第13話 久々の…

郡の母の手作り料理は…


「おいしい!」

「お口に合ってよかったわ。遠慮せずに食べてね」

「はい」


でも、俺こと笹岡 勇がこうして数人で食事をするのは3年ぶりか…


転生前の俺の記憶があるのは間違いない…

しかし、


以前、病室で話したことだってそうだ

ゲームを知っているからと言うのもあるが、

それ以上に、感覚が不思議だった


だからだろうか…

俺の目には、自然と涙が浮かんだ


「笹岡君!?」

「大丈夫!?」


当然、郡たちも戸惑う


「…あ、あれ?…すみません。ちょっと、昔の事を思いだして…」

「昔…?」

「俺、両親が亡くなってからずっと一人暮らしなんです…。友人の赤川ヒロとはたまに食べることもありますが…、ほとんどは家での孤食です…。だから、こうやって複数の人と食べるのは…、本当に久しぶりなんです…」


涙を拭いても、まだ止まらない…

笹岡の意外な一面は、涙もろいこと

これは、原作ゲームでも知られていない


「すみません…、せっかくいただいているのに…」

俺は謝ったが、次の瞬間郡が抱きしめてきた


「わぷっ!?こ、郡…?」

「大丈夫、私たちがいるわ。一人で抱え込まないで!」


感情的になっていた


「私たちは、君の見方だ。何かあったら、頼ってほしい」

「ええ、遠慮なんてしなくていいから」


ご両親もそう言ってくれた

それを聞いたおかげか、落ち着いてきた


「すみません、取り乱してしまい…」

「気にしてないよ。それより、君は今後どうするんだい?」

「どう…とは?」

「卒業したら、進学するのか就職するのかをね」

「就職です」


俺は即答した


「進学したい気もありますが、その分お金がかかりますし、奨学金も検討したんですが自分には合わないって感じまして…。そう言った結果で就職しようと決めたんです」

「そうか。まだ決めてないのなら、私からアドバイスをと思っていたんだが、すでに決めていたとは」

「そっか…」


それを聞いた郡は、すこし落ち込んだ顔をしていた


「郡、大丈夫か?」

「うん、大丈夫…」


どうしたんだろう?

俺、変なこと言ったか?


♰♰


「ご馳走様でした」

「はい、お粗末様」

「それじゃ、俺はこれで」

「え、もう帰るの?」


帰り支度をしたら、郡に止められる


「夕食を頂いただけで十分だよ」

「でも…」

「大丈夫、また明日会おう」


玄関に向かおうとしたら、郡が後ろから抱き着いてきた


「…郡?」

「お願い、今日は帰らないで…」

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