第14話 抜け出せない孤独
メイデンの邸宅に来て一週間が過ぎようとしていた。
僕は次第に部屋に籠る時間が増えていった。
1時間、2時間・・・どんどん時間は増え、10日も過ぎる頃には部屋から一歩も出ない日が続いた。
メイデン達が心配して何度も部屋に来るが、僕はそれに答えられずにいた。
そうしている内に、急に過呼吸を起こし、僕はまた寝込んでしまった。
高熱が出てうなされている間、僕は何度もごめんなさいと口にしていた。
過去の自分、心配してくれてるメイデン、世話してくれるメイ達、笑顔を見れなくなった子供達・・・僕は全てに謝りたかった。
意識が朦朧としているにも関わらず、謝らずにはいられなかった・・・・。
体のだるさと、ひんやりとする空気に僕は目を覚ます。
体の周りには何かの円陣が浮かび上がっていた。
横へと顔を向けると、ベットに顔を伏せて寝ているメイデンの姿があった。
その姿を見て、熱がある僕を魔法で冷やしてくれているのだと悟る。
僕は力を振り絞って、メイデンの手を叩く。
するとメイデンが勢いよく顔を上げて起き上がった。
「聖!目が覚めたか!?」
今にも泣き出しそうな顔で僕に声をかけるメイデン。僕はまた小さくごめんなさいと告げた。
「聖・・・何をそんなに謝るんだ?ずっとうわ言のように謝りながら泣いていたんだぞ。何がそんなにお前を悲しくさせる?」
「ごめんなさい・・・メイデンさん、僕を洞窟に帰して・・・」
「・・・・なぜだ?ここが嫌なのか?」
「ここは僕がいるべき場所じゃない・・・・僕は・・・僕はこんな暖かい場所にいる人間じゃない・・・」
「なぜ、そう思うんだ?」
「僕は周りの人を傷つけたから・・だから、僕はこの傷を受けたんだ・・・僕は明るい場所で、こんな暖かい場所で生きたらダメなんだ」
「そんな事はない。例え聖が何か罪を犯したとしても、償う意思があるのであれば、それは暗闇ではなく、明るい場所でちゃんと前を向いてやらねばならない。そうでないと、償う事もできずにただ落ちていくだけだ。聖・・・シリルがよく言っていた。誰にでも幸せになる権利があると、笑顔を忘れずに生きていればきっといい事があると、俺にそう教えてくれた。だから、聖も笑って生きるんだ。シリルの言葉なら信じられるだろ?」
メイデンは震える手で僕に触れながら、言い聞かせるように僕へと言葉を投げかける。
「僕は・・・僕はどうしたらいいのかわからなくて苦しいんです。メイデンさん、ここにきて、僕を抱きしめてくれませんか?僕にぬくもりをくれませんか?僕はいつまでも孤独から、暗闇から抜け出せないんです。いつまでも寒いままで、いつまでもずっと1人で、このまま・・・消えたくなるんです・・・」
涙ながらにそう伝えると、メイデンも涙を浮かべ、小さく頷いた。
そして、僕の隣へと寝そべると僕を強く抱きしめる。
「お前は1人じゃない。俺がずっとそばにいてやる」
僕に言い聞かせるように、何度も耳元で囁く。
僕はその声を聞きながら、また深い眠りについた。
その夜、僕は変わった夢を見た。
僕とメイデンが神社の狛犬になっている夢だ。
その夢の中でメイデンがこう言う。
「聖、知ってるか?俺達狛犬は2人で一つなんだ。伝説では兄弟とか夫婦とか言われてるんだぞ。きっと俺達は兄弟じゃなくて夫婦だ。2人で一つだから、俺達夫婦はずっと一緒だ」
「なんで、そう思うの?僕は兄弟だと思うよ」
「なんだと!?いーや、絶対夫婦だ!でも、聖とずっと一緒にいれるなら、兄弟でもいいな。兄弟でも愛し合える」
「何、それ」
そんな言葉を交わしながら、僕はずっと笑っていた。
笑っている僕を見て、メイデンも嬉しそうにずっと笑っている。
「どんな形でもずっと俺達は一緒だ」
そう言いながらメイデンが笑う。
僕もそうだねと言いながら笑う。
それがおかしくて、僕は寝言でもふふっと笑っていた。
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