第24話
「いえ……実はそろそろ婿を迎えたいとは思っているのです……。ですが、娘が頑なにどの男にも首を縦には振らないのです……」
「ほう、それは困ったな。あー……さては……想い人がいるのでは?」
王座の肘掛けに肘を付き、あごを乗せてにやりと笑う闇族王に、鬼族王は苦笑して頭をかいていた。
「いやはや……相変わらずミズミ様は察しが良くて困りますな……。まさにそのとおりです……」
「そうか……。キエラ殿には世話になっているし、よければ姫君の縁談、俺も少しばかり協力しようか」
しかしその申し出に、言われた方は更に困ったように首を傾げていた。
「いや……実はその…………娘の想い人というのが……あの……」
と言いにくそうにしている客人に、茶髪の隙間からニヤリと微笑んでミズミは先を促した。
「何、気にすることはない。言ってみろ」
「はい……実は……娘の想い人というのが…………ハクライ殿でして……」
「ほーう、そうか。そうだったのか、成程な……」
予想通りの回答に口の端を歪めながらも、闇族王はわざとらしくそう答える。
実はすべて、ミズミにとってはわかっていたことだった。心音という王が使う術故に様々なものを聞き分けることが出来る能力で、ミズミには人の考えなども聞こえてしまうのだ。先程ハクライを見かけた鬼族の長の心の声を聞き、彼の本心を知ってわざとこんな話題を振り、娘の想い人の名前まで誘導尋問していたのだった。
そんな闇族王の企みに気付くはずもなく、鬼族の長はため息を付いて心底困った様子だ。
「いや……確かにハクライ殿は穏やかな性格にあの強さ、その上器量よしとなれば、相手として申し分ないほどです。娘も甚く惚れ込んでいるようですし……。ただ、流石にミズミ様の側近を婿に迎えるというのも、ミズミ様に失礼かと……正直困っていたのです……」
そう言って深くため息をつく男に、闇族王は背もたれによりかかりながら答えた。
「いや……俺に遠慮はいらん。大事なのは当人たちの考えだろう?」
その言葉に鬼族王が顔を上げると、ミズミは薄っすらと笑って答えた。
「勿論、こちらとしてはアイツ次第だが……もしもアイツにもその気があれば、姫君のところに出向かせる。お互いに話し合ってくれ」
そんなやり取りを、その時ミズミは鬼族王としていたのだった。
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