有難くいただきます」
ぺろりと舌をなめずったカノジョの期待に応えるように、俺は凶悪な笑みを浮かべたのだった。
そしておよそ五日ぶりのカノジョの味は、極上だったということはもはや言うまでもなかった。
【あとがき】
久しぶりのイチャイチャなのでお互い暴走気味です。この先はいつも通り掛けないけど、今回二人のイチャイチャは明け方まで続いたみたいです。藍李さん大満足だったそうですよ。
あっまいしえっろ。というか藍李さんが誘い方上手すぎて男だったらもれなく乗っかっちゃうやろこんなん。おいしゅう。そこ代われ(涙)
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