第3話 新しい友人?

 部長と話すのに夢中ですっかり日も暮れてしまったので、急いで帰り支度をし校門の前で別れ帰路に着く。学校から駅までは街灯が多く普段は人通りも多いので安心して帰ることができるのだが、今日は無人でちょっと不気味だ。


「そこの青年、鬼に所縁あるものだな。少し話をしたいのだが。」


 突然声をかけられて周りを見渡すが誰もいないので首を傾げていると。


「上だ、上。」


 声のとおり上をゆっくりと見上げると、鳥の嘴に羽の生えている男性、おそらく鴉天狗というものだろうと思うものが飛んでいた。鬼に所縁のあるといわれ思わず振り返ってしまったが秘密にしていたことなので今更ながらしまったと思ったがもう遅いのであきらめて話をしようと思う。


「はい・・。鬼さんたちとは仲良くさせてもらっていますけど、そちらは烏天狗さんですかね?」


「いかにも。我は、八天狗飯綱太郎が家臣 飯丸という。主よりそなたと話し合いがしたいとの命があったので声をかけさせてもらった。突然で悪いが今、時間はあるか?」


「時間は大丈夫ですけど、帰りは・・・。」


「帰りはこちらで家まで送ろう。時間もそこまで取るつもりはないので安心してくれ。」


「それなら問題ないので行かせてもらいます。」


 そう返答すると、飯丸さんは懐から団扇を取り出すとこちらに向けて1振りした。すると俺の体が風に包まれ空へと浮き始めた。


「よし、では行くぞ。そのままリラックスしていてくれれば勝手に飛んでいくから周りの景色でも眺めていてくれ。」


 飯丸さんが飛んでいくとその後をついて俺も飛んでいく。景色を眺めていろと言われたが、結構なスピードで飛んでおりとてもじゃないがんがめている暇なんかなく恐怖で目を閉じてしまった。


「おい、もう着いたぞ目を開けて自分の足で歩け。」


 目を閉じている間に寝てしまっていたようだ。目を開けると山の山頂にある大きなお寺の前にいた。


「すみません、寝てました。」


「こちらが無理を言ってきてもらったんだ、気にすることはない。それより飯綱太郎様がお待ちだ、ついてこい。」


 飯丸さんの後をついていき鳥居をくぐり寺の中に入っていくと目の前に大きな仏像が立っておりその下で胡坐をかいて座っている大きな天狗がいた。黒髪で初老と思われる顔つきで鼻は少し長く先端が赤みを帯びていた。


「飯綱様、鬼の縁者を連れてまいりました。」


「待っておったぞ。近くまでこい。」


 目の前まで歩き机を挟んでその場に座る。


「わしは飯綱太郎という。そなたの名前は。」


「俺は、中門 司門といいます。」


「そうか、中門君きみは鬼と縁があるそうだな。昔はいたるところで暴れておった鬼たちが今では異界にこもり全く姿を見せんようになってしまった。それがここ最近地上に出ている噂を聞いてな、久々に顔合わせぐらいはしたいと思って呼ばせてもらったのだ。」


「そういうことなら、今からでも呼べますけど・・。誰を呼べばいいですかね。俺の知り合いだといいんですが。」


「そうじゃのぉ。人間界で有名になっている鬼であればだれでもよいぞ。」


 有名どころの鬼は誰だろうと百鬼夜行の書をめくっていくと、虎熊童子の名前が出てきたので確か酒呑童子の配下で有名だったはずなので彼に頼もうと呼びつける。


「虎熊童子さん、来てもらっていいですか。」


 書に向かって語りかけると目の前に門が出てきて中から白髪の白い鬼が出てきた。


「なんだ、ここは。天狗の寺か・・・また珍しいところで呼んだな。」


「久しいな、虎熊童子よ。」


「こりゃたまげたな。飯綱の大天狗じゃねえか。」


「お前たちが最近地上に出ていると聞いてな、そこの中門君に頼んで呼ばせてもらった。行動を見ているに暴れるつもりはないのだろ?」


「当たり前だ、俺たちは異界で遊んでるほうが楽しいからな。昔みたいに人間襲ったりなんかはもうしねぇよ。それに今はモンモンと友達だからよ、こいつの迷惑になるようなことはできるだけ避けていくつもりだ。」


「そうか、わしらもお前たちとは友好を結んでおきたい。昔みたいに交流があるわけでもないからここは中門君を共通の友人として仲良くやっていこう。」


 二人の話に置いてけぼりを食らっているが、ようは昔は知り合いだったが今は無縁になってしまって長いのでまた仲良くしようということであろう。昔は暴れていた云々は無視していよう。まあ鬼なんだし人食いや殺しなんかは当然やっているだろうじゃなきゃ伝説になんかならないからな。


 それより俺を共通の友としてってことはこれから天狗たちと友達になるってことだよな。天狗と頻繁にあっていたら、翼なんかが生えてくるんだろうか?


「モンモン、たぶん馬鹿なこと考えてるだろうが天狗と宴をしていても天狗にはならないぞ。天狗になるためには修行が必要だからな!」


「そうじゃな。天狗になるためには霊峰だったり霊山と呼ばれるところで厳しい修行を乗り越えたものだけが天狗になれる。普通の人間には難しいじゃろうな。それよりも友人になるのでなその書物も見せてくれ。」


 書を渡すと中をめくり白紙のところへ手のひらを押し付ける。


「ほぉ、こうなるじゃな。また摩訶不思議なものじゃな。何かあったら呼ぶとよい、鬼と違って争いごとは好かんが相談であれば喜んで力を貸そう。ほれ、飯丸も手形を押すとよい。」


「それでは我も。」


 そう言って飯丸さんも手形を押してくれこちらに書を返却した。


「それじゃあ友好を深めるために宴でもするか。モンモンほかの鬼も読んでやれ!」


「そうじゃな。飯丸ほかの天狗たちを集めてまいれ。宴じゃ!」


 その後は何十人と集まり大宴会となり遅くまで飲んで食べてを繰り返した。時刻は深夜の2時になりすっかり遅くなってしまったが家まで飯丸さんが送ってくれた。


「すまないな、すっかり遅くなってしまった。飯綱様も言っていたが相談事なら喜んで力を貸す、友人として仲良くやっていこう。それではまた!」


 飯丸さんが見えなくなるまで見送った後、お風呂に入って眠りへとついた。次の日は夜更かししたこともあり、もちろん遅刻した。

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