第4話 頼んでもいない増援、そして!
彼が持っているという殺しの標的の一人、セレステッドを撃破する為にバレットダイヤモンドシティの治安部隊が溢れ返る謎の塔へと潜入する。
そこでまさかの装備を破壊されるという想定外の事態を迎えるが、彼の殺し屋として鍛え上げられた格闘術により難を逃れた。
そしてこれからどうするかを考えていた時の事…
「何故ゲリラが今このタイミングで…!?」
「貴様〜ッ!!さてはゲリラのスパイだな!?敢えて治安部隊に喧嘩を売って潜り込み、我々を直接叩こうと言うのかぁ!!」
兵士達はこぞって好き勝手に騒いでいるが、当のザグロブは不思議そうに黙って話を聞いていた。
そう!彼には全く見に覚えがないのである!
しかしながらこれは好機だと彼は考え、彼らの決めつけに乗る事にした…
「う~ん、どうだったか…よく分かんねぇなぁ」
「何を貴様…!!」
ザグロブの挑発に乗った兵士が、太腿の装甲を展開させてスタンロッドを取り出した時だった。
突如として、建物が揺れたのである。
「うわぁっ!」
「何だ、砲撃か!?あいつら余裕がない筈なのに…」
何らかの攻撃を受け、建物が揺れた事により兵士達は慌てふためく中、ザグロブだけはその隙を見逃さなかった。
隊長と呼ばれた兵士がよろめき、銃口を自分から逸らしたその一瞬の動きを見て、彼は姿勢を低くする。
そしてそこからは一瞬であった。
「あっ!!」
兵士の一人が気付く頃には、ザグロブは中腰の体勢から一気に距離を詰めてその片腕を首へと叩きつけ、そしてガッチリと片腕でロックして勢い良く相手の後頭部を床へと叩き付ける。
見事なネックブリーカードロップが炸裂した!
またその際、きちんと相手の持っていたサブマシンガンを奪っていて抜かりもない。
「こっ、こいつッ」
即座に別の兵士がスタンバトンを振り下ろそうとした瞬間にその手に持った銃で迎撃する。
まずは手、そして胴、締めに頭部へ数発撃つと小気味のよい金属音を鳴らしながら男は壁へと追いやられ、ずるずると倒れ込む。
もう一人は正確な射撃で倒される仲間を見て、ただただ圧倒され完全に怯えていた。
「あわわ…」
そんな怯えた相手にも容赦なく、ザグロブは顔面に数十発くらい叩き込んだ。
最初の数発は衝撃で声を上げていたが、次第に動かなくなった。
ひとまず三人倒した後にすぐさまその部屋から出ると、辺りを見回してこの塔からの脱出法を考える。
とりあえず考え付いたのはゲリラの動きに合わせる事であった。
(ひとまず、ここに長居しても仕方ねぇ。そういえば、ゲリラがどうとか言ってたなぁ…)
そして廊下を彷徨いていると、再び彼の前に兵士が姿を現す。
「あっ、貴様ッ!どうやって尋問室から…!?」
しかし兵士が銃を構えるより先に、ザグロブは数発手と足に撃ち込んでその動きを止める。
正確な射撃によって兵士はその手から銃器を落とし、更に膝を付いた。
「がああッ…」
(…薄々気付いたがこのサブマシンガン、威力を抑えられてんのか…?それともこいつらの装甲服が相当高性能なのか)
ザグロブは銃器を投げ捨てつつ、痛みに悶える兵士の下へ歩いて行く。
黒い死神がどんどん近付いてくるのを見て、彼は必死に痛む膝を押して脚を引き摺って逃げ出そうとするが、既に手遅れで首根っこを掴まれた。
「おい、ここから出るにはどうしたらいい?出来たら安全に逃げれる所からな」
「ひ、ひぃいい…ち、地下の搬入口から…」
彼は脱出ルートを事細かく聞き出し、地下の搬入口からマンホールを使って地上に出れる事が分かると、その兵士を思いっきり投げ捨てて急いで搬入口へと走り出した…
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ザグロブは騒がしい塔の中を駆け抜け、搬入口と到着していた。
薄暗い搬入口の中を見回してマンホールを探していると…
「見つけたぞ!脱走者だ!!」
まさかこんな所まで敵が来るとはと、ザグロブは彼等の仕事熱心さに感心していると、ぞろぞろと兵士達が集結した。
「もう逃げられんぞ!全員射撃用意!!」
兵士達が一斉に銃を構え、警告なしにザグロブへ発砲しようとしたその時…
突然、空き缶の転がるような音がこの搬入口に響き渡り…
何かを噴出するような音が聞こえて来たのである。
たちまち搬入口は灰色い煙で充満した。
「あ…?」
「なっ、なんだ!?」
その場にいた全員が煙に巻かれる中、また新たな足音が聞こえてくるのをザグロブはキャッチする。
この兵士達のような重厚な足音ではなく、軽快な足音でそれがすぐに第三勢力である事は明らかであった。
そして続々と煙の中に妙な見た目の人間達が姿を現した。
「ヒャッホー!!」
「ぶっ潰せ!!」
何処からどう見てもならず者な連中が、煙の中へ突っ込んで来て続々と装甲の隙間や関節にそれぞれが手にした斧や銃などで兵士達に襲い掛かる。
ザグロブは巻き込まれないよう遠目から観察しつつ、次々に上がる痛ましい悲鳴を何処か楽しそうに聞く事にした。
この謎の第三勢力を前にしてザグロブが落ち着いているのも一つ、理由があったのだ。
やがて悲鳴が止むにつれ、煙も晴れてくるとついにならず者とザグロブは対面する。
「いやぁ中々な手際だ。流石は何度も刃を交えてそうな事はある」
ザグロブは拍手でならず者達を評価していると、彼等の背後から一人の女性がこちらへ歩いてくるのが見えた。
そんな女性に男達が次々と頭を下げたり道を開けたりしている様子から只者ではない事が分かる。
「フフ、貴方も尋問官から逃げおおせた上に兵士達をその身一つでのしてしまうなんて…流石はバルザックをやっつけた事はあるわね」
「俺からしたらあんなイカレ野郎共を従えてるアンタも中々すげぇと思うがな、ゲリラさんよ」
「あら、そんな事も見抜くなんて…私はアイシャ香澄、木端とは言え治安部隊の隊長を倒した無謀な奴がいるって聞いてね」
そしてアイシャと名乗った女性は右手を差し出すと、にこやかな表情で一言言った。
「私達は宝石砕き《ダイヤクラッシャー》、この国を壊すのを目的にした集団よ」
こうして彼は偶然にも、ゲリラ達と合流して治安部隊の基地から脱出するのであった…
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