第28話 知っている物とは違う存在
翌朝、メイデン達は森へと捜索に向かった。
何かあった時用にメイデンから通信機を持たされていた僕は、ぼんやりと椅子に座りながらその通信機を眺めていた。
エイデンからドラゴンの話を聞いてから、そんなはずはないと思いながらも、心の奥には不安があった。
だからこそ、皆が無事に帰ってくる事をただ祈り続けた。
お昼を過ぎた頃、部屋で食事を終えた僕はふと窓の外が気になり、空を見上げた。
さっきまで綺麗な青空が見えていたのに、どこからともなくどんよりした雲が空を覆い始めていた。
その様子に妙に胸騒ぎがして、僕は慌てて通信機を取る。
「どうした!?」
通信機が繋がった瞬間、慌てた声でメイデンの声が聞こえた。
「い、いえ。何もないんですが、空が・・・空が急に曇ってきたので、少し不安になって・・・」
「曇ってきた?こっちは晴天だが・・・・?」
「え・・・・?」
僕が言葉を詰まらせた瞬間、大きな雷の音が近くで聞こえた。
その音に僕は振り返り窓の外を見て、体が固まった。
「聖っ!なんだ、今の音はっ!?」
「メ・・・メイ・・・メイデン・・さ・・・」
震える体が、言葉を上手く捻り出せなくしていた。
次第に体の震えは大きくなり、持っていた通信機を落としてしまう。
それでも僕は目の前にいるソレから目が離せずに身動きできずにいた。
その姿はまさしくドラゴンだった・・・・。
だが、自分が知っているドラゴンなどではなく、釣り上がった目、今にも噛みつきそうな大きく鋭い牙、禍々しい殺気を帯びた大きな体・・・知っている姿でも、全く別の生き物・・・それが窓の外から僕を睨んでいる。
「キ・・・サマ・・・」
微かに聞こえる声に僕はビクッと体を揺らす。
「ナゼ・・・ソノ、チカラヲモッテイル・・・?」
尋ねられた言葉が何を言っているのか、わからずに僕は戸惑った顔をすると、ドラゴンは怒ったように大きな奇声を上げる。
その声の振動で、窓が全て割れ、ぽっかりと大きな穴が開いた。
「ワレニヨコセ・・・」
「な、なんの事を言ってるんですか?」
「ソノチカラヲ、ワレニヨコセ・・・・」
ドラゴンはそう言い放つと、僕へと飛びかかってくる。
「聖っ!」
それと同時に後ろからメイデンの声がするが、僕は目の前に迫ったドラゴンから目が離せない。
あぁ・・・喰われる・・・
そう思った瞬間、僕の目の前に薄いベールが楯のように現れ、ドラゴンを弾き飛ばす。
「な、何・・?」
「ウゥ・・・ドレイク・・・・」
「え・・・・?何故、その名前を・・・」
「聖っ!」
駆け寄ってくるメイデンが魔法でドラゴンに火を放つ、怯んだ隙にヘルダが僕の前へと立ちはだかる。
「グォオオオ・・・・」
火に包まれながら雄叫びを上げるドラゴンは、そのまま外へと飛び出していく。
その後をメイデンが追いかけようとするが、ヘルダがダメだと止める。
その声に、メイデンは舌打ちしながら身を返し、僕へと近寄ってくる。
「聖、怪我はないか?」
「だ・・・大丈夫・・・です」
止まらない震えに、エイデンが差し出した手をぎゅっと握る。
「メ・・・メイデンさん、ヘルダさん・・・あれは間違いなくドラゴンです。ですが・・・ですが、僕が知ってるドラゴンとは全く違う・・・」
「・・・・詳しく調べる必要がありそうですね」
僕の言葉にヘルダが答えてくれるが、僕は得体の知れない恐怖に体を縮こませる。
そんな僕の姿を見て、メイデンが優しく包み込んでくれる。
「聖、話は後だ・・・今はゆっくり休もう」
「で、でも・・・あのドラゴン・・・ドレイクさんを知ってた。それに・・・それにあのドラゴンが狙っているのは、間違いなく僕だ・・・」
そう告げた後、僕はメイデンに包まれたまま、気を失った。
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