第17話
思わず呟き漏れるほどである。さすがにここまで変なウリュウ一族は今回が初めてだったようで、年老いたカラスですら目を丸くして二の句が出ない様子であった。一方その隣で、長身の男は相変わらずマイペースに質問を投げかけていた。
「ねぇ、じーちゃん。スティラって……何?」
「……は、はい。代々闇族王に受け継がれる古の名ですじゃ。ウリュウ様は毎回その名で王をお呼びになります」
そんな三人をよそに、細身で細目のウリュウは再び王を見て、薄っすらと微笑んでいた。その視線に王が訝しげに目を細めると、ウリュウは思いがけないことを言った。
「よかった、ボクの代の王様はいつもの王様と違ってて。それに……初めての女の王様のようだしね」
その言葉に王が目を丸くするより早く、一陣の風が吹いた。
「……っおっかないなぁ……」
急に細身の男が、そう怯えて言葉に詰まるのも当然であった。いつの間に移動したのか、ウリュウの背後にはあの黒髪で長身の男が立ち、その上男の首元にその鋭い爪を鼻の先で見えるほどの距離で構えていたのである。表情こそ無表情だが、細身の男を背後から見つめ鋭く爪を構える姿は、明らかに威嚇以外の何でもない。そんな男に振り向きもせず細身の男は囁いた。
「……もしかして今の発言って……禁句だった……?」
ウリュウの言葉に、背後の男は無表情のままあっさりと頷いた。
「うん」
一方で今のウリュウの発言に動揺したのは従者のカラスの方だ。
「ミ、ミズミ様がじょ、女性……っ⁉ ほ、本当ですか、ミズミ様⁉」
従者のカラスが驚くのも無理はない。確かにミズミは美しい容姿をしていて、女性と言われれば納得の姿だ。だが彼女は仮にも闇族王。この邪悪な民が住む大陸で、力業で王になっただけの実力者である。そんな実力者が女であるなど、誰が予想しただろう。
肝心の闇族王ミズミはといえば、さして驚いた様子もなく、寧ろ急に敵意むき出しでウリュウを威嚇する相棒の男にヒヤリとしてため息を漏らしていた。
「ああ……。ハクライ、殺すなよ」
言いながら王は呆れるように目を細めた。
「……全く……俺よりもヤツの方が殺りそうじゃないか……」
思わずそんな独り言が漏れていた。
そんな王とカラスの目の前では、背後を獲られた細身の男が、はっと気が付いたように背後の男に視線を向けていた。
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