第7話 魔法陣まるまる
ここトリスには便利なことに移動魔法陣というものがあり、もちろん誰でも使えるというものでもないらしい。使用できるのは上級魔法術を極めたものだけとか、使用条件も色々あるみたい。前もって特定の場所に固定しておくこともあり、主任のいる魔族とやらが住む国との境である辺境の町も王宮に移動できる魔法陣があった。
どうやら魔族が出現する地下洞窟があるので抑えとして主任が防衛するため築いたそうだ。
だけど主任が魔王とやらを退治してから、今のところ魔族たちの侵攻はないらしい。
ますます主任の勇者伝説に磨きがかかってきましたね。
主任が伝説の勇者!
だが、魔王との戦いの詳細はまだ語られていない。
そんな言葉が脳内を行き交います。
そして、魔法陣があったのは最初に私が見た部屋だったのだ。
魔法陣の上に全員で並んだのでその面々を私は眺めた。
勇者様に……、スケさんは神官、カクさんは戦士、ダイくんは魔物使いっぽいよねぇ。
それじゃ。私はお笑い師とかいうジョブですかね。
そこのあなた! 笑いましたね? 結構強いし便利と思います。
「ないない」
ぶつぶつと私が一人で妄想にツッコミを入れると魔法陣のことと勘違いした主任がぼそりと漏らした。
「まあ、あれだ。長距離間バスのような感じだ」
「また、酔うんですか。嫌だなぁ」
「面白そうなんで、おれっちも行こうか」
と言い出してセブンさんがやってきた。
なんなんですか? まあ、スケさん(魔法陣担当)、カクさん(護衛担当)が来るのは分かりますよ。セブンさんは勇者の仲間? 何故かダイくんも参加している。彼の見かけは私より華奢ですよ。背もほぼ同じくらいか、まだ15歳だしね。
主任が言うにはたまには経験値を積ませるないとだそうな。
経験値って、これってロープレ? そういうものなんですか? いえ、すみません。純粋に人生経験の方ですよね。
なんかダイくんの髪って綿あめみたいよね。ハニーテイストの。
ついじとっとした目で見てしまった。
「……そんなに見ないで下さい」
すると彼は頬を赤らめてもじもじしていた。
ナニこの生き物。有明の海にも生息しているかっ!? 失礼、少し取り乱してしまいました。
「うちの職員を変な目で見るな。怯えている」
それってあれですよね。オレの男に手を出すな的な、あ、いえもう二度と言いません。すみません。
そんなこんなで無事館から王宮の一角にある魔法陣に着いた。
私以外は平然としていましたが、ワタクシは船酔いしたように気分が悪かった。座り込みそうになる私にダイくんが背中に手を添えて摩ってくれる。
「大丈夫ですか。ギン様」
いい子だねぇ。うんうん。
私は恋愛圏外で座って茶をすする喪女様の気分に浸っていた。
でも、ダイくんあれで、華奢に見えても結構しっかり筋肉あるみたいでふらついた私の脇に腕を入れて本格的に支えてくれていた。つい顔だけ鑑賞してたら油断した。
「ご、ご、ごめんなさい。ありがとうゴザイマス」
私は焦りまくりながら礼を言って体を離そうとした。
人として礼儀はきちんとしなくちゃね。
「いえ、ギン様は女性ですので……、気をつけてくださいね」
キター! 邪気のない微笑みがキター! 本気でおかわりください。今、別の意味で眩暈を感じました。決して眩暈のせいではありませんよ。ダイくんの肩にしがみついたのは……。あ、いえ間違えました。眩暈のせいです。はい。スミマセン。
だから、主任、消毒するといって何か霧状のものをスケさんに出させないでください。害虫扱いしないでクダサイ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます