第12話 ゲームにないイベントが発生しました その2

5月24日


この日は本来、ゲームでは飛ばされる日付だ


つまり、ゲームにはないイベントがまた発生したのだ


それは…


「え?もう一度言ってくれるか?」


昼休み、2年C組に郡が来て、俺に話しかける

その内容と言うのが


「今日、私の家に来てくれる?」



突然の誘いに、俺は戸惑う

勿論、クラスメイト達もざわつく


「えっと…、何で?」

「笹岡君が退院したから、そのお祝いをしたいってお父さんが言ってるの」

「いやいや、この前のお弁当だけでも十分だというのに…、ちょっとやり過ぎじゃないか?」

「うん、でも私もお父さんとちょっと似てるかな。いつか、笹岡君を家に招きたいって思ってたの」


なるほど…

俺とお近づきになるチャンスを窺ってたわけね


ここで断ったら、郡の両親にも迷惑になりそうだ…


「分かった。今晩はご馳走になるよ」

「ありがとう!じゃあ、今日も…」


今日も?


俺の手を掴み、廊下を歩いていく



「ちくしょう…。笹岡の野郎、羨ましい…」

「しかも、会長の手作り弁当だろ?一口でもいいから食いてえ!!」

男子たちの嫉妬の悲鳴が響くが、俺たちはスルーする


「勇の奴、最近モテモテだな…。俺も彼女が欲しいな…」

ヒロのぼやきも聞こえていたそうな


ちなみに、今日の郡のお弁当も美味しゅうございました


♰♰


あっという間に放課後を迎えた


校門前には郡が待っていた


彼女曰く、生徒会の仕事は早く終わったらしい

その辺は、ちょっと怪しい気もするが…


「おまたせ。じゃ、行こっか」

「随分とご機嫌だな」

「楽しみにしてたんだから、しょうがないじゃない」

「そっか…」


ちなみに、郡の家は、

鳳凰ヶ谷学園のすぐ近くにある駅から東へ3駅進んだところにある


その駅もかなりにぎわっている

駅周辺は、居酒屋やバーなどの飲み屋が立ち並ぶ

いわゆる大人の街


「さっき、LILE《ライル》でお母さんからちょっと買ってきてほしい物があるってメッセージが来てたから、すぐ近くのスーパーに行ってもいい?」

「ああ」


俺は郡の買い物に付き添い、10分ほどで買い物を済ませる

その荷物は俺が持った


「ありがとう、笹岡君。無理しなくてもよかったのに」

「これくらいは平気さ」


色々と話しているうちに、郡の家に着いた


「さ、上がって」

「…お、お邪魔します」


リビングに入ると、ご両親が待っていた


「あら、いらっしゃい」

「こ、こんばんは…」

「急にごめんなさいね。朱音ちゃんたら、今日がお父さんの有給であるのをいいことに、笹岡君を誘ってもいい?なんて乙女な一面を見せちゃったんだから」

「ちょっ!?お母さん、それ内緒にしてって言ったじゃない!?」

「内緒にしても、いずれバレることでしょ?」

「だって、お父さん仕事から帰ってくるの遅いから」

「忙しいんだから、仕方ないだろ」


部屋から出てきた郡の父親

聞けば、大企業に勤めていて、しかも営業部長

来年は取締役になることが約束されているとか


そんなこと、原作ゲームにはなかったぞ…


「あらためて、こんばんは。今日はゆっくりしていってくれ」

「あの…、この前の治療費と言い、郡の手作り弁当と言い…、少しやり過ぎじゃないかって思いまして…」

「はは。ほかの人から見ればそうだろうけど、これは私たちがしたいからやっていること。今回は、恩返しとか気にしないでくれ」

「…はぁ」


お人よしというか何というか…


そんなこんなで、郡の母親の手料理が振舞われる


唐揚げにフライドポテト、サラダにデザートまで

どれも美味そうだ


「さぁ、召し上がれ」

「いただきます」



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