第4話 シャツの下は何派?

 あ! そのまま、ネクタイゆるめたとこで静止画像欲しいです。そんなワタシの黒い野望を無視して主任は無造作にネクタイを抜き取り、Yシャツのボタンをはずしていく。

 個人的にネクタイ、スーツ弱いです。これに黒縁眼鏡がつくとついふらふらとついていくかもしれません。

「……おい」

 不機嫌そうな声に我に返るとなんと私は主任に近寄りガン見してました!

 立派な不審者ですね。

 私は慌てて横を向いた。

 でも、主任、一言いわせてください! シャツの下にはTシャツ派なんですね。

 Tシャツの上からでも分かるイイ身体してますよ。ダンナ!

「……二日だ。この二日間でお前がこっちに呼ばれた原因を突き止める。二日間で原因が判明しなくてもあっちに帰してやる」

「か、帰れるんですか?」

「ああ、帰す」

 いつの間にか眼鏡を外していた主任の顔と私はしっかり見つめあってしまった。別にドラマは始まらないし、月九のようなBGMも流れなかった。

「……綺麗ですね」

 主任の目の色が日本人の黒色でなくきれいな琥珀色をしているのに気づき無意識に口に出てしまった。

 そして、顔もあの変な眼鏡がないとかなり整っていることに今更ながら驚いた。

 まあ、評判がアレですから。会社のリア充狩人属性の女子たちも主任を標的にはせずスルーしてましたね。

 私の不躾な視線に何を勘違いしたのか、主任はバツの悪そうな感じで目元を手で抑えた。

「ああ、この目か。こっちに来ていた為か色素が薄くなってな。あっちじゃ偏光グラスがないときつい」

 へぇ~、そうだったんですか、そういや主任、男性の割には色白ですよね。目つきの鋭さに、いえ鋭いというより……。

 主任がこっちの服に着替えたところで私の服も届いた。

何ですかこれ?」

 私の眼前にフリフリひらひらドレスやスケスケハーレム服を並べられた。

 こすぷれじゃん! やっぱだめだよ。こりゃ。

「俺の趣味ではない。断じて」

 主任は天を仰いでさらに苦い顔をしていた。

 じゃあ、どなたの趣味? という私の視線はスルーされた。

 主任は部屋のクローゼットから服をとり出した。

「これは俺の探険用の作業着だ。袖とか裾を折れば長さもどうにか、ウエストで縛るタイプだから大丈夫だろう」

 着付け方も主任から身振りで教えてもらった。

「その、着替えるので」

 部屋から出てもらいたい。

 さずがにワタシが男の人の前で着替えるのはNGでしょう! 

 そう、心で叫んだものの、恥ずかしくてもじもじしてしまった。

 主任は私の言いたいことにどうやら気がついてくれたようだった。

「却下。何かあった時に対応できん」

 しかし、そう言うと主任は横を向いた。

 即答ですかっ? いや別に観られるほどのものもありませんけどね。

 お代官様、どうか、この哀れな腐女子に情けをくださいまし。 

 といった小芝居打っても主任は相手をしてくれず、仕方ないので、私はしぶしぶ主任に背中を向けて着替えた。

 袖をまくりなんとか見栄えよくしてみた。うん。動きやすいしいい感じ。

 ついでにアップしていた髪もおろした。長時間括っていると頭が痛くなるからね。  

 私は降ろした髪を手櫛で適当に整えて主任の方に歩き出した。

 これって本当に夢とかじゃないだろうか。

 それか盛大なサプライズとか?

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