Dodgy girl
セイジがセラと出会って二週間が過ぎた。
最初の頃は淡白で素っ気ない彼女であったが、腹が空いているだろうという親切心から、大量のカニカマをセイジが用意するようになってからは幾分か、その冷たい態度も和らいでいる。
今日も大してやることの無いセイジは、あの橋の下で独り海を眺めるセラの元にやってきていた。ちなみに、相も変わらず彼の仲間たちは音沙汰無しである。
そんな暇を極めるセイジの姿を見るなり、気分を害されたと言わんばかりに眉を顰めるセラであったが、彼が右手にぶら下げるビニール袋を見るや否や、ぱあっと笑顔を浮かべたた。
「これ、本当にホンモノの蟹じゃないのね。私びっくり」
「お前マジでどこの出身だよ。今日日カニカマ食ったことないやつなんて初めて見たわ」
心底驚いたようにカニカマを頬張るセラに、セイジは野良猫に餌付けしているようだと思いながらも突っ込んだ。
この自称人魚は、自分の生い立ちについて頑なに喋ろうとしない。
セイジは彼女が本物の人魚である可能性は無いに等しいと思っているので、「そういう設定はいいから」と出身地を聞こうとしていた。
しかし、毎度の如く”海の中にある”と返されては返答に困るセイジもそろそろ面倒になってきて、ここ二、三日は彼女の言うことにあえて乗っていた。あまりそういう界隈に詳しくないが、下手に突っ込んで騒がれるのも嫌だったのもある。
なぜなら、暇を極める今のセイジにとって推定同年代のセラで暇を潰せないのはまさに死活問題である。タバコ吸って酒飲むだけの自堕落な生活は不健康が過ぎるだろう。つまるところセイジは同年代との会話に飢えていた。
友人とは言えないものの、顔を合わせれば話すクラスメイトくらいには二人の距離は縮まっている。
高飛車なセラは決してそれを認めようとはしないだろうが、渡された食べ物をすぐに口に放り込む程度の信用は抱いているのが何よりの証左。
信用というほど大層なものでもないが、それでも出会って最初の頃のような強い警戒心は段々と薄れていた。
「ねぇ。そういえば今更だけど、あんた名前なんて言うの」
「マジで今更だな」
一通りカニカマを食べて満足したのか、川の水で手を洗っていたセラがそんなことを聞いてきた。出会って二週間ちょい。買ってきたカニカマはダンボール二箱分に相当するが、今日の分であっという間に消費されている。
これだけやってあげてるのに名前も覚えていないのかと彼は呆れるも、そういえば名前を知っているのはこちらだけだったと思い返して、セイジはタバコを吸いながら適当に名乗る。
「志水セイジ」
「セイジ……セイジね。覚えた」
名前を復唱したセラは、顔と名前を一致させるようにセイジを見る。
「いい名前じゃない」
「……そうかぁ?」
誠実の誠に、志士の士と書く彼の名前。込められた意味を知っているセイジは、今の自分が客観的に見ても主観的に見てもそれに不似合であることを分かっていた。だからいい名前とセラに褒められても、少し間を置いて相槌を打つしかない。
そんな大層な人間じゃないんだが、とは言わずにペットボトルを投げてよこす。セラは慌てて落とさないようにキャッチした。
あれは何の変哲もないただの緑茶だ。先日彼が飲んでいたのを何故か彼女は興味深そうに見ていたので、分けてやったら一瞬で飲み干された。また持ってきて欲しいと頼まれたものだから、今日も家から持って来ていたのだ。
「ありがとー」
「ん」
餌付けというとあれだが、セイジが飯や飲み物を与えている時だけはツンケンとしておらず、セラは見た目相応の態度をとる。
本当に不思議なやつだ。
カニカマを知らないし、ペットボトルの蓋のあけ方も分からない。スマホを見て「なんなのその板」なんて言うヤツ今どき老人でも居ないだろうに、彼女は目を輝かせてスマホを触っていた。
