第2話 生成

 不思議な体験から数か月たち俺は結局地元の高校に入学し新しい生活を送っていた。鬼たちとは、あれから何度も異界で宴会を一緒に行ったり自宅に呼んでご飯をごちそうしたり遊んだりとなかなかに楽しい毎日を過ごしている。ただ一つ不満があるとすれば高校での友達ができておらず一人ぼっちの高校生つを送っていた。


 入学初日にクラスで自己紹介があったのだが、その前に腹痛でトイレに行ってしまい話す機会を失い戻った時にはもうみんなが仲良くなっており輪の中に入れなかった。


 まあ、これから部活紹介とかあるからそこで友人ができればいいなと思う。俺が入ろうと思っている部活は陰陽師同好会だ。陰陽高校に入れなかった人や才能がなかった人しかいないが、同じことに興味があって趣味を共有できる人なら仲良くなれそうという打算もある。ちなみに同好会だが、名前の通り正式な部活ではないので紹介には上がってこず先生に聞き初めて知ったのだ。


 部員数は4名で男が3人に女が1人で基本的には陰陽高校の見学や資料を集めて実際に見に行ったりと結構行動力のある同好会らしい。


 明日はその同好会に入部届を持っていこうと思っている。そんな話を赤鬼の朱鬼さんに話していると。


「モンモン、おめぇあんまし陰陽師に近づかないほうがいいと思うぞ。」


 と言われてしまった。モンモンってのは俺のことで、中門 司門なかかどしもんで漢字の門が2つあるからモンモンって呼ばれている。話を戻すが近づかないほうがいいとはどういう意味だろうか。詳しく聞いてみると。


「おまえは、俺たち鬼と結構な頻度で一緒に過ごしてる。そのせいでお前に少し変化が起きてきているんだ。たとえば身体機能が上がっていたり、妖気というものをまとい始めていたりと、いわゆる生成ってやつだ。人間から鬼になる途中ってことな。」


 言われてみれば最近体の調子がいいし、歯や爪が鋭くなってきた気がする。


「つまり、妖怪になりそうな人間だから陰陽師からしたら危険なやつっていう認識になってるてことでいいの?」


「そうだな。最悪やられちまうかもな。そん時は俺らが助けてやるけどな!それに一応ばれないようにする道具だってある。これ普段からつけとかよ。」


 そう言って渡されたのはミサンガだった。足に巻き付け話の続きを聞く。


「これはな、お前の鬼化の進行を止め妖気を抑えることができる。歯はマスクでもして隠しとけ、爪は切るしかねえがな。ぼろくなったらまた新しいのやるから直ぐ言えよ。」


 正直言って鬼になるといわれても特に思うことはなかったし自覚もなかった、陰陽師から危険視されるのは過ごしずらいから今後の生活にはすごく助かった。部活の話をしてよかった。その後は2人でゲームをしていつも通りの生活に戻った。


 朝になり昨日話したことを思い出し、爪を切りマスクをつけて登校する。登校中に黒い制服を着た二人の男女に声をかけられた。


「そこの君、待ちたまえ。」


「玄治君、どうしたの?」


「君、名前は。」


「中門 司門といいますが・・・。」


「俺は、藤 玄治、陰陽高校の1年だ。お前から妙な気配がするのだがなぜだ?」


「えー。私感じないよ。あっ、私は赤坂 時雨って言います。よろしく。」


 妙な気配って俺の妖気のことか?でもミサンガで抑えてるはずだろ。それに横の女の子は感じてないみたいだし、どうゆうことだ?


「ん?だんまりかね。やましいことでもあるのか。ひとまず持ち物を見せてもらおう。」


 そう言って俺のカバンを無理やりひったくり中を物色する。するとカバンの中から古書を取り出し中を見始めた。しまったと思った、あれは鬼からもらったものだからそれで妙な気配がするといったのだろう。


「なんだこれは、古い書物だが名前と手形しか載っていない。怪しいがこれと言って危険性もなさそうだな。うーん、すまない手違いだったようだ。」


「当たり前じゃん。私何も感じなかったし玄治君がおかしいだけだよ。」


「じゃあ、学校に遅れるので失礼します。」


 二人と別れてすぐに全力で走って学校まで行った。危なかった、昨日の今日でこんな目に合うとは。もしもっと前にあっていたら今頃つかまっていたかもしれなかった。


 授業が始まってもなかなか落ち着くことができなかったが、昼食を食べやっと心を整理することができた。その後はいつも通り過ごし入部届を持って同好会の教室の扉をたたいた。


「すみません、陰陽師同好会の教室で合ってますか?」


「はいはい、あってるよ。入部希望者かな?そこ座って。」


 案内された椅子に座り入部届を渡した。


「僕は部長の片瀬 一よろしく。入部希望者ってことは中門君も陰陽師なんかに興味があるの?そういう子は大歓迎だよ。」


「そうです。俺も興味があって高校受験しようとしたんですけどトラブルがあって受けられなかったんですよ。それでもこの高校に入ったんですけど同好会の話を聞いてこれだ!って思ってきました。」


「うんうん、わかるよその気持ち。僕は受けたけど才能がなくてね不合格になってしまったんだよ。それでもあきらめきれなくてこんな同好会を作ってしまったんだ。今日は僕しかいないから今度みんなを紹介するよ。これが今のところの予定表ね。もし参加できないところがあったら、口頭かメールで教えてね。」


 その後は日が暮れるまでいろいろと話し合い部長とすごく仲良くなった。


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