平和編 第二話

1F 階段前


「はぁ…はぁ…」


咄嗟に逃げてしまった…まぁ、今日の放課後に告白の件終わるからいいか。それより、今は保健室に行かないとな。具合全く悪くないけど。行かなきゃサボったって思われるし。


「よし、保健室に着いたぞ。それじゃあ失礼しま〜す」


俺は保健室の扉をゆっくり開いた。


「あら、いらっしゃい。」


「うっす。平井先生。」


この保健室の先生は平井夏子先生だ。たまにお世話になっている。


「今日はどうしたのかしら竜ヶ峰君?」


「実は体調が悪くて…見てもらっていいですか?」


「もちろんいいわよ。ほら、私の前の椅子に座って頂戴。」


「わかりました…」


「それじゃあ、竜ヶ峰君の心臓の音を聞かせてもらうわね。はい、服を上げて」


「…どうですか?」


「いたって普通よ」


だよねー!だって俺嘘付いて保健室来てるもん!


「では、この体温計で熱を測るわね」


「あっ、それぐらい自分で出来ますよ。」


「じゃあどうぞ」スッ


「ありがとうございます」


俺は平井先生から貰った体温計を、自分の脇に入れた。そして…


3分後…


ピピピピッ!


「38.5度…」


おいおい、まじかよ!全然自分で気付かなかったぞ!


「どうやら、竜ヶ峰君は熱があるみたいね。そこのベッドで横になるといいわ。」


先生はベッドまで案内してくれた。


「ありがとうございます平井先生…」


「いいのよ、これが私の仕事だからね〜。じゃ、私はパソコンでやることあるから、何かあったら迷わず私に言うのよ?」


「了解です…」


俺はベッドに横になった。周りはカーテンがはられており、外からも中からも見えないようになっている。


そして…


キーンコーンカーンコーン!


んん…今は何時だ…?随分と眠っていた気がする…俺は自分の腕時計を確認した。


時刻16:00


やっべぇ!もうこんな時間か!?急いで屋上に行かないとまずいっ!


「平井先生!失礼します!」


「はーい、気をつけてねー」フリフリ


俺はひたすら廊下を走っていた。愛菜って子をまたせてないといいが…


「あれ?龍刃ちゃんだ。体調は大丈夫?って、廊下走ったら駄目だよー!」


「ガッツリ休んだから大丈夫だ!(仮病)」ダッ


そして屋上


ガチャ


「はぁ…はぁ…」


1Fの保健室から4Fの屋上まで一気に駆け上がったから酸欠気味でやばい…てか、今日の俺ずっと走ってね?


「待たせたな…愛菜」


「お待ちしておりました。竜ヶ峰さん」


俺は晴れやかな空の下で、愛菜の目をじっと見つめた。


「ラブレター見てくれたんですね。嬉しいです。竜ヶ峰さんっ!私を助けてくれたあの日からずっと好きでした!付き合って下さいっ!」


「あぁ、手紙見て真剣だってわかったよ。それで答えは…」


「はい…」


愛菜はこれから言われるであろう龍刃の告白の答えに、緊張して思わずつばを飲んだ


「ごめんっ!俺は君とは付き合えない!」


「そうですか…ぐすっ…でも、告白できてよかったです…ぐすっ…」


龍刃は泣き出す愛菜に慰めようとするが、今の自分にそんな資格はないと感じ堪える。


「あの…」


愛菜は涙を袖で拭きながらそう言った。


「なんだ?」


「付き合うのは駄目でも、友達からは駄目でしょうか?もしかしたら、私を知って好きになってもらえるかもしれませんし。」


「あぁ!それならもちろんいいぞ!よろしくな愛菜!」


「よろしくお願いしますっ!竜ヶ峰さん!」


二人は握手をした。一方、屋上の扉の向こうでは葉羽が聞き耳を立てていた


「龍刃ちゃんが心配で付けてみたら、まさか告白の現場を見てしまうなんて…声が全く聞こえないけど、龍刃ちゃんと握手してるし付き合ってるのかな…嫌だよ、私の龍刃ちゃんを取られたくないよ…」


葉羽は勘違いをしてしまっていた。


キーンコーンカーンコーン


最終下校の時間です。まだ残っている生徒の皆さんは速やかに帰宅して下さい。


時計を見てみると時刻は16:30。冬の季節である今は暗くなるのが早い。よって、先生達は生徒達を早く帰らせるのだ


「うおっ!早く帰らないと鍵を閉められちまうっ!」


「うふふっ、それでしたら竜ヶ峰さん一緒に帰りませんか?友達になった記念に!」


「あぁ!いいぞ!それじゃあ行くか!」


二人は屋上の扉へと近づく


「不味い不味いよ…!二人が戻ってくる!早く退散しなきゃ…!」ダッ


葉羽は二人に見つかる前に逃げ出した。


登下校中


「そういえば、愛菜の好きな物って何だ?」


「私は読書をするのが好きですよ!ラノベとかばっかり見てますね!」


「おぉ!ラノベか、いいじゃん!俺もラノベ見るんだよねー!」


ワイワイ


「むむむっ…あの二人楽しそう…いつもなら私と龍刃ちゃんで一緒に帰るのに…」


葉羽は二人の様子を電柱の後ろから眺めていた。はたから見たら不審者だ。


「あれっ、そこにいるのは葉羽っ?こんな所で何してんの?」


織音は葉羽の後ろから声をかけてきた


「ひゃあっ!もうっ、いきなり驚かさないでよ織音!」


「ん?」


後ろからなんか声が聞こえるような…?


疑問に思った龍刃は後ろを振り返ろうとした


「不味い!龍刃ちゃんにバレちゃう!織音、こっち!」グイッ


「むっ!むがっ!!」


葉羽は織音を強引に電柱の後ろへと持っていった。


「あれ?」


「どうしたんですか竜ヶ峰さん」


「いや、さっき後ろで声が聞こえた気がしたんだが、どうやら気のせいだったみたいだ。」


「ちょっと!龍刃ちゃんにバレたらどうするつもりだったの!不審者だって思われちゃうじゃない!」こそこそ


「いやいや、葉羽のやってることは十分不審者だよ…所でなんで龍刃をつけてるのさ?」


「実は…」


かくかくしかじか


「えっー!?龍刃って今日からあの子と付き合ってんのー!?」


葉羽から衝撃の事実(勘違い)を聞いた織音は戸惑いを隠せない。


「うん、そうみたい。だから、私は龍刃ちゃんを取られないためにこうして付けてきてるの。」


「なるほどねぇ」


「所で織音。龍刃ちゃんの相手の子の名前知らない?」


「えっーと、確か何処かで聞いたことあるんだけどなー…」


「お願いだから思い出してっ!」ゆさゆさ


「そんなに揺らさないでよお。あっ、思い出した!あの子の名前は篠原愛菜ちゃんって子だよ!私達よりか一年下の…」


「教えてくれてありがとう織音!私、用事を思い出したから帰るねっ!」ダッ


葉羽はそう言い、すぐに去っていった。


「あっ、行っちゃった…」


一人、取り残された織音


「ふ〜ん、なら僕も動かないとねー?」すたすた


織音は意味深なセリフを吐いた後、自身の家へと帰っていった。

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