生まれてからずっと海の中に住んでいた人魚であると彼女は言い張るが、それもあながち間違いでもないのかもしれないと最近は思い始めている。
もしもアレらが全て演技だったならば、セイジは目の前のコスプレイヤーをさっさと芸能事務所に応募させているに違いない。
それくらい彼女の反応はセイジの目から見ても自然的で、一切取り繕っていなかった。
「ふぅ……地上の飲み物は美味しいわね」
──というか、真顔でこんな事を宣うような女が演技しているとは思いたくない。そう思ってしまうと傍から見てて共感性羞恥が刺激される。
もしも本当に人魚であるなら兎も角、セラが何かしらの設定に則ってコスプレをしていたならばセイジは笑い死ぬ自信があった。
「なぁ、そろそろいい加減教えてくれよ。お前一体誰から追われてんだ?警察か?」
そんなセラについて知っていることといえば、年齢はセイジと同じ18歳であること。(自称)人魚であること。海の中に住んでいたこと。そして何者かに追われているということだ。
ただのコスプレならいい。爆笑しながら死ぬほどからかってやろう。問題は最後の”何者かに追われている”という部分──人魚云々は抜きにして──は多少なりとも仲良くなった今のセイジにとっては流石に看過できなかった。
彼女への純粋な善意というよりも、正直に言ってしまえば心配が四割、自分がトラブルに巻き込まれる可能性への面倒くささが六割だ。
警察くらいなら逃げるのは慣れているのでどうとでもなるが、彼女の親などが関わってくるなら話は別である。セイジは他所の家庭のあれこれに突っ込むほど直情型な人間では無い。仲間の親子喧嘩を遠目で眺めて笑っているようなクズである。
いくら仲良くなったとはいえ、セラは友人と呼べるほどでも無いし、ましてや片方が一目惚れしたとかロマンチックな関係でもない。
つまるところ彼女の話が一部分でも本当のことだとして、その際に自分が巻き込まれるかどうかをセイジは気にしていた。
しかし、そんな思いを他所にセラは「またその話?」とため息をついた。
「別にあんたに関係ないじゃないの。あんたは黙って私に美味しいこのカニモドキを献上してるだけで良いわけ。その代わりにあんたの暇つぶしに付き合ってあげてるんだからお相子よ」
「んな事言ったって気になるもんは気になるだろうが。言っとくが俺からしたらまだお前って身元不明の不審者なんだからな」
もしもあの日に仲間たちが警察に捕まっていなかった状態でセイジが彼女と出会っていたら、さっさと警察を呼んで追い払っていた。ただ単にあまりにも退屈すぎて死にそうだったが故に、あからさまな不審者であっても話しかけることが出来たのだ。推定同年代というのもあっただろうが。
しかし、セラは変わらぬ顔で「それでもいやなものはいや」と答える。気分を害した様子はなかったが、先程までよりかはトーンが下がっていた。
「話したところでどうにかなるようなものじゃない。お腹は膨らまないし、減りもしない事なんてする必要ある?」
「腹は満たされんけど俺の好奇心が満たされるから言え」
「はいはい……」
二週間も毎日、朝から夜まで会っていれば、セイジもセラもお互いの為人はある程度理解出来る。
悪いやつじゃないが、良いやつとも言いきれない。それは二人が共通して相手に抱いている認識であったが、奇妙なことにかなりウマが合う。
セイジの周りにいる仲のいい女性らは、類は友を呼ぶという言葉の通り不良ばかりだ。
その中の何人かとは交際経験もあるが、その場のノリでそうなっただけで本気になったことは無かった。学校のクラスメイトに関しては自分たちが問題児扱いされていることもあって、一部の気の合う奴を除けば殆ど白い目で見られている。
つまるところ何が言いたいかといえば、セイジにまともな関係性を築ける異性の友人というのは今まで片手で数える程しないないということだ。
