第8話 伝説の勇者は……
魔法陣での移動後、なんだかんだいいながらも、王宮の一室に通されました。
すると銀髪のロマンスグレーのオジサマが出迎えてくれました。
王様ですか!? ハイスペックですよ! 趣味のいい黒色のフロックコートっぽいお貴族様風の服を着てます。お髭もよく似合っています。
「御無沙汰しております。宰相閣下」
主任が頭を下げて礼をとった。
「久しぶりだね。マイリ君。君のお蔭で、わが国は魔族の侵攻もなく落ち着いているよ。そろそろこちらで落ち着いたらどうだい?」
鷹揚な笑みを浮かべて宰相様は部屋におかれた椅子に座るよう勧めてきた。
「ええ、まあ、検討中です」
そう、主任が答えた。
主任、それは日本人用語のアレですね。こっちの勝手だろう、放っておけよ、ですね。
「さて、……元わが国第一席のユーラレシア大神官もいらして、一体どういうことかね?」
「……実はこの女性に召喚がかかり、自分は偶然一緒に現場にいたため、自分の魔法陣でこちらに連れてきました。ユーラレシアが魔法陣痕跡の解析をいたしましたら、隣国ローリエ国のものと判明しました。」
「ほお?」
え? そうなのですか? 聞いてないけど私が召喚されていたの! もしかして、勇者は私だった?
私は驚きのあまりまじまじと主任の横顔を見つめて言ってしまった。
「……すみません。主任。よく分からないのですが、巻き込んじゃったのは私の方とかだったとか」
主任は宰相への視線を向けたまま、
「巻き込むとか巻き込まれたとかじゃないだろう。すべきことをするかどうかだ」
それに、と主任は続けた。
「俺の方は知識と経験があった、お前単独より安全だとそう判断した、それだけだ」
私は思わず俯いていた。
いえ、主任様の殺し文句にヤラレタのでは……、ゼッタイ、ありませんから。
昨日からちょっといろいろあったから涙腺が決壊を起こして見られたくなかったんです。
涙ぐしゃぐしゃの恐ろしいまでの顔をイケメンたちの前で晒すわけにはいけませんから。一応私にだって恥じらいが少しはあります。
麗しのスケ様の視線を感じます。誰か肩に手を置いてくれました。だけどすみません。私のハンカチを部屋までとりに行かせてください。
「それで? そなたらは何を求めるのだ?」
ダンディな宰相からは正式な召喚を邪魔したことは、国家間の問題になるのでどう纏めるつもりだと言われた。
そんな大事に! 普通のOLのワタシにどうしろと私は逃げ出したい気持ちで一杯だった。
「……えっと、私、どうしたら、……すみません」
私の小さい謝罪にかぶさるように主任が言った。
「早急に隣国ローリエへの魔法陣による移動許可をいただきたい。交渉に赴きます」
「こちらの得は? 国益になることなら許可しよう。なんなら隣国王にも話をつけてやろう。どうだ?」
そう言ってオジサマと主任が視線を絡めあった。どちらが……。いいえ、恩人様をBLフィルターにはかけませんとも。
「……元々この世界の召喚に勝手に巻き込まれる側のことも考慮すべきだと思いますが。現在、うちの領内での実験栽培の食用植物の実用化ができそうです。その権利の譲渡。合わせて隣国との交易商品の交渉をします。」
「ふっ、逆手をとったものだ。……植物については育成指導も入れろ。アフターサービスというやつだよな?」
ん? とオジサマはにやりと不敵に笑うと主任へ要望を付け加えた。
……あふたーって、主任、何の言葉を教えたんですか。
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