疑念編 第六話

「龍刃ちゃんー!カレーが出来たよー!」


そう言って二人分のカレーをテーブルに置く葉羽。


「あぁ、ありがとな葉羽。美味しそうだ」


「うふふっ♪でしょ?」


「…」


俺は最初にあのニュースを見てから、どこかで胸騒ぎがしていた。


「どうしたの龍刃ちゃん?急に暗い顔して…」


「いいや、なんでもないよ。それより食べよう」


「う、うん…」


俺は思考をやめることにした。考えても仕方がない。


「「いただきます」」



〜〜〜〜〜〜〜〜



俺達は他愛のない話をしながら食べ終わった。俺は食べ終わった食器を片付けようとした。


「待って龍刃ちゃん」


「なんだよ葉羽?」


「もしかして私に隠してることあるでしょ…?」


葉羽は俺の目を真っ直ぐにみてそう言ってきた。全く、こいつは昔から妙な所で感が鋭いんだよなぁ…


「ほんとに何もないって!」


「嘘。龍刃ちゃんと何年一緒にいたと思ってるの。誰にも言わないから教えて頂戴…?」


「はぁ…わかったよ。言うよ…」


「うん、聞かせて?」


俺は深呼吸をすると葉羽に言った


「最近起こってる愛野市の連続失踪事件は知ってるか?」


「何処でも聞くからしってるよ。確か次々と人が失踪してるんだよね。なんでも、原因不明なんだとか。」


「そうだ。その事で俺は胸騒ぎがしてるんだ。詳しい事はわからないが、悪い事が起こる予兆なのは確かだと思う。」


「龍刃ちゃんの胸騒ぎ、か…でも、きっとそんなの当たらないよ!大丈夫だよ!」


「大丈夫なんかじゃないっ!!」


ドン!


「ひゃっ!」


「この胸騒ぎのせいで俺の父親と友達は…!」


今から10年前


当時、7歳の頃の龍刃は友達のりょう君と遊ぶ為に公園へと行っていた。


「ふんふ〜ん♪公園に行ったらりょう君もういるかn...!?」


何この胸のもやもやは…!き、気持ち悪いよぉ…!


龍刃は胸を抑え、うずくまった。だが、次の瞬間。


「誰か助けてぇ!!!」


「!?あれはりょう君の声だ!早く行かないと…!」


そして、龍刃が公園へと行った…その時、龍刃は衝撃の光景を目の当たりにする。


「い、いだいよぉ………うぅ………はぁ…はぁ…………だれか…………」


そこには血塗れのりょう君。そして刃物を持ってりょう君の腹部を刺す犯人。


「い、いやぁーーー!!!!」ダッ


龍刃は犯人が怖くなり必死に逃げた。どこまでもどこまでも。


後日…学校


「先日、りょう君が何者かに殺され、遺体で発見されました…これはとっても悲しい事です…一刻も早く犯人が捕まることを願っております…」


体育館の上で教師は何か言っているけど、僕には何も聞こえなかった。空虚な気持ちで家へと帰っていた。


「りょう君…」


「う、うわぁぁぁぁぁぁぁん!!!」


ものすごく悲しかった。僕の唯一の友達だったのに。いつも遊んでくれて楽しかったのに…なんで……


そして1年後。龍刃が8歳の時。


龍刃の家


「お母さん!お父さん!準備出来たー!」


「うふふっ♪それじゃあ手を繋いで行きましょうか龍刃」


「お父さんも忘れてもらっちゃあ困るぞお母さん」


「わかってるわよあなた」ぎゅっ


そうして三人で手を繋ぎながら、すぐ近くの遊園地へと向かった。


「わぁ…!あそこにメリーゴーランドやジェットコースターもあるよ!一緒に乗ろうよお父さん、お母さん!」キャッキャッ


「もちろんよ龍刃。なってたって、今日はあなたの誕生日ですもの。好きにするといいわ〜」


「お父さんも行くぞ〜!」


そして三人は日が暮れるまで遊んで遊んで、遊びまくった。


夕方


「ふぅ、今日は沢山遊んで楽しかったな。なぁ、龍刃?」


「うん!お父さん!」


また心がもやもやしてきた………あの時と同じ…………嫌な感じがする………


「………」


「急に黙ってどうしたんだ龍刃?」


「ううん!なんでもないよお父さん!」


「ならいいんだが…」


「それじゃあ、帰りましょうか〜」


皆で歩道を歩いていると……次の瞬間


プッーーー!!!


