同日談(本編最終話直後) オレたちの未来予想図?
嵐のように巻きこまれ矢のようにすぎ去った一週間じゃない五日とちょっぴりだ。
ゴールデンウイーク直後六日夜明けのミナミから始まり十一日午後博多で終わった。
たった六日間……最後に戻れない……これも否。向こうに拒否された問題児リリ。
結局のところ頼りたくないが否も応もない。泣きつける相手は……先輩と姐さんだ。
からかわれるのが見えた直電はパスでダンジョン扉の前からメッセージを送信だ。
要点は短く……リリが残ったことで戸籍や住民票がない現状どうするべきか尋ねた。
幸いにして大濠公園武道館のすぐ近くで停めたゴルフに戻れば人目は避けられる。
ただ悪い意味じゃなくて大バズりしたリリを載せて長距離ドライブは不可能だよな。
行きはよいよい帰りは……まず間違いなく恐ろしい否でとんでもない状況がくる。
数分後のレスに驚愕する……『予定どおり靭公園』葛城二佐に移送を頼めと短文だ。
もちろんワーゲンゴルフは別途……後に船舶で大阪まで輸送してもらえるようだ。
なるほど……すべてが予定調和にせよ……ヨーコさんの手のひらから逃れられない。
しかし二人セットで血迷ったのかオレと一緒に暮らしたいってどんな屁理屈だよ。
三十路クズ野郎と元アイドルにプラスして北方ロシア系合法ロリ美少女でエセ家族。
映画化されるほど人気になったマンガのなんちゃらファミリーみたいじゃないか。
もちろんスパイじゃないオレとアイドル演者のヒカルにリリは……魔法少女だけど。
少女じゃない……ゲフンゲフン自称十八才乙。可愛らしいことには間違いないさ。
「まぁ先の話はいい……先刻の葛城二佐にお願いすれば大阪まで直行。移動可能だ。
ゴルフ……車は一旦お別れ。必要な荷物を……オレのばっかだしどうでもいいよな」
「ふぅん。リリに不満なんてあるはずもないけど……結局ミナミ。戻っちゃうんだ」
「厳密にミナミじゃないんだがまぁ直線距離二キロもない。オレの本拠地がすぐ傍」
「ジャンバリ事務所は大阪駅前ビル……梅田だから丁度いい中間地点かもしんない」
そんなダラダラした無駄話を終えて事務所代わりの建屋にいた葛城二佐に声かけ。
「結局は予定調和らしいです。予定どおり靭公園まで三人で移動したいんですが?」
「まぁダンジョンの内部……状況については後ほど。報告されても問題ありません。
靭公園までお願いされた輸送……大型ヘリコは準備完了。お三方を待つばかりです」
へぇ陸自の大型輸送ヘリってかなり珍しい。あれか災害時の緊急用かもしれない。
豪勢なホテル泊りで飲み食いしながらの珍道中は五日……ヘリならたったの二時間。
それなりに快適だった空の旅は女性陣に驚くほどの大好評……オレは車がいいな。
ジェットコースターにせよ自分で運転できない系の振り回されるのは好みじゃない。
空中で横揺れした程度のヘリコプターが大きな音とともに靭公園東側に着陸する。
ヒカルとリリは怖がって怯えるどころかキャピキャピしてふざけるほど余裕じゃん。
「ここが靭公園……自衛隊の東園。関係者の皆さんなにわ筋でお待ちかねのようで」
道中無線で指示されたはずの葛城二佐が苦笑いする目的地は……いつものカフェ。
まさか……仕事を抜けたレージ先輩が日中出不精の姐さんを引っ張ってきたかな。
もちろん平日の午後だが……ダンジョン誕生からブラックボックスみたいな場所だ。
いつもお揃いの連中は……広い意味なら仲間かもしれない男数人に女がいっぱい。
そもそもTS……ジェンダーが正反対のやつばかりで子どもっぽさのない女たち。
ある意味なら遠くても近似の……リリと同種かもしれないウサギ獣人美少女がいる。
そうだ……ココはダンジョン生まれで正しくウサギから進化した唯一無二の存在。
そんな絵空事を建前上世間に発表できるはずがなく表向きチェルノブイリ生まれだ。
原発事故による突然変異体。ミュータント化した現地母と……日本人父のダブル。
同盟国になったロシアの協力により日本人としてちゃんと戸籍がある宇佐美ココだ。
彼女に倣ってお偉いさんに依頼できるなら戸籍をでっち上げられるかもしれない。
金銭の問題は出世払い……レージ先輩と姐さんから佳二くんにお願いしてみるか。
いずれダンジョンの深層まで目指すなら【魔法】スキルがリリのアドバンテージだ。
詳しくは聴いてないが恐らく手のひらから水のビームをぶっ放せるだけじゃない。
あんまし大きな声では教えたくないがオレとヒカルもリリのお供でスキルを得た。
これも偶然なのか運命になるのか強化魔法と補助魔法……ダンジョンは謎だらけだ。
これが物語ならハーレム主人公の佳二くんを補佐するためにオレたちが選ばれた。
もちろんレージ先輩と姐さんは後方腕組しながら神視点で指示するような上位者だ。
指示され否も応もなく流されたオレたち……未来が明るいかどうかもわからない。
あれもそれもこれもすべてをコミコミにして……さほど悪くないような気がする。
これからダンジョン攻略を一息に進めて数年単位かかる……否もっと長期戦になる。
ダンジョンの深層を攻略した知識がある……リリと共に進めれば未来は怖くない。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます