第14話 思わぬシチュエーションでした

帰らないでと強請ねだる郡


それはつまり、郡の家に泊まることを意味している

こういったシチュエーションは予想外だった


「朱音!?」

「何言ってるの!?」


両親も驚きの声を上げる


「落ち着け、郡。帰らないにしても、俺は今手ぶらだぞ。今更帰って、泊まる準備とかできるわけないだろ?」

「でも…」

「…なあ」


言ってもいいのか、俺はちょっと迷った


意を決して


「お前、少し焦ってないか?」


ピクッと反応した


俺の予想は当たった


「焦るってどういうこと?」


郡の母が疑問を投げる


「えっとですね…」

こうなった発端を話す


「なるほどね。朱音ちゃん、それは単にヤキモチを焼いているだけ。焦ったところで何の解決にもならないわ」


ズバッと正論を述べる


「でも…こうでもしないと、振り向いてもらえないと思って…」

「あのね、朱音ちゃん。あなたと笹岡君はお互いを知ってまだ間もないんでしょ?それに、まだ学生の身なんだから、自分の事も大事にしなきゃ取り返しのつかないことになるわよ。まして、さっきの言い方だったら、になるとお母さんも捉えちゃう」

「な、流れって…………。ま、まさか…」


郡の顔が茹蛸のように真っ赤になる


「お母さんの言ってる意味、分かってくれた?」

「……う、うん………」


俺も少しフォローを入れるか


「郡、俺とお前は年頃の男女。お前のお母さんが代弁してくれたから省くけど、俺だって男だ。簡単に帰らないでとか言わない方がお前の為でもあるんだ」

「ご、ごめんなさい…」

「とりあえず、今日は帰るよ。また明日、学園で会おう」


両親にお邪魔しましたと告げて、帰路に就く


途中、さっきの事を思いだす


「まさか、郡があんなことをするとは思わなかったな…」

あの事件が起きてから、あいつの行動は大胆になってきている


まだ、ヒロインは5人もいる

俺の理性…保てるかな…


それにしても、抱き着いてきたときの郡の胸…


…大きくて柔らかかったな


って、何考えてんだ俺は!!


明日からいつも通り過ごせばいいんだ

何も起きない……はず


~郡side~


笹岡君が帰ってから、宿題をやり始めても

書く気すら起きない


「うぁあ~~~~~…」

頭をガリガリと掻きながら、呻き声を上げてしまう


「何をしてしまったんだろう…、私」


咄嗟とはいえ、あんなことをした自分に驚いた


だって、1秒でも笹岡君といたい気持ちがあったから

クラスの女子や後輩たちとのやり取りが、いつも通りだというのが私にとって衝撃的な事実だった


もし、笹岡君が私じゃなくて他の女子と付き合うとしたら…?


「…そんなの、嫌だ…」

本心がボソッと出てしまう


取られたくない…

ただ、それだけ…


結局、私は宿題には全く手が付けず時間だけが過ぎて、そのまま寝てしまった


明日から、どんな顔をすればいいの………?



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