大型トラックが速度を無視してこちらに向かってきた!龍刃とお母さんは怖くて動き出せなかった…その時。


「龍刃、お母さん危ないっ!」ドッ!


お父さんは咄嗟にお母さんと龍刃を強く押した…だが、お父さんはトラックから避けられなくなってしまった…そして…


ガッシャーーーーーンッッッッ!!!!


「ぁ…ぇ……?嘘でしょおとうさん………」


お父さんはトラックに轢かれて原型を留めていなかった。


「うわあああああああああっっっっっ!!!!」


回想終了


「はぁ…はぁ………!!」


「汗そんなに垂らして大丈夫龍刃ちゃん!?今、麦茶持ってくるからね!?」ドタバタ


何分後


「ほら、持ってきたよ龍刃ちゃん!」コトッ


「あ、ありがとうな葉羽…」ゴクゴク


「…なんとか落ち着いたよ」


「ほんとによかった〜…」


葉羽は安心してため息をつく


「で、さっきの話だが、俺の胸騒ぎは経験上絶対に良くないことが起こる。それも、死に関することだ」


「うん…龍刃ちゃんの話を信じるよ…」


「よかった。じゃあ葉羽、お前はもう俺に関わるな。これは葉羽を守るためでもある」


「な、なんで急にそんな冷たいこと言うの龍刃ちゃん………そんなの納得できないよ………ぐすっ………」


くっ…!葉羽に泣かれると弱いっ…!でも、駄目だ!ここで突き放さないと葉羽が死んでしまうかもしれないっ!そんなのは絶対に嫌だ!もうあんな思いをしたくないんだ!


そう俺は決心した時…


ガチャ


「二人で秘密話なんて水くさいな〜!」


「織音ちゃん…!」


「お前は織音!なんで俺の家に入ってきてるんだ!」


「そりゃあ家の鍵空いてたからねー…?それよりもさっきの話どういうことなの龍刃?葉羽に関わるなって…」


「それはかくかくしかじかで…」


龍刃は事の経緯を織音に説明した。


「ふんふん、まぁ大体の事情はわかったよ。僕としては龍刃の感は当たるし、それで被害が出ないように周りの人間を遠ざけるってのもわかるんだけど…」


「だろ!?」


「でも、だからといってこの方法は良くないんじゃないかな」


「そうだよ龍刃ちゃん!離れるなんておかしいよ!それならいっそ、一緒に居たほうが安全だよ!」


「いいねぇそれ!」


「俺はぜってーやらねぇからな!俺のせいでお前らを傷つけたくない!」


「その考えが間違ってるよ龍刃。僕達は仲間でしょ?なら、何をする時も一緒だ。龍刃が言う感も僕等が回避すればいいだけさっ!」


「その通りだよ織音ちゃん!」


「はぁ…わかった!わかったよ……できるだけお前らと一緒にいることにする」


龍刃は観念したようにそういう。


「嬉しいよ龍刃ちゃん!これからもずっと一緒だよ龍刃ちゃん!」だきっ


「むっ、むぐぅ!だ、だから抱きつくなって…!」


「じゃあ僕も混ぜてもらおっかなー?♪」だきっ


「!?!?」


正面に葉羽、後ろに織音に抱きつかれて何なんだこの状況は!?二人の胸が当たって色々とやばいぞっ!


「はーなーれーろー!」ドカッ


「「ひゃっ!」」


よし、なんとか二人をどかしたぞ。


「もう、龍刃ったら…」


「…………」


「わりぃわりぃ…って、もうこんな時間かー!ジョギングに行ってこないとー!」


その場の気まずい雰囲気に耐えかねた俺は、咄嗟にありもしない嘘の言い訳を言って外を出ていった。

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