第18話


「あれ……こっちの人は、王の側近……ってとこか。珍しいね、鬼族と喰族のハーフだ〜」

 その言葉に、言われた長身の男は体制をそのままに目を丸くしていた。

「お、よくわかったね」

 しかし直後、ウリュウはわずかに眉を寄せ少しばかり声色を落として続けた。

「……その歳だと……キミのご両親、生きてないね……?」

 その言葉に、長身の男の空気が変わった。男の瞳孔は細く鋭くなり真顔になった。

「ごめん!」

 直後、急に謝るウリュウの声が響いた。

「……これも禁句だったかな……?」

「ミズミ、殺しちゃ駄目だよ」

 そう言ってウリュウの顔面に構えた手をガッチリと掴んでいるのは、あの長身の男ハクライ。そしてその男の手に捕らわれているのは闇族王ミズミの腕だ。

 これまたいつの間に移動したのか、ウリュウの目の前には攻撃態勢で腕を構えたまま動きを止めている茶髪の王の姿、そしてその腕から逃れるように少しだけ後ろにのけぞっている細身の男、その背後では構えていた爪の方向を変え、相棒の腕を捕らえて攻撃を阻止した黒い長髪の男と、三人それぞれの形で止まっていたのである。

「……ウリュウメイカと言ったな……。正直に答えろ。なぜ俺の本当の性別やハクライの本性がわかる」

 暫しの間を挟んで王の低い声が響いた。声量は控えめだが圧をかけるには十分な声色だった。鋭く細身の男を睨む瞳は紫色に燃え、腕を降ろしてもなお男に脅しをかけるような表情だ。しかしそんな王の恐ろしい表情に動じること無く、細身の男は細い目を開いて静かに答えた。

「……匂いだよ」

 答えた男はわずかに鼻を鳴らし、目の前の主を見上げてその睨む紫色の瞳をまっすぐに見て続けた。

「体から滲み出る術の匂い……。ボクら得意の呪術に似た呪いの匂い、女を封じる呪いだ」

 細身の男は、今度は視線を背後に向け、自分の頭上にある長身の男を見上げて答えた。

「特徴でもわかる喰族の形に血を喰らう獣の匂い、それに加えて荒ぶる鬼の匂い……すぐに分かるよ」

 そこまで答えて、細身の男は自分を睨みつける王と威嚇時の距離のまま立つ男の間で、薄っすらと笑った。

「今回の王様はものすごく珍しい人達だね。ボク気に入った」

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