そんなセイジにとって、セラは対等に何のしがらみもなく話せる初めての異性といってもよかった。ガサツでもないし、ハイブランドのアクセサリーをたかってくるわけでもない。大麻やら売春やら受け子をやって捕まったおつむの弱い元カノらとは違い、セラはそこら辺しっかりしている。
常識知らずな不審者ではあるが、そういう界隈に染まっていないことはひと目で分かった。
その上、なんだかんだ言いつつも暇つぶしに付き合ってくれるセラは、彼にとって貴重すぎる相手である。
もう少しこんな時間が続けば、友人と呼んでも違和感は持たないであろうくらいにはセイジは彼女に好感を抱いていた。
そこからロマンスな関係に発展するかと言われれば、流石に首を傾げざるを得ないが。
「ねえ、何でそんなに私のこと知りたいの? 自分で言うのもなんだけど、かなり怪しい女だと思うのだけれど」
「そりゃ怪しいけど面白そうやん。見た感じイイトコのお嬢様だろ? そんな奴がなんでこんな田舎町に居るのか気になるに決まっとる」
「要するにただの暇つぶしなのね」
「うん」
親切心の欠けらも無い、あえて悪くいえば野次馬根性の滲み出るセイジの好奇心にセラは呆れたようだったが、同時に軽く笑った。
「……じゃあ、私のお願い聞いてくれるなら話してあげてもいいわよ。なんでここに居るのか、誰に追われてるのかも」
「……いきなりどした。別に無理に聞いてるつもりなかったんだが」
根掘り葉掘り聞くのも性にあわない。
その場の気分そのままに詮索したが、彼女が本当に嫌だというのならばそれ以上聞くつもりセイジになかった。当然気になるは気になるが、せっかく出来た新しい友人候補をそれで無くすのは惜しい。
しかし、そんなセイジの僅かな戸惑いをぶった斬るように、特に気にした素振りもなくセラはあっけらかんと答えた。
「ただの気まぐれ」
「さいで」
ただの暇つぶしでセラと関わり始めた彼への意趣返しとも取れる言葉に、セイジはそれ以上の返事は思いつかなかった。
まあ本人が良いというならそれでいいか、と彼は目線で続きを催促する。
「お願いっていっても、そんな難しいことじゃないんだけど──」
****
──時を同じくして、日本より遙か西に位置する欧州の島国イギリス。
イングランドはカンブリア州において、上品なスーツに身を包んだ男たちが密かに会合を開いていた。男たちはこの会合を召集した同志の到着を待ちながら、世間話に花を咲かせている。
ここはバロー=イン=ファーネス。
同州の中心地区であり、アイルランド海に面した港湾と造船業が盛んなエリアだ。王立海軍初の潜水艦”ホランド1”や、日露戦争で連合艦隊の旗艦を務めた帝国海軍の戦艦”三笠”もここで建造されており、かの救国の英雄東郷平八郎も表敬訪問するなど、実は日本とも歴史的な縁がある場所だ。
そんなバローには造船所で働く男たちが挙って通いつめる古くから人気のパブがあるのだが、真っ昼間だというのに酒飲んで騒いでいる客の足元──正確にいえば地下には、一部の人間しか利用できないフロアが存在していた。
オーナーほか、古株の従業員しかそのフロアは知らない。何故かといえば機密を確保するためだ。完全防音の壁に、盗聴を防止するために中央のラウンドテーブルと椅子を除けば装飾の類は非常に簡素で、部屋の造りも単純である。
パッと見、明らかに高級品と分かるそのテーブルらを保管する倉庫にも見えなくない。故に、創業から百年は経つ今となっても秘密の会合によく利用される特殊な部屋として機能している。
20人程度なら余裕で入れる広さも、他所には聞かれたくない話をしたがる怪しい集団にとっては持ってこいだった。
「──デニス、久しぶりじゃないか。六年前の誕生日パーティーで会った以来か?」
