第22話 ゲームにないイベントが発生しました その3

中庭を歩いていると、数組の女子がベンチで弁当を食べながらワイワイと話している


女三人寄ればかしましいともいうが、どちらかと言えば華があると俺は思う


その中に、同じ学年の一瀬が3人の女子と話している


ん?

でも、このシーンは本編の幕間にあるヒロインサイドに出てくる


それが本編に出てくるという事は…


これで確信した


このゲームは原作とifが混じり合った世界だ

ともなると、ヒロインルート以外にもが出てくる可能性だって否定できない。


サブキャラが追加されたルートや恋愛ゲームの究極系ともいえるハーレムルート

まあ、これはさすがにないだろう…


そう思いたい…


~一瀬side~


クラスの皆で、お弁当を食べていると、中庭を歩いている笹岡君を見つけた


珍しい

前回は郡会長を助け、今度はクラスメイトの赤阪さんを助けたのに

一人でここに来るのは初めてじゃない?


それに、どことなくお腹を空かせているような感じがしていた


そう思うと、可哀想になってくる


でも、もうお弁当の中はすでに空っぽ


午後の授業、大丈夫かな…?



♰♰


「はぁぁ~~~~…」


午後の授業が終わっての休み時間


俺は、大きなため息をついて机に突っ伏していた

もう次の授業に集中する余裕すらない


「おいおい、大丈夫か?」

そんな様子を見兼ねたヒロが俺に声をかけてくる


「大丈夫なわけないだろ…。大体、昼休み逃げやがって」

「すまんすまん。助けようとも思ってたけど、さすがに修羅場に他人が突っ込むのは場違いだよ」

「だとしてもな…」

「好んで修羅場に突っ込む人なんてそうそういないぞ」


それもそうだ

こういうなシチュエーションを好むマニアはいないだろうな…


それでも、友として助けてほしかった…


さらに、腹の虫が全然収まらねえ

缶コーヒーだけでは賄えなかった…


小腹を満たす何かをと思ってたけど、

今の生活を考えても、そういう余裕はない


あぁ~、余計に腹が減ってきた…


♰♰


放課後に俺は、急いでコンビニの菓子パンを買って何とか腹を満たせて

バイトに勤しんだ


その帰り道


いつも通る公園の入り口でウロウロしている小学生くらいの子供を見つける


時間はもう9時を回ってるぞ

一人でここにいるのは危険すぎる


俺は迷うことなく、子供に声をかける


「君、こんな時間に何をしてるんだ?」


ビクッとする子供


そりゃ、最初は誰だって警戒するよな


しかし


「あ、お姉ちゃんが通ってる学校の服と同じの着てる」

「…ん?この制服の事?」


この子のお姉さんは、鳳凰ヶ谷学園の人なのか


「うん、僕も大きくなったらお姉ちゃんと同じ学校に通いたいんだ」

「おお、いいじゃないか」


気づけば、すっかり打ち解けていた


「そういえば、君はずっとこの公園で誰か待ってたのかな?」

「うん、お姉ちゃんがここに迎えに来てくれるはずなんだけど。全然来なくて…」

「ちなみに、どれくらい待ってた?」

「2時間くらい…」

「2時間も!?」


いくら何でも待ちすぎだろ!?


「電話とか持ってないか?」

「ううん…、子供用のスマホは高いから買えないってお母さんやお父さんが言ってたから」

「そっか…」


とはいえ、ここの留まるのはさすがにまずい

お姉さんや家族がとても心配しているんじゃないかと思う


ここは強硬手段に入る


「君、家の電話番号は知ってるか?」

「うん、知ってるよ」

「それじゃ、俺のスマホ貸すから電話してみたらどうかな?」

「わかった」


そう言って、少年は俺のスマホで電話を掛ける


「あ、お母さん…。うん、お姉ちゃんじゃなくてお兄ちゃんと一緒にいる」


その時、少年は俺にスマホを渡してくる


電話を替わってほしいという事だろう


「もしもし…?」

『あなた、どういうつもりですか!?ウチの息子を誘拐するつもりじゃないでしょうね!?』


おいおい、話がぶっ飛び過ぎだ


「そんなつもりなら、あなたの息子さんにスマホなんて渡しませんよ。とりあえず、日野々谷ひののたに公園に来てもらうことは可能ですか?」

『…は?日野谷ひのたに公園ではなくてですか…?』

「はい、そうですが…」


…あ、何となくわかった気がするぞ

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