第12話 シーアの旅立ち
僕は、持ち物を一つだけ、二人には内緒で増やしていた。
必要最低限の物だけ、と口酸っぱく言われていた。けれども、この持ち物だけは、必ず持っていくと決めていたんだ。
それは、コレクターアイテム入れだ。
これから、珍しい獣や植物、もしかしたら宝石まで、巡り合うんだ。しかし、それを心一つに収めるのは難しい。
そこで、コレクターアイテム入れがあれば、獣の牙や毛、植物の種や宝石なんかも採取出来る。そして、いつでも好きな時にそれを開いて思い出を語り合える。
冒険において、こんなに素晴らしい道具は無いのだ。
事前に二人へ説明したけど、反対されていた。
「そんなものわざわざ取っておかなくても、外にはごろごろ同じ物が転がっているんだ、必要無いだろ。他に必要な荷物は沢山あるが、それでも最低限に絞らないといけないんだ。おもちゃは入れるな」
ロマンの無いリキルにはそう諭された。
「ダメだよ!獣は菌とか凄いから!植物だって毒があるかもだし。宝石なんて、持ってたら変なのが寄ってきちゃうから全部ダメ!」
まるで汚い物を見る様な目でメイは、僕の意見を否定した。
だから仕方なく、僕はこっそり忍ばせるんだ。
そして、二人にこのアイテム入れの素晴らしさを分からせてやるのだ。
誰が一番、この旅を制する者に相応しいのかを教えてやるのだ!
僕は村の人々に程々の挨拶を済ませて、出口へ向かった。
リキルとメイは既に待っていた様だ。
「お待たせ、二人とも」
「何か遅かったね、シーア」
メイの目が鋭い。僕は動揺していない振りで誤魔化した。
「別に、何でも無いさぁ」
「さぁ?」
「そう、さぁ早く行こう、僕たちの旅を始めよう!」
「リキル」
「ああ」
メイの一言で、リキルが僕のカバンを取り上げる。即座に中の物が確認されていく。
カバンの中からは、食材や衣服は入っておらず、採取に必要な瓶や鋏や、はたまた望遠鏡まで出て来てしまっていた。
「シーア、何だこれは」
「あ、あれ、おかしいな、カバン間違えちゃったかな」
咄嗟に誤魔化したが、もう太刀打ち出来ない状況ではあった、
「そんな事だろうと思って、シーアのバッグも用意しておあたよ」
メイが溜め息まじりにそう言って、バッグをもう一つ、岩の影から登場させた。
「あ、ありがとう、いや助かるさすがメイだ!」
僕は、そのバッグを受け取るふりをして、自分のバッグに入れていた思い出ノートだけをそのバッグに素早く入れ込んだ。
メイは気づいていない、が、リキルには通用しなかった。
リキルは苦笑しながら首を軽く横に振って、見逃してくれた。
男の友情とは、本当に素晴らしいと思えた。
思い出ノートを書いたら、一番初めにリキルに見せてあげよう。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます