第2話 その名はザグロブ
突如現れた謎の男、ザグロブ。
彼は自身を殺し屋と名乗り、ここバレットダイヤモンドシティで早速騒ぎを起こしていた。
「こ、殺し屋だと…!?」
そしてそんな彼の視線は、目の前にいる鋼鉄の巨腕を持った大男に注がれていた。
「そうだバルザック。俺はアンタを殺す為にはるばる遠くからやって来た…」
「なっ…正気かてめぇ、俺はこのBDC(バレットダイヤモンドシティ)歓楽街エリアの責任者だぜ…!それに、ここで戦う事がどういう事か…」
バルザックは長々と警告しているが、その警告はこの場で堂々と自身への殺害予告を行った事が信じられないという、不思議な物であったがザグロブには関係ない。
「ふん、どうせ後でもっと凄い事やるんだ、構いやしねぇよ」
自身の警告すら意に介さないザグロブに、ついにバルザックはブチギレた。
「こ、この…お前等!!殺っちまえッ!!」
バルザックは部下達に、目の前の黒いサイボーグへ攻撃指令を下すと彼等は銃を手にして即座に一斉射撃をする。
凄まじい弾幕がザグロブを襲うが、彼の超硬対弾ポリマーのボディの前に弾丸はすべて弾かれた。
「う、うわぁぁぁッ!!なんなんだこいつ!?」
「あ、あんな装甲のサイボーグ見た事ねぇ!!」
彼等の持つ銃はすべて大口径の破壊力ある物なのだが、ザグロブは全く怯む様子もなくただ静かに立って受け止めているだけで、効いている様子は全く無い。
「ひ、ひゃははは!!だったらよう!!」
すると部下の一人は奥から長細い筒のような物を引っ張り出し、ザグロブへと筒を向けていた。
彼が取り出した物、それは対戦車用のバズーカであった!
「これならひとたまりもあるめぇよ!!」
「わっ、馬鹿!!こんな所で撃つな!!」
しかし男は他の仲間の言葉も聞かず、バズーカのトリガーを引いてその砲弾を発射した。
バックブラストと発射した際の炎が閃光のように広がると同時に、目にも止まらぬ速さで砲弾はザグロブへと命中する。
そして店内では凄まじい爆風が包み、部下達は皆大きく吹っ飛んだ。
店も大きく破損し、壁は殆どが吹き飛び外で人が大騒ぎしている様子がよく見えていた。
「ば、馬鹿野郎!!よく考えて使いやがれ!!」
「ひゃは、でもバズーカの直撃を受けたんだ…ヤツはひとたまりも…」
と、バズーカを構える男が喋っていたその時だった。
彼が言い切ろうとした瞬間に、その頭が吹き飛んだのだ。
「え…」
隣に立っていた男は突然の事に間抜けな声を上げ、改めてバズーカを持った男へ視線を動かす。
そこには顔をふっ飛ばされ、バズーカを持ったまま硬直して倒れた仲間の姿があった。
男はもしやと思い、先程バズーカで吹き飛んだザグロブの方へと顔を向けるとそこには…
「ふぅ〜っ、久しぶりに良いのもらったぜぇ」
何とザグロブは店の外へとふっ飛ばされたものの、全くダメージを受けてないのかピンピンとしており、その手にいつの間にか手にしていたリボルバー型の銃による膝を付いての射撃でバズーカ持ちの頭を正確に撃ち抜いたのだ。
「う…っ」
そしてあれだけの射撃を受け、バズーカまでも耐えた化け物がこちらに銃を突きつけられ、部下達の脳裏によぎったのは…
(やらなきゃ、殺られる!!)
その後の彼等の行動は言うまでも無かった。
「うわぁあああッ!!」
彼等は最早ザグロブへ狙いを定めるのではなく、自身に攻撃をされたくないという強い気持ちからひたすら制圧射撃を行っているだけで、周辺住人への配慮もへったくれもない。
はたから見れば発狂そのもので、見境のない攻撃住人達もまた狂乱しながら逃げ惑った。
「な、何なんだあいつら!!」
「たった一人に何考えたんだよ!!」
住人達の言う事も至極真っ当だが、既にザグロブに恐怖している彼等にはもはや関係のない話である。
なお、当のザグロブは膝を付いたまま弾丸に怯む様子も無く、的あてゲームのように次々と敵の頭を撃ち抜いて行った。
次々と倒されていく部下を見て、自分は動く必要がないと思っていたバルザックはついに重い腰を上げた。
「あ、あんなサイボーグ見たことねぇ…」
バルザックはビクビクと怯え、戦意の無くなった自分の部下を見つけるや否や彼は巨大な腕でそいつを掴み上げる。
「なっ、何を!?」
「しっかり働けぇい!!」
次の瞬間、何と彼は自身の部下をザグロブへ勢い良く投げ付けたのである。
もちろん彼もそれに対して瞬時に反応して銃を撃って迎撃するが、それは囮だった。
「馬鹿が〜ッ!!」
部下による目眩ましはまんまと成功し、バルザックはそのギガンティックアームでザグロブを見事に捕縛したのである。
その際、彼は勢い良く掴まれた拍子に銃を落としてしまった。
「どうだ!!お前の体は防弾ポリマーのようだが流石に締め上げられたらどうしようもなかろうよ!!」
「………」
ザグロブの表情は目元意外全てフェイスガードで覆われているので苦しんでいるのかどうか分かりにくいが、それでも凄まじい力で締め上げられているせいでミシミシと凄い音を鳴らす。
両腕が自由なものの、胴体を強く掴まれていているのだ。
それでも彼は敢えて藻掻いたり、脱出を図ろうとはしない。
下手に動けば逆に危険だからだ。
「さぁさぁ、そろそろその黒く光るボディが真っ二つになっちまうぜぇ〜ッ」
まだ完全にとどめを刺したわけでも無いのに勝ち誇っているバルザックを見て、ザグロブは不意に失笑した。
「ククッ…いるんだよなぁお前みたいな勝ってもないのに勝った気になった奴がよ…」
「フン!負け惜しみを言いやがって…そんな状態でどうすんだ?もうあと少しでお前の胴体と足が生き別れの兄弟になっちまうんだぜ〜!!」
負け惜しみを言ってるもんだと思い、バルザックは更にアームに力を込める。
ザグロブもこのまま掴まれているのも面白くないので、左腕を前に突き出した。
「そろそろお前の顔も見飽きたんだよ」
彼がそう冷たく言い放った瞬間、左手首から赤い光が広がった。
バルザックはそれが何なのか、すぐにその体で身を持って知る事となる。
「フ、
炎は瞬く間にバルザックの顔へと吹き掛かると、彼はあまりにも恐ろしい叫び声を上げ、のたうち回った。
「があああああッ!!」
その際彼は痛みのあまりザグロブを投げ飛ばし、その顔を覆って暴れ回った。
ようやく解放され、やれやれと言った態度で腰の辺りを手で抑えて立膝の体勢を取っていると、彼の耳にある音が聞こえ始めた。
「…サイレン?」
彼が音に気が付く頃には既に、彼とバルザックを取り囲むように装甲車と重装甲の戦闘服に身を包み、大型のマシンガンを手に持った兵士達が隊列を組んでこちらに銃口を向けていた。
「そこの二人、何をしている!!」
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