第6話 琴音の本音
俺は妹の琴音と付き合っている。しかしひょんなことから同級生の早乙女という女子にバレてしまった。何か金銭面的な要求をしてくると思ったが彼女が要求したこととは「2人の輪に入れて欲しい」だった。とりあえず明日からと言うことになった、どうやら早乙女も俺たちと友達にでもなりたかった訳だ。いや、(俺たち)と言うのは語弊があるか。琴音目当てだ。ただの直感だが俺はコイツに好かれていない気がする。特に理由はない、俺自身がコイツのことを好いていないからかもしれない。
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「手つなぐ?」
「ん?ああ。」
今日は珍しく外で積極的に琴音の方から手を繋いできた。嬉しい気持ちがあるがやはり早乙女のことが気がかりだ。俺達に紛れるように尾行して来ているようだ。ただのストーカーじゃないか、あいつの目的がわからない。しかし早乙女はおそらく俺が邪魔なんだろう、しかし本人には直接聞きづらいし俺からなんて聞けるはずもない。女子のことはよくわからない。そんなことを考えていると手を強く握られた。ちょっと痛いくらい、緊張しているのかもしれない。
「そんな心配しないで、今日は私に集中して」
琴音はたまに心を読んでくることがある。なぜか俺の心を読めるらしい。顔はポーカーフェイスでいつもと変わらないはずなのになんでわかるんだろうといつも不思議に思うがそこもまた可愛い部分でもある。
「お、おう。ありがとう」
手に力を入れると琴音は一瞬ビクッとしたがさらに手を深く絡めるようにしてきた。これが恋人繋ぎってやつかと思っていると、家が見えてきた。「ねえ。」
琴音が不意に話しかけてくる。
「ねぇ、私考えたんだけど早乙女さんの尾行を撒かない?」
彼女が言う。珍しい真剣な眼差しで俺を見つめる彼女。なんだ?一応俺たちの関係をバラされないように表面上は仲良くしないといけないじゃないか。
「それはどうしてだ。」俺も彼女の顔を見てはっきりと喋る。
すると彼女がゆっくりと口を開いた。
『お兄ちゃんが早乙女さんに取られちゃうかもしれないから............』琴音が内心でこんなことを思っていたなんて全くわからず驚きそうになってしまったが、真顔を貫いて言う。
「琴音、俺はお前のことだけしか見ていないよ。それに早乙女は俺のことなんて好意的に見ていないと思うぞ」
冷静に言う。琴音は顔を真っ赤に染め大声で言う。
『仮にそうだとしても、知り合いの女の人の視界に入るのが嫌なの!!!』
こんなに大声で叫んでストーカー中の早乙女に聞かれてないか?しかしこれが琴音の本音らしい。兄貴兼彼氏の俺が安心させてやらないといけない。 なんとか琴音を宥めて、二人で足早に歩いた。しばらくして俺が後ろを振り返ってみるとそこには電柱が何本か立っているだけだった。
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