第6話 ゲームにないイベントが発生しました

4月24日


この日も、普段通りに授業を受け、放課後を迎えた


この日は確か、ヒロと遊びに付き合ったんだっけ

遊びと言ってもボウリングで、ヒロが勝つんだけどな…


でも、ヒロは俺を誘わなかった

家族から手伝ってほしいことがあると連絡があったそうだ


「さてと、どうすっかね…」

やることもないので、適当に街をぶらりしますか


街の中心部にやってきた


ここで何か買って帰ろう


と、商店街の入口付近で何やら怪しげな動きをするフードを被った人を見る

口を動かしながら、ウロウロと何かを待っているようだ


何だ、この恐怖感は…?

今にも恐ろしいことが起きそうな気がしてならない


次の瞬間


「うらああああああああ!!ここにいる奴ら全員、ぶっ殺してやる!!!」


男が狂ったように雄たけびを上げ、バッグから果物ナイフを取り出した


「おいおい…、マジかよ」


それを見た通りすがりの人たちはキャアアアアアアとパニックとなって慌てて逃げだす


ナイフをぶんぶん振り回しながら、周りの人を追いかける通り魔

このままではまずいと思った俺は、奴に近づく


その時、集団に紛れていた女子高生がつまづく


「きゃっ!」

「へへっ、いい女が倒れた。俺の恨みと共に死ねええええええええ!!」

大きく振り上げ、女子高生に向けてナイフを振り下ろす


「いやぁあああああああああああああ!!」

女子高生もたまらず悲鳴を上げる


ドスッ!!


鈍い音が響く


女子高生が目を開ける

が、

まさか、死んだの…?


でも、息をしている

心臓もドクンドクンと動いている

どうなっているの?


下を向いていた顔を上げる

その目の前に、一人の男子が庇うように立っている


それは、紛れもない俺だ


でも、さっき鈍い音がしたような…

女子高生は地面を見て気付いた

多くの血がしたたり落ちていることを


腹や足に刺されていない


俺は、左腕で奴の暴走ナイフを止めていた


「逃げろ、早く!」

「で、でも…」

「いいから、警察を呼んでくれ!」


分かったわとすぐにその場から去り、110番通報していた


「さて、大人しくしてもらうぞ」

「お前、俺の邪魔をしやがって!許さねえぞ!!」


男は俺の腕に刺さっていたナイフを抜こうとする

俺はこの瞬間を見逃さなかった


何故なら、になったからだ


俺は男の服を掴み、内側から右足を引っかけ、そのまま地面に押し倒す

柔道の内股だ


「ぐはっ!?」

当然、男は受け身を取っていないので、力が体全体に伝わり、その衝撃で気を失った


「ふぅ…、何とかなったな」


周りからは拍手が送られていた


「すごいよ、君…。この暴漢を止めるだなんて…」

「うん、それよりも…」


俺の左腕をじっと見ていた


「ああ、これくらいは――」

と言った途端、視界が揺らいだ


出血による眩暈か…

俺は、地面にひざまず


「大丈夫か!?」

「救急車も呼んだから、もう少しの辛抱ですよ!」


警察を呼んだ女子高生が俺に近づく


「あ、あの…。助けてくれてありがとう…」

「気にするな…、って、君は郡か?」


そう、俺が庇った女子高生はかの生徒会長、郡 朱音だった


「あなたは…、同じ学年の…笹岡…くん?」

「覚えていたんだな…」


丁度、警察と救急車が到着した


通り魔はその場で現行犯逮捕


そして俺は、救急車に乗せられ、郡も同乗した


「笹岡君…、この恩必ず返すから」

「いいよ、そんなの…」


後で、警察の人から事情聴取されるのは明らかだ


それにしても、ゲームにも出てこない事件が起きるなんて

えらい目に遭ってしまったな…

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る