そんな部屋にオーナーの案内の元足を踏み入れたのはウォーレス・カーター。親愛なる同志からの召集を受けて数年ぶりに祖国の地を踏んだその男は、集まった者たちの中に旧知の友人の顔が見えて嬉しそうに話しかけた。
長らく会っていなかった友の姿が見えて、彼に話しかけられたデニス・リスゴーも時代錯誤なカイゼル髭を揺らしながら破顔する。
「おお! ウォーレス、我が無二の友よ。壮健で何よりだ。また一回り身体が大きくなったな」
三十代に差し掛かり、男として脂が乗り始める時期に入ったウォーレスとは対照的に、デニスはもう還暦を過ぎている。60歳の誕生日にいきなりカイゼル髭を整え始めた時には流石のウォーレスもたまげたが、今となってはもう見慣れた姿だ。時代錯誤も甚だしいというのに、イングランドきっての名家の出身であるからならなのか、デニスの厳つい顔によく似合っていた。
親子ほどの年の差があるものの、彼らの仲は至って対等だ。気兼ねなくハグを交わした二人は、親友との再会に心を弾ませる。
「君がベルリンに派遣されてからもう何年も経つな。熱心な働きぶりは私の耳にも届いているよ! 君なら心配は要らぬだろうが、任務が任務だからなあ。妻がよく君のことを気にしていた」
「ああ、そういえば夫人にも挨拶をしないと。忘れるところだった」
「む? ということは……」
「つい先日、ようやく任務が終わったんだ。本部から休暇を貰えることになったよ。流石に今回は疲れたなぁ」
はあ、と疲れたように息を吐いたウォーレスの肩を嬉しそうにデニスは叩いた。命の危険もある重要な任務を無事に終わらせて、五体満足で帰ってこれたのだ。友の活躍が嬉しくて仕方ないといったふうに、デニスは誇らしげに髭を弄る。
「そうかそうか、なら今日の会合が終わったあと私の家に来るといい。娘も妻も喜ぶだろう。君が飲みたがってたロマネ・コンティを開けようか」
「はは、そうさせてもらうよ。ずっと酒が飲めなかったせいで僕の肝臓がとても寂しそうだからね」
そう笑ったあと、ウォーレスは表情を変えた。挨拶は程々に、という彼の意図をその真剣な眼差しから感じ取ったデニスも自然な振る舞いで姿勢を正す。周りに目を配り、自分たちの話が聞かれる距離には誰も居ないことを確認してからウォーレスは口を開いた。
「……ところで、今回はどのような要件で召集されたのか君は知っているか?」
「いや? 同志が言うには『今世紀最大の
なにせ急だったからな、とデニスは付け加える。このような会合自体は定期的に行われているものだが、どちらかというと穏やかな近況報告のそれだ。今回のように緊急でメンバーが召集されるというのはそうあることではなかった。
かつて北アイルランド紛争が激化した際に一度だけ召集されたことがあったが、あれは幹部がIRAの爆弾テロに巻き込まれて死んだことの追悼の側面が強かった。しかし今回は逆に吉報というのだから、デニスたちがそれに困惑するのも無理は無い。今世紀最大と銘打つくらいには相応の報せなのだろうが、それにしてもこれまでとは違う会合の集まり方への戸惑いが多かった。
「おそらく同志が来てから伝えられるだろうが、一応僕から言っておく。今回のそれが吉報なのは間違いないが、同時にとんでもない厄介事でもある。場合によっちゃ抗争になるかもね。君も気を付けた方がいい」
「なに?」
眉を顰め、デニスはウォーレスを見た。
もう二十年来の付き合いだ。お互い半端な嘘や誤魔化しは通用しないことはわかりきっているが、それでもデニスは彼の事の詳細を知っているかのような口ぶりに怪訝な顔をした。長らくイギリスを離れてドイツに居たウォーレスが、なぜそんな事を知っているのかとデニスは彼に問う。
「ただの又聞きだよ。ほら、二週間ほど前から東アジア管区の連中が騒がしくなってるだろう?」
