第5話 いきなりピンチな件

昨日俺の部屋で妹とキスをした訳だが多少気まずく感じるのは俺の気のせいだろう。今日もいつも通り俺の部屋に琴音が起こしに来る。

「おにーちゃーん!」

俺の部屋の前で俺を呼んでいる。

しかし、俺はまだ準備ができていないので2階から降りて琴音の方に行く。

「ごめん、待ったか?」

「ううん、大丈夫だよ!」

なんだこのバカップルの待ち合わせみたいなのは。

2人とも制服なので尚更だな。

そんな事を考えていると不意に頬に柔らかく甘いものが当たる感触がある。琴音からのほっぺにチューだ。

「おはよー!」

朝から元気なこった。

しかし、いつまでも照れていたら琴音に負けるので俺は平静を装う。

「あぁ、おはよう」

まぁ、顔は真っ赤だし心拍数もヤバいのだがな。

「じゃあ、行こっか!」

琴音が俺の手を引く。

2人で家を出ると当たり前のように鍵を閉める。

そして、いつも通り仲良く隣を歩いて登校するのだった。

俺と琴音は少し前から付き合い始めた。

しかし、まだカップルらしい事はキスなどしかしていない。

休み時間にイチャイチャしたり、弁当を食べさせあったりなどをしたことなんて無い。

学校に着くとまたみんなの視線が俺たちに集まる。

俺と琴音はただの仲の良い兄妹として認識されていて、妹の方は優等生なのに兄は劣等生と一部からは言われているので少し嫌な気持ちになる。それは琴音が気にしているからだ。

ただ、俺たちは平然を装って教室に入る。

するといつものメンバーから茶化される。「朝からお熱いねぇ」

「はぁ……俺たちで茶化すのやめろよ。なんか嫌な気持ちになるだろ」

「ご、ごめんねお兄ちゃん……」

琴音はしょぼんとして謝ってくる。

「いや、琴音が悪いわけじゃないからな」

そう、別に俺たちが悪いわけじゃない。

2人を取り巻く環境が悪すぎるんだ。

俺はもう周りの目は気にしなくなったので普段通りに過ごすことにする。まぁ、心のどこかでは気にしてるんだろうな。

授業が始まって数分するとどんどん瞼が重くなってくる。今は数学の授業をしているのだがどうも眠くなって仕方ない。

なんでみんな数学なんて学ばないといけないのだろうか……そんな思いがふつふつと湧いてくる。

しかし、そんな事ばかり考えていてはダメだと思い直し授業に集中する。

そして、やっと4限目終了のチャイムが鳴り昼休みに突入する。

俺はいつも通り琴音と一緒に屋上で昼食を摂ることにした。まぁ、教室だと視線が痛いからな。今日は珍しく堀宮さんは欠席か...

屋上に向かう階段を登り終えると先客がいたようで俺らの前に立ち塞がる。

「神奈月兄妹さん?こんなところで何をしているのかしら!?もしかして一緒にお昼ご飯を食べようとか思っていたのかしら?私は許さないわよ!」

「あっ、早乙女さん……こんにちは」

琴音は丁寧に挨拶する。

俺と付き合ってる事を隠しているため学校では苗字で呼びあっている。まぁ龍神なんとか君にはバレている訳だが、今のあいつなら言いふらさないだろう、あの日の出来事から人が変わったように静かになったしな。

「あら、あなたは……晴翔くんだったかしら?」ちなみに俺たちの苗字は神奈月で俺の誕生日は10月だ。滅多にこんな偶然起こらないよなと思う。

そして早乙女は何故か俺を見る時だけ少し目つきが鋭くなる気がするのだが気のせいだろうか。

「あぁ、そうだけど……」

俺はあまりこいつが得意ではないから素っ気ない返事をしてしまう。「それよりも、なんであなたたちが屋上に?ここは私の場所なのよ」

「はぁ……俺はいつもここで琴音と一緒に昼を食べている。そして、今日もそれがあるだけだ」

すると早乙女は目を見開く。「まさか琴音ちゃんと付き合っているんじゃないの、距離感が付き合いたてのソレよ!?」

「えっと……いや……」急にそんなこと言われると思っていなかったので動揺してしまってかなり怪しい受け答えになってしまった。

なんでわかるんだよこいつは……まさか琴音が言いふらしてるんじゃないだろうな……俺はそっと隣にいる琴音の方をちらっと見る。

しかし、琴音は俺の方を見ていなかったようで不思議に思いもう一度琴音の顔を覗き込むと明らかに動揺した顔をしていた。

「あ、えっと……私とお兄ちゃんは付き合ってます」

琴音は自白してしまった。

これはかなりまずい流れだ。確かに俺たちの関係は秘密だとは改めて言っていなかったがここは嘘をつくべきところだろう。勉強はできるのに琴音は少し天然なとこがある、そこも可愛いのだが俺が2人の関係に悩んだり、はぐらかしていたりしていたのが全て水の泡となった瞬間である。

早乙女は少し考えてから口を開いた。

「そう、ならあなたたちは兄妹であり恋人でもあるのよね?」

「あっ、はい……」早乙女も段々と調子を取り戻してきたようで冷静に聞き直してくる。

俺はなんだか恐ろしい気持ちになりながら返事をする。

「なら、あなた達が兄妹であり付き合っていることは学校中に広まってもいいわよね?」

えっ……?琴音は早乙女が何を言っているのか理解できていない様子だ。俺も正直今の発言には理解が追いつかなかった。

「何か目的があるんだろう?早乙女。」

彼女がニヤリと笑う。

「私も貴方達の輪に入れてくれない?」

『『は?!』』

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