言葉の旅立ち

言葉が旅立つ。桃太郎が旅立っていく様子を見ていた老夫婦はきっとこの様な気持ちであっただろう。だが、ここに来た言葉は僕のものじゃなかった。何処ぞの勇者のように家の中を荒らせるだけ荒らし、家財から食料まで幅広く強奪し、何も言わず去っていく。そんなものだった。けれど、その言葉は卵のようなものを残していった。だが、卵のような形をしていたわけじゃあなかった。けれど、それは確かに卵だった。そこから、言葉が生まれたから。そして、その言葉を何よりも大事にした。数年経ちその言葉は見違えるほど成長した。生まれた時の姿は見る影も無いが、それでも十分に育ってくれた事が、何よりも嬉しかった。言葉を見送る。あの言葉は誰の家を荒らすんだろうか。

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