狂い咲きバレットタウン

スティーブンオオツカ

第1話 狂乱開始!!

近未来…それは突然起こった。

突然発生したウイルスによるパンデミックによって、世界中は大混乱に陥ったのである。

そしてその混乱は戦争へ発展するのに時間は掛からず、国と国はパンデミックの責任を押し付け合い、やがてその技術を尖った方向へ発展させた…

時は経ち、ワクチンや治療薬が完成してようやく平和の兆しが見えて来た頃の事であった。


「入国許可証ヲオカエシシマス。ヨウコソ、バレットダイヤモンドシティへ」


バレットダイヤモンドシティと呼ばれたその国の入口に設置された一見廃墟にしか見えない検問所に一人、赤いマントを羽織った風変わりな人間が立っていた。

その背丈、そしてマントの下からも分かるその逞しい体付きから男である事は間違いなく、荒野の中を歩いて来たのかそのマントは砂埃が酷く、非常に汚れていた。

そんな彼は一人、検問所を後にして要塞のように佇む国の中へと入って行った。

果たして、彼は何者なのか?そしてバレットダイヤモンドシティとは?

今まさに、何かが起ころうとしていた…


───────────────────────


バレットダイヤモンドシティ、そこは日本から遠く離れた海外の何処かにある広大な荒野の中にポツンと存在する国。

その国はパンデミックによる戦争が終結した後に行き場をなくした人間達が集まって作られた場所で、そこには多数の元軍人やちょっとした事情で国から逃げた人間が住んでいた。

その為住人達はみな一癖も二癖もある者しか集まっておらず、何処となく異様な雰囲気が漂っていた。

そしてマントの男が辺りをキョロキョロと見回していた時だった。


「うぎゃあああッ!!」


突然、一人の男が建物の中から転げ回って来ると何事かと人々が集まって来る。

マント男もそれに釣られて様子を見に行くと、痩せ細った男が体に機械をめり込ませ、苦悶の表情を上げていた。


「あ~、こいつ生体部品が飛び出してるな」


住人の一人が男の状態を言い当てると、すぐさま集まった人間達はつまらなさそうにその場を後にし始めた。


「チッ、もうちょい良いパーツ使ってるサイボーグならそのまま売りに出しちゃうのによ」

「見た所カスみてぇな改造しか受けてねぇのに、に喧嘩売っちまったみてぇだな。アホだねぇ」


やがて人だかりは消え、残ったのはピクリとも動かなくなった機械仕掛けの男の死体とマントの男だけが、その場に残った。

すると、マント男は何を思ったのかこの機械仕掛けの男が転がって来た建物の中へと入って行ったのである。


「あれ?あいつ酒場に入ったぞ」

「馬鹿がまた増えやがった、の貸し切りなの知ってんのか?」

「まぁ、死体が増えた所で関係ねぇけどナ」


───────────────────────


建物の中は薄暗い物の、どうやら酒場のようだ。

普通の酒場とは違うのは奥の方に巨大な男がふんぞり返るように座っているという点で、その客層もかなり変な方へと偏っていた。


「おい、テメェ誰だ?今はこの俺様…バルザック様の貸し切りだぜ?」


バルザックと名乗った大男は偉そうにマントの男に今この酒場を貸切っていると勝手に宣言すると、彼の部下であるならず者達はクスクスと笑う。

しかし、マントの男は何も言わない。


「へっへっへ、どうやら俺様のこのギガンティックアームを見て声も出ねぇか?こいつは戦争中に敵から掻っ払った特別な品よ!」


そう言いながら彼はギガンティックアームと自身が呼んだ巨大な鉄の腕を見せびらかし、ひたすら挑発を繰り返す。

この国の人間の大きな特徴、それは殆どの者がサイボーグであるという点だ。

かつての戦争で、兵士達が戦場の中ウイルス感染していくのを危惧したそれぞれの国はある手段を取った。

それは人間の肺やその他の臓器を機械に置き換える事であった。

やがてサイボーグ技術はどんどん発展して戦争が終結した後も、裏の世界等ではサイボーグ手術の技術が流出して今に至るのだ。

バルザックも、まさにサイボーグ技術によってその体を強くした化け物と言っていいだろう。


「さぁ、潰されたくなかったらとっとと店から出て行きな」


彼は何度目かの警告をするが、それでもマントの男は動かない。

そして痺れを切らした部下の一人がついに男の側へと近寄った。


「おいてめぇ、調子くれてっと痛い目みんぞ?何者か知らねぇが殺される前にとっとと失せやがれ!!」


と言い放ったその時だった。


「きたねぇツラ近づけるな…」


やっとマント男が口を開いたかと思ったら、開口一番飛び出したのは部下の男へ対する酷い罵倒であった。

もちろんそれを聞かされた男は我慢できるはずもなく、激昂する。


「な、何だこの野郎!!」


と叫びながら思いっ切り腕を振るうと、男の腕はチェーンソーへと変形する。

そしてマント男の頭目掛けてそのけたたましい音鳴り響く刃を振り下ろすが、それに対して彼は腕を軽く上げ、その刃を受け止めた。


「なっ…!?」


なんと刃の回転が止まり、完全に防がれてしまったのだ。

男は呆気に取られ、何が起こっているのか分からず固まってしまう。


「…!!」


そして、その隙を付くようにマントの男は固まる男の顔へパンチ一発御見舞する。

すると、驚くべき事にそのパンチ一発で部下の男は凄まじい勢いで建物の壁をぶち破って外へと飛んだ。


「なっ、てめぇ…!!何考えてやがる…!!何なんだてめぇ!!」


バルザックは男が何者か物凄い剣幕で聞くと、マントの男はそのボロ雑巾のようのマントを勢い良く脱ぎ捨てる。

その下から現れたのは黒い外装にフルフェイスで顔を多い、目だけが見えている黒いサイボーグであった。

そして、彼は自分の名を静かに名乗り出した。


「俺はザグロブ…殺し屋だ」















  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る