雨が降る 小銭がない

止まない雨はない。そういった言葉を傘をさしている奴等が吐く。それがウザったらしくてしょうがない。ある日、そんな奴らの顔を知りたくなって覗いてみたんだ。溜息が出るほど呆れた。笑顔だったんだ。曇りのない晴れ渡った満面の笑み。水溜りに写るのは、太陽でも虹でもない。土砂降りの自分だというのに。そして、明日に希望を託すのはやめた。雨が止むまで待つ必要もない。夜が明けるまで待つ必要もなかった。希望は、未来にはないのかもしれない。手の中には小銭もない。けれど、未来はある。それが希望だ。ぬかるんだ泥は、こんなにも走りにくいことを、今日初めて知ることができた。

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