第27話 ドレイクとシリルへの想い
ダンとクリスが去った後、僕達の間にきまづい雰囲気が流れ、自然と沈黙が続いた。
すると、メイデンがそっと手を差し伸べる。
「聖、すまなかった。聖が2人の事を大切に想いっているのを知っていたのに、俺達の配慮が足りなかった。ヘルダも聖を泣かせてしまったと落ち込んでいる。部屋に戻ってきてくれないか?」
メイデンにそう言われ、僕は小さく頷いてメイデンの手を取り、部屋へと歩き始める。
「僕も・・・僕もごめんさい。そんな意味はなかったとわかっていたのに、あんな風に怒ってしまって・・・」
僕はメイデンに謝りながらも、でも・・・と言葉を残し、仮面にそっと触れる。
「この仮面はドレイクさんが用意してくれたんです。2人は僕の仮面の下の顔を見ても怖がらずに、優しく触れてくれてたのに、僕がこの傷の事で沢山傷付いた事を知っていたから仮面を作ってくれたんです」
「そうだったのか・・・」
「この仮面にはドラゴンと花・・・ドレイクさんとシリルさんが型取られているんです。そうする事で2人が僕の側で見守ってるよと言ってくれてるみたいで・・・今でも姿は見えなくても2人の気配を感じる事ができるんです・・・だから、2人に疑われるような言葉を聞かせたくなかったんです・・・」
僕の話にメイデンは足を止め、そっと仮面に触れる。その型取られた形をなぞるように優しく指を滑らせると、小さく微笑んだ。
「この仮面から魔力を感じるのはそういった意味があったからなんだな・・・聖、本当にすまなかった。二度と2人を、聖を傷付けるような事はしない」
メイデンはそう言って、僕に小指を差し出すと約束だと言葉を添えた。
僕はその小指に指を絡ませ、ありがとうと言葉を返した。
部屋に戻ると、ヘルダが今にも泣きそうな顔で駆け寄ってきて、僕に何度も謝ってくれた。僕もごめんなさいと素直に謝るとヘルダは僕に抱きつき、ありがとうとお礼を言ったが、怒ったメイデンに引き離され、メイデンへと悪態をつき始めた。
僕はそれを見て、声を出して笑った。
「メイデンさん・・・今後、調査はどうなるんですか?」
ソファに座り、ヘルダの入れてくれた紅茶を飲みながら、僕はメイデンへと問いかける。メイデンは、紅茶を一口飲んだ後、静かにカップをおろした。
「明日の朝、森に入る事になった。その際に、襲ってくる魔獣に対しては討伐する事になっているが、特に襲ってくる気配のない魔獣に関しては放っておく事にした。
無闇に討伐して、魔獣を刺激しては元も子もないからな。
調査するのはそのドラゴンの存在だ。もし、本当にドラゴンがいたとして、その大きな力が森の生態を脅かし、攻撃的になった魔獣達に何らかの影響を与えて要るならば、討伐する事になる。もちろん、他に原因がないかも調査する予定だ」
「そうですか・・・・あの、僕もその調査に加わったらダメですか?」
「ダメだ。危険が伴う」
「でも・・・本当にドラゴンがいるなら、僕にかかっているドレイクさんの加護が役に立つかもしれません」
「ダメだ。例えそうだとしても、その事で周りに聖の力が知れ渡れば、聖自体に害が及ぶ」
「そうです、聖様。魔獣など私達の手にかかれば討伐は容易いですが、敵が人間となると、ましてや貴族や王宮の者達相手になると何かと厄介です」
「でも・・・」
「まぁ、俺は貴族だろうが何だろうが、聖に手を出す奴は片っ端から消すけどな。だが、万が一という事もある。どんなに手を尽くしても、一瞬の隙が命取りになる。
それを防ぐためにも、危惧する事は最初から排除するに限る」
「・・・わかりました。でも、もし、ドラゴンについて何かわかれば、僕にもちゃんと話してくれませんか?」
僕は懇願するようにメイデンとヘルダを見つめると、2人はグウっと変な声を漏らし、小さなため息を吐きながらわかったと答えてくれた。
その返事に僕は目を輝かせ、ありがとうとお礼を言うと、また2人はグゥッと変な声を漏らした。
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