第13話 孤児院
数日が過ぎ、僕は自分が小柄だと言われる原因を知る。
あの同じ年頃だと思った男の子は、僕と同じくらいの背丈があり、体付きもしっかりしているのに、まだ13歳と僕よりずっと年下だった。
僕の年齢を聞いて彼も驚いていたが、何故かメイデンも驚いていた。
メイデンは僕の事をまだ成人していない子供だと思っていたらしい。
ここでの成人は16歳。
つまり僕は成人していない、16にも満たない子だと勘違いしていたのだ。
この世界では小さな頃から婚約者を持つ。
平民の間ではそういった事はないが、16になれば自ずと結婚相手を探す。
メイデンは19歳だからいつでも結婚はできる。
だから、僕が了承すれば婚約者として数年待って、成人を終えた後に結婚したかったらしい。
そもそも男同士で結婚ができるのかと疑問に思ったが、そこは敢えて聞かない事にした。
「聖が17なら、待たなくていいのだな」
興奮気味に喜んでいるメイデンの隣で、僕は了承してないと言葉を返すとメイデンは自身ありげに答えた。
「これから口説く。まだ、子供だと思っていたからこそ、強引に口説くつもりはなかったが、大人なら問題あるまい」
「問題ありまくりです!何度も言いますが、僕は男です。子も成せません。それに、僕のとこでは20歳が大人なんです!」
「だが、もう元の場所へ帰らず、ここで暮らすのであればここでの成人の年に合わすのが道理ではないのか?それに、俺は別に子が欲しくて結婚するわけではない。子はこうして沢山いる。だから、ただ愛する人がいればそれでいい」
僕はその言葉に開いた口が塞がらない。
それを見た男の子はずっとクスクスと笑っていた。
男の子の名前は、カーター。
孤児院の最年長で、リーダーでもある。
孤児院はメイデンが言っていたように、メイデンの邸宅の敷地内にあった。
街から少し離れたこの邸宅の敷地はとても広く、二階建てで立派だと思っていた邸宅は平民からすると立派だが、貴族からしたら小さい屋敷らしい。
その邸宅に並んで、邸宅より少し小さめの家がある。
そこに孤児の子供達を住まわせていた。
あの火事から13年・・・しばらくの間は教会とメイの家で暮らしていた子供達も大きくなり、それぞれ巣立っていったが、また新たな孤児が来る。
貧困と戦争孤児、それからメイデンが言う貴族の命を軽く見る行動がそうさせるらしい。
貴族の家系に相応しくない者、金に物を言わせ平民やメイドに手を出し、やむ負えなく産み育てられなかった人達が泣く泣く教会へ預けるのだ。
運よく愛人や第2夫人に迎えられる人間は少ない。
だが、権力を持たない人間を言葉巧みに誘い、お金で釣ればあわよくばと欲を出す人がいる。
それは男性も例外ではない。
そして、相手の夫人が孕れば内緒で産み落とし、ここへとやってくる。
どの世界でも、権力と金を持つ非道な人間はいるものなんだと思い知らされる。
特にこの階級制度が強いこの世界では、泣き寝いるしか無いのだろう。
次から次へと増える子供達・・・それを見かねたメイデンが、自分の魔法を使って戦地へ稼ぎに出始めた。
そして、お金を貯め、この邸宅と孤児院を作った。
天才魔導士、美貌、膨大な財産、そして慈悲深いとくれば、平民のくせにと貴族からのやっかみが増えるのは自然な事だった。
だから輪をかけて、メイデンは貴族を嫌い、その世界に入る事を拒んだ。
僕は話を聞いて、シリル達が話してくれたようにメイデンが本当は心優しい人なんだと実感する。
そうじゃないと、こんなに子供達がメイデンを慕うわけがない。
輪に入って和気藹々とする訳でもなく、物凄く気にかけている素振りをするわけでも無いのに、みんなメイデンへ笑顔を向ける。
それは、みんながメイデンの優しさを知っているからだ。
それに、ここではきちんと衣食住が整えられ、字や簡単な計算の勉強もできる。
この先、職を見つけて出て行く時に役立つ様、それぞれに役割を与えて仕事をさせている。
何かしら理由があって、ここへ来た子供達だけど、ここで仲間を作り、愛情を受けて育つ・・・メイデンがそうされて育った様に、心の支えを見つける事ができる・・・ここで暮らす子供達は逆に幸せでは無いのかと思うと、少し羨ましくもあり、僕にはなかった環境が僕を一層寂しくさせた。
そして、シリル達が言っていたメイデンの孤独が何なのかと疑問を持ち始めた。
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