第4話 巻き込まれ
学校からの帰り、薄暗い路地を歩いていると廃ビルから体のパーツを一部欠損させ生気のない青白い顔をした明らかに悪霊と思われる女性の霊が出てきて俺と目が合う。そして後ろから追いかけるように黒服の男性が飛び出てきたのと同時に俺のほうへ悪霊が猛ダッシュしてきた。
「あなた、こっち側の人でしょ!やばいのに追われてるから助けて!」
こちらに助けを求めてくる悪霊から逃げるために慌てて方向転換して元の道を走って戻る。俺が生成りだからか、霊に同類だと思われていることに驚きを感じた。
「ちょっと!なんで逃げるのよ。困ってるときはお互い様でしょ。」
「それは助けるほうが言う言葉だ。それに俺は人間だからお前とは違うの!仲間じゃないから面倒なことに巻き込むな!」
見ず知らずの悪霊と喧嘩をしながら並走して黒服から逃げていると後ろから火球が飛んできた。
「うわぁ!あっぶね。なんか火の玉が飛んできたんだけど!」
「そりゃあ陰陽師だもの、火球ぐらい飛ばしてくるわよ。こんなので驚いてたらきりないわよ。あんたも反撃なんなりしなさいよ!」
「いやいやいや、だったら自分で戦えばいいじゃん!俺を巻き込むなよ。そうだ!その陰陽師さんに助けてもらえばいいんだ。」
走るのをやめ黒服の男性に声をかける。
「すみません、変な霊に追いかけられてて助けて欲しいんですけど。」
「なんだ?悪霊の仲間ではないのか。確かに人間に見えるが・・・。」
「なんであなただけ助かろうとしてんのよ!おい陰陽師、そいつもこっち側のやつよ!」
俺らの言い合いに混乱してしまった陰陽師さんはスマホを取り出しどこかへと電話をかけ始めた。
「すまない俺だ。いま依頼の悪霊を追っているのだが、妙なことになってな。追っている途中で悪霊が仲間と合流したと思っていたのだがどうやら人間の青年が巻き込まれているみたいなんだ。青年は俺に助けを求めるのだが、悪霊が青年は仲間だというのだ、俺が見るに青年は人間で間違いはないと思うのだがどうしたらいいかわからなくなってしまってな。」
「陰陽師さん、俺は人間ですよ。今学校の帰りでここ通っただけなんですよ。」
「いいえ、こいつは私たちと同類よ。あんた騙されてるわよ。」
「俺は、お前にかっまてやれないの!もう帰らないといけないからこれで失礼します。じゃあ!」
話を切って無理やり帰ろうとしたが目の前に火の壁が生まれ行く手を遮った。
「青年よ君には悪いと思うが今回は君も討伐対象となった。疑わしきは罰せよとのことだ、すまないな。」
「ざまぁみろ!一人だけ助かろうとするから罰が当たったのよ。」
冗談だろ、こんな巻き込まれで命落としてたまるか。足に力を入れ全力で火のない所を駆ける。しかし陰陽師さんも俺の行動を予想していたようで行く先に火の壁が現れあたりを囲まれてしまった。
「こうなったらお終いね。私はあきらめたわ。」
悪霊は完全にあきらめたのかその場に座り込んでしまった。ただ俺はあきらめることはできないので鬼さんを呼ぼうと思う。呼んでしまったら最後、俺は悪霊なんかと一緒で討伐リスト入りになってしまうだろう。俺はまだ人生を楽しみたい百鬼夜行の書を取り出し阿久良王を呼び出す。
見上げるほどの巨体に侍のような装備をしており、かなりの悪人ずらをしていた。お供もいるみたいでこれまた大きい体に侍装備をした3人組が後ろに立っていた。
「俺を呼んだってことは荒事だな?察するにそこの黒服が相手だな。好き放題にやらせてもらうぜ。」
そう言って阿久良王さんは、陰陽師さんのほうへ歩みを進めた。まずは様子見かと思ったが、いきなりヤクザキックを陰陽師にお見舞いし、お供たちが倒れた相手につぶてを投げつける。つぶてはかなりの威力があるみたいで外れたものがビルの壁を貫き向こう側へと飛んで行った。たった1度の攻撃で満身創痍となってしまった陰陽師さんは式神を召喚し盾にして逃げようとしたが、阿久良王が許さなかった。式神を大太刀で瞬殺するとそのまま陰陽師を殴り飛ばした。地面にぶつかり何度か転がるともう動くことはなかった。
「これでおしまいか!全然ものたりねぇぞ。つってももう相手がいないからな~。それじゃこの後異界に集合な。この不満は食事で解消する。待ってるからな。」
じゃあな!と言って異界に帰ってしまった。この後宴会が決まり大変なことになったのは言うまでもない。
「うそ!勝っちゃった、もう駄目だと思ったのに。あんた鬼の知り合いがいるならもっと早く呼びなさいよ。まあ助かったからいいんだけどね。それにあんなやばい鬼と知り合いとかあんた何もんよ!」
悪霊が何か言っているが無視して陰陽師さんの容態を見る。とりあえず息はしているみたいなので命の危険はないだろう、なぜ無事なのかはわからないがなにか防御的なものがあるんだろう知らんけど。
「それじゃあ、俺はこの場からさっさと逃げるからもう俺にかかわるなよ。」
本当は、救急車を呼んだほうがいいのだろうけどそこから足が付きそうなのでさっさと逃げることにした。どうかご無事でありますように。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます