第23話


「感謝する。だが、あまり気を遣わんでいい。俺たちは勝手に強欲な奴らから財産は頂戴しているからな。寧ろ分配が必要とあれば言ってくれ。元の持ち主不明が多すぎて、配分の手が回らん」

「勿体ないお言葉です」

 そんなやり取りの最中だった。謁見の間に闇族王の側近とも言える長髪の男が顔を出した。長い黒髪を揺らしてミズミに近づいてくる男に、キエラは気が付いて声をかけた。

「おお、ハクライ殿。お久しぶりです」

 少々興奮気味に声をかけてくる鬼族の長に、茶髪の隙間から様子を窺っているミズミだったが……何かに気付いたように一度だけ目を丸くしていた。それはまるで、見ている人物の変化に急に気が付いたような素振りだ。

その間にも、声をかけられた黒髪の男が頭を下げていた。

「あ、鬼族の王様。お久しぶり……です」

 危うく敬語を忘れそうになった男が慌てて付け足すと、短髪の角の男はどこかあたふたと不自然な様子で話しかけていた。

「あ、ええと、ハクライ殿は、最近調子はどうですかな?」

「うん、いつも通りー……です」

「今度また、ミズミ様と一緒に城にお越しになりませんか? 同じ鬼族同士、美味しい食物も準備いたしますぞ」

「わー、それいいね。ミズミ、今度行こうよ」

「……ああ。ではキエラ殿、今度お邪魔させてもらおうか」

「はい、喜んで」

 そんなやり取りをして、少しホッとする鬼族王を横目で見ているミズミだったが、長髪の男は何も気にせず自分の相棒に歩み寄っていた。

「ミズミ、さっきじーちゃんが荷物運び終えたって。扱いどうするか聞いてくれって」

「……わかった、後で行く」

 ちらと長髪の男を見上げると、そっけない返事をしてミズミはまた角の男を見る。そんな間にも、長髪の男は謁見の間を出ていってしまった。そんな男の後ろ姿を、鬼族の長はなぜかしんみりと見ていた。

「……ハクライ殿も……お元気そうでしたな……」

「ああ……。ところで……姫君のレキア殿はお元気かな?」

「……え? あ、ええ。元気にしております」

 唐突に話を振られ目を丸くする男に、ミズミは黒く細長い王座に腰掛けながら話を続けていた。

「姫君も……そろそろ年頃だからな。器量もいいし、さぞかしいいよる相手も多くて大変では?」

 その言葉に、鬼族王の表情が曇る。太い眉を寄せ困ったようにため息を付いた。

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