第128・5話 本音が知りたくて
――しゅうくんはまだ私に全部曝け出してくれてない。
それは会話の中に、日々の接し方の中に、この関係の中に影のように落ちていた。
付き合ってから
端的に言えば、しゅうくんはまだ私に遠慮しているのだ。いや、私を
それはこれまでの、しゅうくんと付き合う前までの私たちの関係が影響しているのが大きいと思う。
付き合う前までの私たちは真雪を挟んだただの赤の他人で、距離感というものをいまいち掴めていなかった。そして、その頃のしゅうくんが私に抱いていたのは、憧憬や尊敬といった、恋愛感情よりも崇拝意識が強い感情だった。
そしてそれは、恋人になった今でも尾を引いている。
しゅうくんが私の意見や意思を常に尊重してくれるのは、前述した感情が影響しているのだと思う。だから、しゅうくんは基本的に私の我儘な全部聞いてくれるし、従順に実行してくれている。
それはカノジョとしては勿論嬉しいけど、しかしそれだけでは本当の恋人とはいえない――私は、もっとしゅうくんの本音を引き出したいのだ。
『……私がしたいことじゃない』
私は、しゅうくんが私でしたいことが知りたい。
『……私の傍にいるだけで満足しないで』
しゅうくんの傍にいていい女でいさせて。
『……私の欲望じゃない』
しゅうくんの欲望を教えてほしい。
『……我慢なんかしなくていい」
私はしゅうくんの恋人で、カノジョで、婚約者だから、キミが私でしたいことを全部叶えてあげられる。
『……私はしゅうくんの本音が欲しい』
だから憧憬と尊敬を捨てろと言ってるわけじゃない――全部を抱いていくれたままでいい。何かを変える必要なんてない。変えないまま、もっと、もっと私に縋ってきてほしい。
私はそれに応えてあげられるから。
しゅうくんが私に全力で応えてくれるように。私だって、全力でしゅうくんの想いに応えてあげたい。
相手のご機嫌を窺うような恋なんてバカバカしい。本音を曝け出し合っていけるような関係こそ、私が真に望むもので、一生を誓う為に必要な
キミの枷は私が全部外してあげる。
だからね、しゅうくん。
「――あはっ。そうだよ。しゅうくんの『本音』、全部私に曝け出して、そして見せて。私に、しゅうくん全部受け止めさせて」
「……この性悪女め」
キミが私を飢えた獣のような目で押し倒してくれた瞬間。この心臓は歓喜するように一際強く弾んだ。
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