「ああ。なんでも、商品を輸送中に取り逃がす失態を現場が隠そうとしてバレたらしいが……それと今回の会合になんの関係があるんだ」
「ソレだよ。その輸送中に逃げた商品。ソレがこれまたとんでもない厄介事の種さ」
喩えるならそれは、公園で砂場遊びをしていたら数千億バレルの大油田を偶然発見したのと同じくらいの吉報。
そしてまた同時に、場合によってその大油田の一切合切を核爆弾で吹き飛ばしかねないような厄介事を招く凶報でもある。
そう語るウォーレスに、デニスは唸るように考え込んだ。
アジア方面で商品輸送に関して重大な失敗があり、その隠蔽行為が本部から出向していた調査員にバレて現在進行形で大目玉を食らっていることはデニスも知っているが、まさかそこまでの事案とは思いもよらなかった。
ただの馬鹿騒ぎと片付けるには早計だったか、とデニスは自身の判断を反省した。
「一体その商品ってのは何だ?」
若くして経験豊富なエリート街道を進むウォーレスが、そして自分たちの中心的な存在である”同志”が今世紀最大とまで銘打つほどの”商品”。
その正体が気になったデニスは逸る気持ちを抑えながら、冷静に訊ねる。ウォーレスは机の上に人数分置かれた紅茶をクイっと優雅に呑み、一息ついてからその口を開いた。
「世にも珍しい人魚姫さ」
「な──」
瞠目する。なんだそれは、と冷静さも優雅さもかなぐり捨てて聞き出しそうになる欲求を何とか抑え、デニスは沸騰する自身の感情を宥めるように紅茶を呑んだ。
なんてことをしてくれた!
デニスは、至高の機会を逃してしまったアジア支局の者たちに内心舌打ちをした。
ウォーレスの言うその”人魚姫”は、何らかの隠語や通称を指すものではない。読んで字のごとく人魚の姫。それをみすみす取り逃がすなど、あってはならない大失態。
もしも予定通りに移送が済んでいたならば、きっと今頃は世界各国の並み居る大富豪達から連絡がひっきりなしに来ていただろうに。
責任者は叱責どころでは済まされないだろう。一族郎党皆殺しにしても誰も文句は言うまい。
「聞くところによると、件の人魚姫は日本に居るらしい。おそらく今回の会合の目的はその件に関してじゃないかな──ほら、我らが同志のお出ましだ。後は彼の話を聞こうじゃないか、友よ」
「あぁ、そうだな……」
苛立ちで頭痛すら覚え始めたデニスだったが、ウォーレスが扉に視線を向けたので、雑念を振り払うかのようにこめかみを抑えた。
ふぅ、と息をついて二人は宛てがわれた席に着く。周りを見渡せば同じように、他の者たちも静かに腰を落としていた。
扉が開く──入ってきたのは、一見するとただのビジネスマンに見えるかもしれない何の変哲もない凡夫だ。
だがウォーレスもデニスも、その他の人間たちも彼を凡夫などと蔑むことは絶対にない。
18世紀より欧州の裏社会に君臨し、会員数約30万を誇り、今もなお各国の富豪名家との深い繋がりを有する秘密結社〈ブリテンズ・フォワード〉を束ねる稀代の傑物。
数多の未確認生物の売買を取り仕切り、それらを売りさばいて莫大な資産を築いた一族に生まれたその男は、自らに集まる男たちからの視線に照れくさそうにはにかみながら、この部屋で最も煌びやかな装飾が施された椅子に座った。
張り詰めた緊張感が走る。誰も彼もがその男の言葉を待ち、微動だにせず背筋を伸ばし続けた。彼は部屋に集まった面々の顔を一人一人見ると、満足気に頷く。
「さて、会合を始めましょうか──この度の日本における”人魚姫”の発見が、きっと我らにとっての福音であることを祈りながら」
欲望は動く。
動き出したらもう誰にも止められない。
物質主義に囚われた、血も涙も誠実さも欠けらも無い無頼の輩は密かに、しかし確実にかの少女へ手を伸ばしていた。
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